業界売上高トップ4
有価証券報告書 財務分析
<海運業界・・・第2回>
第2回分析テーマ・・・利益創出力
分析指標値:総資本経常利益率、
売上高総利益率、
売上高営業利益率、
売上高当期純利益率
(各指標の説明はこちら)
【総資本経常利益率】
〔総資本経常利益率=経常利益÷総資本(負債+純資産)〕
トップは川崎汽船です。
3期連続の上昇であり、直近では40%超という極めて高いレベルになっています。
2019.03期は△5.1%と4社中最低でしたが、直近ではトップとなりました。
この業績良化は各社も同様であり、「コロナ2019(旧称新型コロナ)」終息のめどに伴う物流業界全体の回復によるものです。
その中でも、当社の伸び率は秀逸と言えます。
なお、「2022年度から2026年度までの5か年の中期経営計画」において、2026年度の経常利益目標を1,400億円としています。
(2020.03期=74億円、2021.03期=895億円、2022.03期=6,575億円)
2番手は日本郵船です。
当社も2019.03期は△0.1%と3位でしたが、3期連続で上昇し、直近は32.6%で2位となっています。
続いて商船三井です。
当社も3期連続の上昇であり、26.9%と高い値となりました。
そしてNSユナイテッド海運です。
2期連続での低下の後、直近は挽回して4期中での最高値になりました。
ただし他の3社に比べると、低いレベルに留まったという印象です。
【売上高総利益率】
〔売上高総利益率(粗利益率)=売上総利益(粗利益)÷売上高〕
トップは日本郵船です。
3期連続の上昇であり、特に直近は5ポイント以上の上昇となっています。
2番手はNSユナイテッド海運です。
直前期で急上昇させました。
続いて商船三井です。
2期連続で低下していましたが、直前期で上昇しています。
そして川崎汽船です。
先ほどの総資本経常利益率は良好だったのですが、粗利益率は相対的に低めです。
【売上高営業利益率】
〔売上高営業利益率=営業利益÷売上高〕
トップはNSユナイテッド海運です。
粗利益率から3ポイントだけ下がった値であることから、売上高販管費比率が3%となります。
これは他の3社に比較してかなり低いレベルと言え、事業モデルの相違が影響しているようです。
2番手は日本郵船です。
4社中で唯一の3期連続の上昇となっています。
続いて商船三井です。
過去は2期連続で低下し、特に2021.03期では営業損失に陥りましたが、直近でばん回しました。
そして川崎汽船です。
プラスとマイナスが、年度ごと交互に現れています。
【売上高当期純利益率】
〔売上高当期純利益率=親会社の所有者に帰属する当期利益÷売上高〕
トップは川崎汽船です。
売上高営業利益率が2.3%と低めですが、営業外収益で6,410億円(持分法による投資利益)を計上したため、売上高経常利益率も86.9%と相当に高いレベルになっています。
持分法による投資利益とは、連結決算の際に持分法が適用される会社(原則、議決権所有比率が20%以上50%未満の非連結子会社及び関連会社)の最終損益となります。
当社においては、OCEAN NETWORK EXPRESS PTE. LTD.(ONE社)が、機動的なオペレーションと高水準で推移した運賃市況等の影響で業績が大きく改善したとのことであり、持分法による投資利益の実に99.1%に該当する6,354億円をONE社分として計上しています。
2番手は商船三井です。
55.8%という値であり、売上高の半分以上が当期純利益となりました。
当社も、営業外収益として持分法による投資利益を6,573億円計上していますが、このうち97%近くを占める6,357億円が川崎汽船と同様にONE社分とのことです。
続いて日本郵船です。
当社も急上昇していますが、やはり営業外収益の持分法による投資利益が7,426億円計上されています。
そして、そのうち96%強がやはりONE社分とのことです。
そしてNSユナイテッド海運です。
当指標は、営業利益率から1.6ポイントしか下がっていません。
この理由は、営業外収支を1億円ほどのマイナスにとどめつつ、特別損益で固定資産売却益25億円をプラス計上したためです。
以上から、税金等調整前当期純利益が営業利益を上回りました。
ちなみに、持分法による投資利益は5百万円ほどと、他の3社に比してかなり少額となっています。
今回、特に気になったのは、
コロナ2019からの回復特需の大きさです。
今回の「利益創出力」の順位による
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
今回は以上です。
次回は、「稼ぐ力」を見ていきましょう。
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