今回から株式会社サイゼリアを取り上げます。
当社においては、連結決算ではなく単体での分析を行います。
単体決算はほぼ国内事業の内容となるため、イメージが湧きやすいと思います。
初回は損益計算書を取り上げます。
まずは、売上高と売上総利益(粗利益)の推移、
そして営業利益率と経常利益率の推移について見てみましょう。
最初に、2018.08期から2019.08月期への変化を確認すると、売上高は前年とほぼ同等でした。
若干ながらマイナスしていますが、その理由は既存店の不振ということです。
しかし、売上総利益をみると、目立ちませんが増加しています。
売上総利益率は、2018.08期の63.3%から2019.08期の63.8%へ0.5ポイント上昇しています。
そして、続く営業利益と経常利益についても、実額および利益率ともに上昇しました。
粗利益額が増した要因を下図に示します。
(2018.08期を「1」として、前年からの伸び率を明示)
売上高が横ばい、労務費もほぼ横ばいという中、材料費が10%近く下がっています。
経費が急上昇していますが、以下のように実額では材料費の方が多額です。
・材料費・・・2018.08期:10,217→2019.08期:9,240→減少額:977(百万円)
・経 費・・・2018.08期: 1,465→2019.08期:1,587→増加額:122(百万円)
材料費が減少したのは輸入食材の価格低下が背景にあります。
具体的には円高、そしてEPA(Economic Partnership Agreement:経済連携協定)の発効が奏功したとのことです。
材料費の低減により、売上高が減少しても売上総利益(粗利益)が増え、
営業利益と経常利益も増えたという経緯です。
しかし、この期には年間で60店舗ほどが新設されています(累計で1,100店舗ほど)。
出店によって投資コストが生じ、また固定費が底上げされて増額となるため、
売上高が伸びなければ収益的には非常にキツイ話です。
次に2020.08期ですが、新型コロナの悪影響によりさらに厳しい状態に晒されています。
この期は、消費増税による来店客の負担を排除するために税込みの提供価格を不変にし(実質2%の値下げ)、感染リスクが高まるつり銭授受を減少させるために価格末尾を00円や50円に統一するなど、各種の経営努力がなされました。
しかし、残念ながら売上高は19%ほど減少するという結果になっています。
そしてその後、コロナ感染拡大による悪影響はさらに増しています。
2021.02までの第2四半期実績では、前年同期間を18%ほど下回って推移しています。
実際のところ、損益計算書は単年度限りですので、
翌年に収益状況が一気に改善することもあり得ます。
ただし、業績が都度累積していく貸借対照表は、そう簡単にリフレッシュできません。
次回は、その貸借対照表をもとに財政面を確認してみます。
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