ソニーの3回目です。
今回は、資本の調達面と運用面について見てみましょう。
まず、資本の運用面として「資産の部」を確認します。
資産全体では、前年比14.4%アップ、金額で約3兆3,155億円増加しています。
特に伸長している科目として、Ⅰ流動資産の中の有価証券があげられます。
前年比で57.1%アップ、金額で約1兆547億円の増加です。
内訳を確認してみると、主として金融分野に含まれるものであり、日本国債・地方債、日本社債、外国国債、外国社債が増加しています。
次に伸長しているのは、現金・預金及び現金同等物であり、前年比で18.2%アップ、金額で約2,746億円の増加です。
売上高の伸び率が9.0%アップであるのに対し、18.2%とそれ以上に伸ばした点は、キャッシュ重視の姿勢の表れと捉えられます。
さらに、Ⅲ投資及び貸付金における投資有価証券その他も高い伸びとなっています。
前年比で12.1%アップ、金額で約1兆5,200億円の増加です。
こちらについても、流動資産の有価証券同様の明細がそれぞれ増加しています。
なお、Ⅴその他の資産の中には、営業権や無形固定資産が含まれており、それぞれ増加しています。
内訳の概略は、特許権・ノウハウ・ライセンス契約、販売用・社内利用ソフトウエア、ミュージック・カタログなどとなっています。
特に営業権については、先回述べた6事業部門(G&NS、音楽、映画、EP&S、I&SS)それぞれについて増加させています。
次に、資本の調達面としての「負債の部」を確認します。
資産の増加額である約3兆3,155億円のうち、負債から2兆4,831億円が賄われています。
Ⅰ流動負債の中で増加額が多いのは短期借入金です。
前年比で46.6%のアップ、金額では3,777億円の増加になっています。
続いて、銀行ビジネスにおける顧客預金となり、
前年比で13.6%アップ、金額では3,331億円の増加です。
そして、Ⅶ生命保険ビジネスにおける契約者勘定が、
前年比で18.9%アップ、金額では6,888億円の増加です。
上記の合計は、約1兆4,000億円となり、調達源の中心は金融ビジネスとなっています。
最後に、資本の調達面としての「資本の部」を確認します。
上場企業で、しかも連結決算ともなると、
自己株式や非支配持分などが絡んできて複雑になります。
一方、非上場企業の場合、通常「純資産の部」が増減するのは、いわゆる内部留保である繰越利益剰余金(マイナスの場合は繰越欠損金)の増減、もしくは資本金の増減の2項目となります。
そこに着目すると、ソニーでは、直前期で増資は行われていないようです。
そして、繰越利益剰余金を含有する利益剰余金の勘定は、前年比で39.3%アップ、金額で1兆883億円の増加になっています。
PLの当社株主に帰属する当期純利益が1兆1,718億円となっており、株主配当を控除した分が内部留保されたと想定されます。
つまり1兆円強を自己調達したわけです。
資本運用面の「資産の部」では、有価証券と投資有価証券の合計が約2兆5,700億円でした。
資本調達面で取り上げた、短期借入金、銀行顧客預金、生保契約者勘定、利益剰余金、以上の増加額の合計が、2兆4,900億円となります。
以上から、直前期における財政状態の動きとして、大雑把でありますが、金融部門を中心に資本が調達され、それが有価証券など、やはり金融部門で運用されているイメージが浮かび上がります。
ところで昨今、ROE(Return On Equity:自己資本利益率)という経営指標が話題になります。
●ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100
・・・株主の資本でどれだけの当期純利益を生み出したかを示す指標
日本企業はROEの値が比較的低く、上場企業は8.0%以上が望ましいという声が、2018年あたりからよく聞かれました。
ソニーでは、直近4年間の推移が18.0%、27.3%、14.8%、24.2%と高いレベルで維持されています。
次回は、ソニーの最終回として、キャッシュフローを中心に見ていきます。
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