建設業界の3回目です。
今回は、「稼ぐ力」の分析です。
取り上げる指標は、EBITDA、EBITDAマージン、ROEとなります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【EBITDA】
〔EBITDA=営業利益+償却費〕
トップは鹿島建設です。
直前期は他の3社が低下している中で拡大しており、この4期間で最大値になっています。
営業利益と償却を分けた表では、直前期の営業利益は第1回で見たように下がりましたが、コスト計上される償却費は2倍以上となっており、実質的には「稼ぐ力」が強化されていることがわかります。
2番手は大成建設です。
2020期は4社中トップ、また4期間中で最大額となりましたが、その後2期連続で低下しています。
償却費は一定額であることから、営業利益の復元が期待されます。
続いて清水建設です。
4社の中では低位に位置しています。
2020期はこの4期間中で最大値ですが、その後低下しました。
ちなみに、直前期の償却費は前年比で2割以上高まっています。
最後は大林組です。
2021期まではトップ争いをしていましたが、直前期に大きく低下しました。
【EBITDAマージン】
〔EBITDAマージン=EBITDA÷売上高〕
トップは引き続き鹿島建設です。
各社が2022期で大きく下落する中、唯一水平の形状を保っています。
さらに直近2期連続で上昇させており、良い意味で独特の推移です。
2番手は大成建設です。
下位の2社よりは低下度合いが小さくなっています。
続いて清水建設です。
前述のEBITDAの規模では下位ですが、マージンで見ると2021期までは力強さがありました。
復元が期待されます。
最後は大林組です。
他の指標でも見られたグラフ形状、つまり2022期の落ち込み度合いが4社中最大になっています。
【ROE】
〔ROE=親会社株主に帰属する当期純利益
÷{純資産-(新株予約権+非支配株主持分)}〕
トップは鹿島建設です。
3期連続の低下ですが、直前期はその度合いを抑制しており、2ケタ台を維持しています。
利益率やEBITDAの良好さから、当期純利益を伸長させたことが好影響を与えています。
2番手は大成建設です。
2020期までは15%を超えるレベルですこぶる良好な値でした。
その後2期連続で低下した点は残念ですが、直前期の低下度合いは抑制されています。
もともと収益力は強いので、今後が期待されます。
なお、中期経営計画(2021-2023)及びTAISEI VISION 2030において、ROE目標値を10%程度としています。
続いて清水建設です。
2021期の実績9.5%は、コロナ禍において悪くはないでしょう。
ただし、直前期では5.8%と大きく低下してしまいました。
なお、中期経営計画(2019-2023)の財務KPIとして、ROE10%以上としています。
最後は大林組です。
他の3社の直前期に改善の兆しが見える中、最大の低下度合いとなりました。
今期以降の挽回が強く求められるものと想定されます。
なお、中期経営計画2022では、目標ROEを8%以上としています。
今回、特に気になったのは
前回も感じましたが、大林組の稼ぐ力が弱まっている点です。
売上高と総資産が拡大した事業規模については力強さを感じますが、ここまでの分析では稼ぎが伴っていないようです。
今回は以上です。
次回は、「資本活用力」を見ていきましょう。
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