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COLUMNSブログ「論語と算盤」

欲の愚かさ恐ろしさ

2022年3月11日

勘定者はすくたるる者なり。仔細は、勘定は損得の考へするものなれば、常に損得の心絶えざるなり。死は損、生は得なれば、死ぬる事をすかぬ故、すくたるるものなり。また学問者は才知・弁口にて、本体の臆病・欲心などを仕かくすものなり。人の見誤る所なり。〔聞書第一〕

(計算高い者は憶病になりがちである。なぜなら、計算とは損得を考えることだから、計算高い者はたえず損得ということが頭から離れない。死は損であり、生は得であるとするなら、死ぬことはいやだから、卑劣なふるまいをしてでも避けようとするのである。

 また、知識人という者は、才知や弁舌で、自分の臆病な気持ちや欲深い心をごまかそうとするものだ。それを見誤ってはならない。)

<出典:「続 葉隠」原著 山本常朝/田代陣基 神子侃編著 徳間書店>

 

 

 

計算高いやからはこざかしい小人でしかない、と聞いても、

 

昨今、あまりピンとこない人が多いようです。

 

 

しかし、これは大きな損失につながります。

 

 以前にも記した、「西郷南洲遺訓」「この国を想う」を再掲します。

 

『普仏戦争(18701871)の際、フランスが三十万の兵と三カ月の兵糧があったにもかかわらず、ろくに戦わずに降伏したという面目のない話があるが、これはフランスの指導者らが、あまりに金銭のソロバン勘定ができ、「自分の命と財産を守る」ことばかり考えたのが理由である、と言って(南洲翁は)笑われた。』

 

自らの保身のために、国を売ったわけです。

 

一国の指導者がこんなさもしいことでは、人類の未来はないでしょう。

 

 

計算高さはもろけんです。

 

保身や金銭を得るための打算

これらは自らの思考、身体、言動を縛り上げます。

 

 

 金が持つ魔力に関するこんな話もあります。

 

 「第一次世界大戦の頃、米国南部の小さな町で、小さな洋服の仕立屋が開業しました。しかし、店主が異国人であることから、少年たちが嫌がらせをしようと、店先で、人種差別的に店主をなじり始めたのです。

 困った店主は一計を案じ、子供たちに「私を差別する発言をした子には10セントあげよう」と言いました。戦利品を得て大喜びした子供たちは、次の日もやって来て、差別的発言を繰り返します。そこで店主は、「今日は5セントしか与えられない」と言いました。さらに次の日にも子供たちは同様にやじりましたが、店主は「これが精一杯だ」と言って今度は1セントを渡しました。

 すると、少年たちは10分の1に減ったことに文句をいい、「ふざけるな」と言って、もう二度と来なくなったそうです。」

 

 子供の遊び心や欲求には、残酷な一面があります。

いじめは、心の内面に潜む、異質なものを排除しようとする強い意欲の表れなのでしょう。

 

 この意欲、どうなったか・・・。

店主は、まず「意欲」と「達成」の間に金銭を挟み込みます。

次に、その金銭レベルを徐々に下げることで、

見事、その熱い意欲を消し去ることに成功しています。

 

 

現代社会でも官民問わず、金の絡んだ事件は枚挙にいとまなく、

過去から無くなることがありません。

 

 

これが、欲の恐ろしさです。

 

 

自らの純粋な思い、世のため人のために尽力しようとする初心があっても、

金銭欲、打算によってかき消され、自らの魂を売る羽目になる。

 

 

怖いことです。

 

 

クラーク博士のこの言葉。

Boys, be ambitious! Be ambitious not for money or for selfish aggrandizement, not for that evanescent thing which men call fame. Be ambitious for the attainment of all that a man ought to be.”

「青年よ大志をもて。それは金銭や我欲のためにではなく,また人呼んで名声という空しいもののためであってはならない。人間として当然そなえていなければならぬあらゆることを成しとげるために大志をもて」

(北海道大学付属図書館webサイトより抜粋)

※クラーク博士の言かどうか不明な点もあるようです。

 

 

一度は聞かれたでしょう。

そして、一人一人が、自分なりに何かを考えたのでは・・・。

 

 

にもかわらず、忘れてしまっていませんか。

 

 

死ぬ間際の1分、金銭欲や名誉欲に操られた人生だったのかと気付いても、

 

もはや時間切れ。

 

 

 

 詩人の坂村真民氏は言います。

「誌魂には名誉とか、地位とか、財産とかが、一番毒だ。

これにとりこにされると、どんなすぐれた人でも、この誌魂をなくしてしまう。」

<出典:「坂村真民一日一言」坂村真民著 致知出版社>

 

 

名誉、地位、財産、これらは、自らの魂を磨くためには余計なものです。

 

 

 

名誉が無いと戦えない、地位や財産というよろいが欲しい・・・。

 (何のため? つまらぬ保身のためでは?)

  

鎧をたくさん身に付けて威張りたい・・・。

(重くて動けずちてゆく、そんな哀れな末路がお望み?)

 

 

天から、そして祖先から、そして親から

 授かったこの身体

 

裸一貫、真正面を向いて、

堂々と、強く、優しく、愛し、助け、

後に続く人たちのために、笑顔で、生き抜いていきましょう。