人流品格は君子・小人を以て之を定むるに大率九等有り。君子中の君子有り。才全く徳備はり、往くとして宜しからざるなき者なり。君子徳に優れて才に短なる者あり。善人恂雅温樸僅に自ら守るに足り、見識正しと雖も而も自ら決する能はず。躬行力むと雖も而も自ら保んずる能はざる有り。
(人間の品格は君子・小人の見地から定めるとおおむね九等ある。
まず第一等は、君子中の君子がある。これは才・徳共に円満に備わり、往くとして可ならざるものである。
第二等は、君子にして徳に優れておるけれども、やや才に欠けるところがある。
第三等は、善人・君子というぐらいであるから、君子は君子に違いないのだけれども、また真実で教養があって垢抜けし、しかも温い心があって素直で、まことに君子のよいところを持っておるのだけれども、それが辛うじて自ら守るに足る程度のものであって、人を化するという程の積極的な力がない。
<出典:『呻吟語を読む』安岡正篤著 致知出版社>
第一等の人
徳も才も備わった一の人格
めったにいません。
想像ですが、いたとしても、“ 徳 ” と “ 才 ” を場面ごとに正しく使い分けることは至難のことと思います。
例えば、義理と人情に対して、利と得は相反するものであるように。
上手く使い分けたように見えても、才ある小人がその判断の矛盾を指摘することになるかもしれません。
第二等の人
頼れる人、あるいは組織を束ねる人物としての理想像かもしれません。
徳の備わった者が高い地位につき、次席の者が才の側面を支えるという構図。
それぞれ別個の人格なので、矛盾が生じることもないでしょう。
功ある者には禄を与えよ
徳ある者には地位を与えよ
(功績を上げたものには報酬を与えることで報いよ
人徳が備わった者には地位を与えることで報いよ)
~西郷南洲(隆盛)~
人々をまとめ上げる組織設計の要は、徳ある者が一、才ある者が二の地位に納まることのようです。
第三の人
徳ある人物ではあるものの
決められない
一歩踏み出せない人
人に優しく
温かく接し
素直な心で
感受性高く
情にも厚い
近くに居てくれると安心できる、そんな人でしょう。
残念なのは、決められないこと、他者に良い影響を与えられないことです。
安岡正篤師によると、知識や見識は十分持ち合わせており、そして正しいものではあるが、決断して実行するという胆識がないとのこと。
第一等から第三等の品格に該当するのは、徳のある君子型の人物です。
この品格を有する人物には、先導者、組織の長としての役割が期待されます。
ただし、君子の範疇にも色々な違いがあるということが示されています。
このように分けて確認してみると、自分がなりたい人物が具体的に感じられるのではないでしょうか。
次回は、第四等から第六等の品格を取り上げます。