今回から、ソニーグループ株式会社を取り上げます。
2021.03期の有価証券報告書を基に、業績等の推移を見てみましょう。
なお、旧社名(ソニー株式会社)が変更され、
2021年4月1日からは、上記のように「ソニーグループ株式会社」となりました。
対象とする決算書はグループの連結財務諸表となります。
有価証券報告書には単体の財務諸表もありますが、ホールディング会社のものとなります。
それでは、事業の中身が見えないため、分析対象としては適切ではありません。
2021.03期まで米国会計基準(U.S.GAAP)に準拠した財務諸表となっています。
そして今期(2022.03期決算)からは、国際財務報告基準(IFRS)を適用するとのことです。
では今回、まず収益面を大まかに見てみましょう。
直近3期分の連結損益計算書(略式)を明示します。
売上高は、直前期でほぼ9兆円となっています。
ちなみに今期の見通しは、前年対比8%アップの9.7兆円を見込まれています。
(2021年4月28日付、「2020年度連結業績概要」より)
上の表を見て、ん?、と思った方も多いでしょう。
米国会計基準の損益計算書は、上表の様な表記となります。国際会計基準(IFRS)とかなり似通っています。
なお、有価証券報告書上では「Ⅰ 売上高」、「Ⅱ 売上高、販売費・一般管理費及びその他の一般費用」について、事業分野別に区分して表示されています。また、「Ⅴ その他の収益」、「Ⅵ その他の費用」についても発生源などにより区分表示されています。
以前触れましたが、日本基準と大きく違う点として、「売上総利益」と「経常利益」がありません。
日ごろ一般的な日本基準で対処している私などは、やや拍子抜けする感があります。
さて、ソニーは様々な事業に取り組んでいるわけですが、大きくは「金融部門」の事業と「金融以外」の事業に分かれます。
そこで、両部門の推移を確認してみましょう。
まず、両部門における売上高・収入、そして原価の伸び率です。
3年前の2019.03期を100.0%として明示しています。
(金融部門以外の事業では、有報で明確に「原価」として表示された値を用いました。
金融部門では、原価にあたると想定される「金融ビジネス費用」の値を用いています。)
2021.03期では、金融ビジネスの伸び率が高く、収入も費用も急拡大しています。
ただしよく見ると、2020.03期では、収入よりも費用の伸び率が高くなっています。
では金融ビジネスは赤字なのか、というとそうではありません。
次図は両部門の粗利益率の推移を示していますが、10%以上ということで黒字です。
(ここで述べた「粗利益率」は、前述の「売上高・収入」から「売上原価・金融ビジネス費用」を控除したものを「粗利益」として認識し、それを「売上高・収入」で除したものです。)
金融ビジネスは黒字ではありますが、それ以外の事業と比較すると「粗利益率」は低くなっています。
また、次図のように、ソニー全体の売上高に占める割合では、金融ビジネス以外の事業の方が圧倒的に多くなっています。
以上、収益面の全体を概観しましたが、これだけでは、まだぼんやりしていると思います。
次回は、金融ビジネス以外の事業について、その中身をやや詳細に確認してみます。
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