今回から精密機械業界を取り上げます。
分析の対象企業は次の4社です。
オリンパス株式会社、テルモ株式会社、HOYA株式会社、ニプロ株式会社
(4社とも決算期は3月末です。)
第1回の今回は「成長力」を確認します。
取り上げる実績値は、
売上高推移、営業利益推移、総資産推移、従業員数推移です。
【売上高推移】
オリンパスは、2期連続で減少しています。
新型コロナの感染拡大に伴って、手術の延期や中止、医療機関など顧客先への訪問の制限や商談の延期・中止など、販促活動に制約が生じたとのことです。
主力の内視鏡事業が4,195億円へと1.5%の減収、そして治療機器事業は2,060億円と4.6%の減収、科学事業は959億円と8.9%の減収となっています。
テルモは、直前期で減少しました。
やはりコロナ感染の拡大による活動の制約が主要因のようです。
セグメント別では、主力の心臓血管カンパニーが3,285億円と6.3%の減収となりましたが、ホスピタルカンパニーでは1,755億円と2.7%の増収、血管・細胞テクノロジーカンパニーは海外で伸ばした好影響もあり1,095億円と2.2%の増収となっています。
HOYAも直前期で減少しました。
セグメント別では、主力のライフケア事業の売上高が3,418億円と8.9%の減収になった影響が大きくなっています。
情報・通信事業では売上高2,010億円と2.2%の増収、その他事業も売上高52億円と8.1%の増収になっています。
ニプロは、2030年度に売上高1兆円の企業グループになるという中期経営計画を掲げています。
そのための主要KPIのひとつに、売上高成長率を7.0%以上にするという項目があります。
その勢いもあり、3期連続で売上高を増加させています。
直近2期の成長率は7.0%には届いていませんが、この4社の中では唯一の3期連続増収となっています。
セグメント別では、医療関連事業では手袋・マスク等の衛生材料や注射針類が好調であったことから売上高は3,476億円と3.5%増収です。
医薬関連事業は、新型コロナ感染の影響や被災による生産・出荷数の減少があり、売上高は686億円と2.5%の減収です。
ファーマパッケージング事業は、新型コロナによる医薬用容器等の出荷が増し、売上高は387億円と6.7%の増収となり、その他事業でも増収となっています。
【営業利益推移】
HOYAが最大であり、さらに3期連続で拡大しています。
(なお、HOYAのIFRS(国際会計基準)による連結包括利益計算書には、
売上総利益、営業利益、経常利益の区分がありません。
よって、売上総利益と営業利益は、当方で妥当と思われる計算式で算出しました。)
セグメント別では、主力のライフケア事業のセグメント利益が635億円と2.1%の増益となっています。
さらに、情報・通信事業は950億円と7.7%の増益、その他事業も9億円と増益になっています。
2番手はテルモですが、直前期比で10%以上減少させています。
心臓血管カンパニーの調整後営業利益が14.3%と大きく減少した点が響いています。
ホスピタルカンパニーは1.9%の増益、血管・細胞テクノロジーカンパニーも26.8%の増益でした。
続いてオリンパスです。
2019.03期は極端に落としましたが、翌2020.03期は完全に復元させました。
しかし、直近の2021.03期では10%以上減少してしまいました。
内視鏡事業の営業利益が4.3%の減益、治療機器事業は5.9%減益、科学事業では50.5%もの減益となりました。
ニプロは最後ですが、2期連続で伸ばしています。
医療関連事業の営業利益は394億円と8.7%の増益、医薬関連事業では101億円と23.7%の減益ですが、ファーマパッケージング事業で20億円と195.0%の増益にしています。
【総資産推移】
4社とも総じて増加させています。
オリンパスとテルモはやや高めの伸び率で、HOYAとニプロはやや抑制気味に映ります。
【従業員数推移】
HOYAは最大人員数で、ほぼ横ばいという推移です。
ニプロは、人員数を増加させています。
オリンパスは、逆に減少させています。
テルモは最小人員数で、微増させているという状況です。
今回は以上です。
次回は、収益性の中の「利益創出力」を見ていきましょう。
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