ソニーの4回目で、最終回です。
今回はキャッシュフローの動向を確認します。
なお、昨日(8/4)、第一四半期の連結業績の発表がなされましたが、売上高・営業利益ともに過去最高実績をたたき出したようです。
コロナ禍における巣ごもり需要を的確に捉え、さらに伸長させているようです。
これらの業績についても、キャッシュフローを生み出し、効果的に成長分野に投資していくたゆまぬ工夫と努力が奏功していることは間違いないでしょう。
それではまず、昨年(2020.03期)のキャッシュフロー(CF)を確認します。
上図の右端、「ソニー連結」を見ると、営業CFで1兆3,500億円弱を生み出し、投資CFで1兆3,500億円強を支出しています。
そのため、両者合計となるフリーキャッシュフロー(FCF)は、グラフにほとんど表れない程度(そうは言っても25.3億円)であり、財務CFで調達した分がそのままキャッシュ増加額というイメージになっています。
(なお、グラフ内の「当期創出CF」は為替相場変動の影響を考慮していません。
単純に営業CF、投資CF、財務CFの合計値としています。)
この状態は、非常にスッキリしていますね。
財務諸表はCF計算書も含め結果論です。
もちろん、年度計画どおりになるようにマネジメントしていくわけですが、このように営業CFと投資CFの合計がほぼゼロという状況は、背後に精緻なマネジメント体制が存在してこそと、勝手に想像する次第です。
次に直前期、2021.03期を見てみます。
営業CFは、前年とほぼ同様ですが、部門別にみると、金融分野が昨年より減少し、金融分野外で大きく伸長させました。
金融分野が減少した要因は、有価証券及び投資有価証券に関する損益で4,783億円のマイナスを出した点が大きく影響しています。
一方、金融分野外における主要因は当期純利益の拡大です。
2020.03期の5,480億円から1兆0,938億円と、ほぼ2倍になったのは大きいですね。
次に投資CFを見ると、全体では前期以上に支出しており、その大半が金融分野になっています。
金融分野の主要因は、ソニー銀行の投資及び貸付が増えた点とされています。
金融分野外でも、前年の支出額3,631億円に対して、2021.03期は5,812億円と相当増やしています。
中でも、半導体製造設備などの固定資産の購入が大きく、さらなる業績拡大に向けて製造能力の強化を図っていると言えます。
財務CFは、全体として増加しました。
投資CFが大きかった金融分野での増加が大きくなっており、ソニー生命の短期借入金の増加やソニー銀行の顧客預り金の増加などが主要因とのことです。
金融部門外では2期連続で縮小させています。
内容はやや輻輳しており、長期借入金の増加と返済、普通社債の償還などとなっています。
最終的なキャッシュ保有額は、前期の1兆5,124億円から
直前期は1兆7,870億円へと増大しました。
年商が約9兆円なので、1兆8,000億円弱のキャッシュは2.4ヶ月分に該当することになり、各種産業を概観してもかなり多めの保有キャッシュ額となっています。
もっとも、負債にソニー銀行の顧客預金等があるため、必要な保有レベルなのかもしれません。
総じて、今後のビジネス展開に強気な姿勢が感じられ、利益的にも資金(キャッシュ)的にも高いレベルの創出力があることが伝わってきます。
一方、市場の投資家からは、「コングロマリットディスカウント」(複合企業のわかりづらさへの嫌気)の懸念が拭えないらしく、2021.03期の業績でも好感度はそれほどでもないようです。
確かに、競争の激しい分野にも参入していることから、総合力として完全な優位性を訴求することは困難なのでしょう。
しかし、例えばアップルやAmazonなどのように「一本足打法」的な事業は、今後迫りくるリスクが読み切れない側面もあるのではないでしょうか。(リスクというより不確実性ですね)
私などは、その会社に入社した人の動機や背景、そして働いている人々、さらには退職後を想定すると、もし私がソニーに憧れて入社したのなら、挑戦的で躍動的な会社、そして息の長い会社であることが望ましいと感じます。
ソニーのPurpose(存在意義)である、
「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす」を実現し、
「コングロマリットプレミアム」(複合企業の利点)を発揮して、
継続企業として営んでいってほしいと感じます。
~蛇足:小さいころからソニー製品に触れる機会が多く、
とくに「It's a Sony」のCMには強いインパクトを感じたものです。~
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