サイゼリアの3回目です。
今回はキャッシュフローについて確認します。
株式会社サイゼリアの単体決算から、間接法でCF計算書を作成しました。
2020.08期は収益状況が悪化したため、
キャッシュフローもかなり窮屈になっています。
まず、営業活動によるキャッシュフローの明細です。
2019.08期はキャッシュ・アウトの項目が少なく、営業キャッシュフローは80億円近くのキャッシュ・インとなっています。
特に当期純利益と減価償却費の合算である簡易キャッシュフローで60億円強稼いでいる点が力強く、さらに棚卸資産の削減でも5億円近くのキャッシュ・インとなりました。
しかし、2020.08期になると状況は一変し、キャッシュ・アウト要因が多くなります。
まず、当期純利益が大きくマイナスしため、簡易キャッシュフローは約5.5億円のキャッシュ・アウトになりました。
資産面では、第2回で触れた棚卸資産の増大による7.3億円、他流動資産の拡大による17億円弱、これらがキャッシュ・アウトの主要因になっています。
なお、未収入金はテナント未収入金であり、売掛金と同じ意味合いになります。
負債面では、引当金(賞与引当金、株主優待引当金、株式給付引当金、貸倒引当金)の取り崩し分、さらには売上高減少を起因とした仕入債務や他流動負債の減少がキャッシュ・アウト要因になっています。
その他固定負債は、第2回で触れた資産除去債務の増大を中心にキャッシュ・インになっています。
次に、投資活動キャッシュフローですが、特筆する要因が見当たらなかったので、固定資産の増減のみで表しています。
新規出店や店舗改装、生産施設の増強を行っているため、2019.08期で23億円強、2020.08期では33億円強のキャッシュ・アウトとなりました。
この支出は必要不可欠と言える内容でしょう。
以上から、営業CFと投資CFを合計したFCF(フリーキャッシュフロー)は、
・2019.08期・・・56億円強のキャッシュ・イン
・2020.08期・・・約93億円のキャッシュ・アウト
というように、2期で逆転しました。
そして財務活動キャッシュフローです。
FCFでマイナスした約93億円を、短期借入金100億円でちょうど賄う形になりました。
自社株買い、配当金の支払いは、両年とも一定の額を支出しています。
財務CF自体は、2019.08期で15億円強のキャッシュ・アウト、
2020.08期では約83億円のキャッシュ・インとなりました。
そして、最終的に2020.08期の当期CF増減はちょうど10億円のマイナスとなり、
期末現預金は255億76百万円となっています。
この金額は、2020.08期実績の日商で98.0日分(3ヶ月分強)です。
仮に、短期借入金の100億円が無ければ、日商59.7日分(約2ヶ月分)となり、月商でいうとほぼ一月分の差が出ます。
ちなみに、2019.08期は、2019.08実績の日商で81.5日分(約2.7ヵ月)でした。
手元資金として、現預金で3ヶ月近く保有するレベルが当社にとって適切なのかもしれません。
次回はサイゼリアの最終回です。
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