サイゼリアの2回目です。
今回は、貸借対照表で財政状態を見ていきます。
まず、直近3期における流動/固定資産、流動/固定負債、純資産の動きを次の図表で示します。
【流動資産】
直近の2020.08期は、2018.08期対比で、15%のアップです。
増加要因については、後述します。
【固定資産】
直近の2020.08期は、2018.08期対比で、3%ダウンです。
売上高が伸び悩む中、一定の新規出店を行っているようですが、
設備投資金額としてはやや抑え気味と感じられます。
【流動負債】
前述の期間において、1.6倍ほどになりました。
直前期まで有利子負債が無かったのですが、
今回、短期借入金で100億円調達したためです。
【固定負債】
2018.08期対比で1.2倍になっています。
固定負債の内訳では、資産除去債務という科目が8割5分を占めています。
新規出店とともに増額になっており、固定負債増加の主要因です。
この科目は、テナントで入った賃貸物件における、
将来退店する際の原状回復費用です。
【純資産】
7%ダウンであり、約58億円の減少となりました。
これは当期純損失がマイナスの内部留保として、
繰越利益剰余金に算入された結果です。
以上の推移の中で、最も気になるのは流動資産の増加であり、内訳の各科目の動向です。
主たるものを図表でまとめました。
・現金及び預金は、前年比で4ポイント、実額で10億円ほど減少しました。
借入金による外部からの資金調達を行ったのですが、
結果的には減少しました。
・棚卸資産は増加しています。
2018.08期比で4%、実額で2億円強の増加であり、
2019.08期比では14%の増加、実額で7億円強の増加です。
全体の金額から見ると少額と言えますが、売上高が低下しているため、
棚卸資産回転期間は、18.0日→16.5日→23.5日と悪化しています。
マネジメント層にとっても気がかりな点ではないかと思われます。
・その他流動資産は急増しました。
内訳では、「その他」が2.6倍強となっています。
(2019.08期:1,010百万円 → 2020.08期:2,729百万円
⇒ 17億19百万円の増加)
「その他」は、単体と連結の両決算書の注記に記述がありません。
何とも言えませんが、他企業と同様に考えた場合、
関係会社への貸付金と想定されます。
グループ会社だから安心とは言い切れませんし、
現預金を減少させる一要因ですので、早期に回収したいものです。
コロナの影響で収益性が弱まり、それが財政状態にも表れてきています。
前回述べませんでしたが、労務費をはじめ固定費の削減が行われています。
これらの経営努力が早めに実を結んでほしいのですが、
現状ではコロナの影響がいつまで続くか全く予想できません。
いつまで耐え忍べば良いのか。
厳しい状況は、まだ続くようです。
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