建設業界(2022)の2回目です。
今回は、売上高利益率からみる収益性で「利益創出力」の分析です。
取り上げる指標は、総資本経常利益率、売上高総利益率、
売上高営業利益率、売上高純利益率となります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
近年の建設業界は、受注競争が激化しつつ資材高も進んでいます。
2022.05.14付日経新聞朝刊によると、オフィスビルの構造材などに使われるH形鋼や異形棒鋼の価格が5割上昇しているとのことです。
また、原油価格の高騰により、建機の燃料代や輸送コストにも上昇圧力がかかってきています。
今回見る利益総出力の各指標は、上記の影響により鹿島建設を除いた3社で落ち込みが大きくなっています。
またその鹿島建設においても今期(2023.3月期)は減益を見込んでいるとのことです。
【総資本経常利益率】
〔総資本経常利益率=経常利益÷総資本(負債+純資産)〕
トップは鹿島建設です。
各社が直近2期で低下している中、健闘しています。
先回見た営業利益の良好さが奏功しています。
特に直前期の経常利益が1,521億円、前年比108.9%と相当伸びている点が注目されます。
なお、2023.03期の連結予想経常利益額は1,220億円とのことです。
2番手は大成建設です。
2021期までは相対的に高い値でしたが、直前期でトップの座を譲りました。
経常利益は直近2期連続の低下となっています。
総資本は2021期で下がりましたが、直近では前年比104.6%と拡大しました。
続いて清水建設です。
直近2期連続で低下しています。
特に直前期の落ち込みが急です。
直前期の経常利益は前年比で47.8%、1,055億円から504億円へと半減しました。
それに対して総資本は3期連続で拡大しています。
なお、中期経営計画(2019-2023)では、2023年度の目標経常利益額を1,400億円としています。
最後は大林組です。
直前期で最も急落しました。
総資本が3期連続で拡大する中、直近の経常利益は498億円と、前期比で38.7%と大幅に低下しました。
前回述べた、2大需要の収束による競争激化の結果なのでしょう。
直前期の売上高は前年比108.8%と伸びていますが、安値受注の影響で利益率は低下しているようです。
【売上高総利益率】
〔売上高総利益率(粗利益率)=売上総利益(粗利益)÷売上高〕
トップは鹿島建設です。
4期間、12.7%と12.3%の繰り返しであり、計ったように安定しています。
競争が激化する中でも一定比率を維持しており、安値受注回避の姿勢がうかがえます。
ただし、それでも売上高の前年比上昇率がトップとなっている点は秀逸でしょう。
2番手は大成建設です。
2021期までは4社中最も高いレベルを維持していましたが、直前期で大きく低下しました。
売上高の伸び率は前年比で104.3%ですが、売上原価のそれは107.5%となっています。
続いて清水建設です。
2021期までは4社中2位と高いレベルでした。
直前期では、売上高がほぼ横ばいの中、売上原価は106.1%と伸びてしまっています。
最後は大林組です。
直前期の落ち込み度合いが最も激しくなっています。
売上高は前年比で108.8%と伸びていますが、売上原価は114.8%とそれ以上に大きく上昇しました。
【売上高営業利益率】
〔売上高営業利益率=営業利益÷売上高〕
トップは大成建設です。
ただし、2期連続で低下しています。
2021期の営業利益は前年比77.8%、売上高のそれは84.5%でした。
直前期については、営業利益が前年比73.6%とさらに低下した一方、売上高は104.3%と上昇しています。
2番手は鹿島建設です。
前記の粗利益率と同様の動きですが、それよりはやや低下傾向になっています。
前回見たように、営業利益は3期連続で低下していますが、全て前年比90%台後半と、極端な低下にはなっていません。
続いて清水建設です。
やはり、直前期の落ち込みが大きくなっています。
直前期の営業利益の前年比は45.1%となっています。
最後は大林組です。
粗利益率と同様に、直前期の落ち込み度合いが最も大きくなっています。
直前期の営業利益の前年比は33.3%となっています。
【売上高純利益率】
〔売上高当期純利益率=親会社の所有者に帰属する当期利益÷売上高〕
トップは鹿島建設です。
2021期までは4社中最下位層でしたが、5%台を安定的に維持したことからトップとなりました。
特に直前期の当期純利益は、前年比101.4%(1,002億円)と伸ばしています。
なお、2023.03期の連結予想当期純利益額は850億円とのことです。
2番手は大成建設です。
直前期は6%台から4%台まで低下しました。
直前期の当期純利益は716億円、前年比77.3%となっています。
なお、中期経営計画(2021-2023)ではグループ純利益目標が1,000億円、TAISEI VISION 2030では同1,500億円程度としています。
続いて清水建設です。
直前期の当期純利益は476億円、前年比61.5%となっています。
最後は大林組です。
直前期の当期純利益は415億円、前年比41.1%となっています。
今回、特に気になったのは鹿島建設の安定性です。
主力の建築事業セグメントは受注競争の影響を受けながらも健闘し
海外関係会社セグメントがさらに下支えしているようです。
今回は以上です。
次回は、「稼ぐ力」を見ていきましょう。
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