精密機械業界の2回目です。
今回は、売上高利益率からみる収益性、「利益創出力」の分析です。
取り上げる指標は、総資本営業利益率、売上高総利益率、
売上高営業利益率、売上高純利益率となります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【総資本営業利益率】
〔総資本営業利益率=営業利益÷総資本(負債+純資産)〕
HOYAが高いレベルで推移しています。
低下傾向に見えますが、計算式の分母と分子、つまり総資本と営業利益はともに3期連続で増大しており、成長過程と認識できます。
2番目はテルモです。
決して低い水準ではありませんが、やや低下傾向にあります。
総資本は3期連続で増えており、その一方、営業利益が減少傾向となっているためです。
オリンパスも直前期で落としています。
総資本は直近2期連続で増加していますが、営業利益が直前期で減少したためです。
なお、2019.03期の大幅ダウンが目立ちますが、これは減損損失によって各種の費用を計上したためです。
2011年に発覚した巨額の所得隠し(粉飾決算)の損害賠償和解解決金194億円なども含まれています。
ニプロは、水準としては高くありませんが、安定的に推移しています。
総資本は概ね横ばいという中、営業利益は2期連続で増加させています。
【売上高総利益率】
〔売上高総利益率(粗利益率)=売上総利益(粗利益)÷売上高〕
HOYAがここでも高いレベルです。
表内の数値をよく見ると、毎年1ポイント前後、あるいはそれ以上の変動が生じています。
事業特性にもよるでしょうが、比較的大きめの変動と言えます。
オリンパスは3期連続で低下しています。
売上高の上昇率より売上原価の上昇率が大きく、また売上高の低下率よりも売上原価の低下率が小さいという状況が生じています。
テルモは、直前期で1.5ポイントほど落としましたが、それまでは2期連続で上昇しています。
直前期は、売上原価の額がほぼ横ばいの中、売上高が低下しました。
ニプロは、直前期で微増したものの、全体的な流れは低下傾向です。
直前期以前の2期では、売上原価の伸び率が売上高の伸び率以上になっています。
【売上高営業利益率】
〔売上高営業利益率=営業利益÷売上高〕
トップのHOYAは、直前期で大きく伸ばしています。
直前期の売上高は前年比で5%低下していますが、営業利益は9%以上伸長しています。
テルモは3期連続の低下になっています。
売上高が伸びても営業利益はそれほど伸びず、また直前期の売上高の低下(2.4%ダウン)時には、営業利益がそれ以上(約11%ダウン)に低下してしまっています。
オリンパスも直前期では落としました。
売上総利益率と同様の状況です。
経費全体に占める固定費の割合が多めなのかもしれません。
その場合、売上高の変動が与える営業利益への影響が大きくなります。
ニプロは、直前期もわずかながら伸長しており、2期連続の上昇です。
2期ともに、売上高と営業利益の両者を伸ばしています。
わずかとは言うものの、マネジメント面の強化が奏功した結果かもしれません。
もしそうであるのなら今後に期待が持てます。
【売上高純利益率】
〔売上高当期純利益率=親会社の所有者に帰属する当期利益÷売上高〕
HOYAがここでも高い水準です。
2020.03期こそ低下しましたが、全体的に上昇傾向であることが認識できます。
テルモは直前期で低下しており、全体的には低下傾向と見て取れます。
直前期では、当期利益の低下度合いが大きくなってしまいました。
ニプロは変動が大きくなっています。
ただ、直前期は、この4期間で最大レベルに持ち上げています。
オリンパスは5ポイントの低下となりました。
売上高が前年比で3%強低下したのに対し、当期利益は前年の4分の1程度まで縮小してしまいました。
今回は、HOYAの利益率の高さが目立ちました。
売上高規模は3番手ですが、利益を生み出す力が高いと言えます。
前回述べたように、
HOYAの売上総利益額と営業利益額は当方判断による計算結果ですが、
当期利益率の高さだけをとってもかなりの高水準です。
今回は以上です。
次回は、「稼ぐ力」を見ていきましょう。
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