財務指標に関する説明の2回目です。
今回は、業界分析の第2回目に用いている
「利益創出力」の指標です。
具体的な指標は、総資本経常(営業)利益率、
売上高総利益率、売上高経常(営業)利益率、売上高当期純利益率となります。
【総資本経常(営業)利益率】
〔経常(営業)利益÷総資本〕
経営に投下した総資本によって、
どれだけの経常利益を生み出したかという指標です。
投資とリターンの関係と言え、値は大きいほど良好、
つまり総資本を有効活用できているという見方になります。
分母の総資本とは、他人資本と自己資本の合計であり、
貸借対照表(BS)の右側(貸方)の縦合計の額となります。
このうち、他人資本は負債の部の合計であり返済が必要です。
長短借入金や社債など有利子負債、
それに買掛金や未払金などの営業負債などとなります。
ここで、営業負債に関して、なぜ資本なのかと感じるかもしれません。
本来、仕入れたり使用したりしたときに支払うべき代金については、例えば「月末〆の翌月末払い」など、支払猶予期間が設けられています。
いわゆる信用取引なのですが、これは言い換えれば、その期間(例えば30日間)その金額を借金していることと同じなので資本、他人資本となるわけです。
次に、自己資本とは純資産の部の合計となります。
非上場企業なら、
資本金と毎期の内部留保の累計(繰越利益剰余金)の合算となります。
上場企業の場合は、自社株買いによる減少や評価換算差額など、
純資産を変動させる要素がいくつか存在します。
分子となる経常利益は、国際会計基準や米国基準での表記の企業が含まれる場合、適宜、営業利益や税引前当期純利益に統一して表現するようにしています。
なお、この総資本経常利益率は、収益性の代表的指標とされています。
その理由は、計算式が次のように分解でき、売上高利益率と資本回転率という毛色の違う2系統からの分析結果の集大成となるからです。
これから述べる売上高利益率の各指標、
次々回述べる資本回転率の各指標、ともに大きい値の方が良好です。
よって、両者を掛け合わせて求められる総資本経常利益率の値も、大きい方が良好というわけです。
【売上高経常(営業)利益率】
〔経常(営業)利益÷売上高〕
売上高に対する経常利益(営業利益)の割合であり、高い数値ほど良好です。
低い値の場合は、
原価が高いか販売費および一般管理費が高いかのどちらかとなります。
【売上高総利益率】
〔売上総利益(粗利益)÷売上高〕
売上高に対する売上総利益(=粗利益)の割合であり、
高い数値ほど良好となります。
低い値の場合は、安売り、仕入価格の上昇、製造業や建設業においては、ムリ・ムダ・ムラによる余分な原価の発生や安易な外注などが原因ではないかと考えられます。
ちなみに、売上総利益は粗利益(あらりえき)とも呼ばれます。
これは利益を生み出す源となるので、できるだけ高いレベルが好ましいと言えます。
【売上高当期純利益率】
〔当期純利益÷売上高〕
売上高に対する最終利益額(当期純利益)の割合であり、
こちらも高い数値ほど良好となります。
この最終利益は、次回述べるROEの算出でも分子に置かれることになります。
今回の「資本活用力」は以上です。
次回は「稼ぐ力」を確認しましょう。