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有価証券報告書 財務分析
<ドラッグストア業界・・・第6回>
~最終回~
第6回分析テーマ・・・投資力
分析指標値:
営業CF対投資CF比率
各社別の営業/投資CF推移
ROIC
WACC
(各指標の説明はこちら)
【営業CF対投資CF比率】
〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕
最も100%に近いのはコスモス薬品です。
営業活動で稼いだキャッシュとほぼ同額を投資活動に回しています。
2番手はウエルシアHDです。
2022決算は大きく低下しましたが、直近は大きく上昇しました。
続いてツルハHDです。
直近においては、営業活動によるCF創出がほぼないという状態です。
そしてマツキヨココカラ&CO.です。
直近の3期間は、投資CFを充分にカバーする営業CFとなっています。
続いて各社の推移を見ていきます。
【各社別 営業/投資CF推移】
〔実額ベース〕
ウエルシアHDの直近の営業CFは前年比371.6%の603億円です。
税金等調整前当期純利益は20億円強の増加に留まりましたが、主要な負債科目の期末残高の増加、及び減価償却費・のれん償却額の増加が見られました。
一方、投資CFは前年比97.2%の361億円です。
有形/無形固定資産の取得による支出をはじめ、金額の多い科目がほぼ前年並みの水準となりました。
以上から、直前期のFCF(フリー・キャッシュフロー)は242億円のプラスとなりました。
ツルハHDの直近の営業CFは前年比2.2%の8億円です。
税金等調整前当期純利益は前年比115.4%の増大でしたが、その額以上に仕入債務の減少が生じました。
減価償却費の増加や売上債権の減少などキャッシュプラスの要因もありましたが、棚卸資産の増加や支払利息額の増加もあり、営業CFが極小化してしまっています。
一方、投資CFは前年比104.8%の298億円です。
有形固定資産の取得による支出は、前年より40億円ほど増えて247億円となっています。
それ以外の要因は、概ね前年並みという状況です。
以上から、直前期のFCFは290億円のマイナスとなりました。
マツキヨココカラ&CO.の直近の営業CFは前年比160.9%の641億円です。
税金等調整前当期純利益は、前年比131.6%の649億円になりました。
また、減価償却費とのれん償却額の合計も前年比で140.2%の208億円と増えており、他にも仕入債務の増加で97.5億円のキャッシュプラスとなっています。
他方で、売上債権の増加、棚卸資産の増加、未収入金の増加、契約負債の減少などがマイナス要因となっています。
一方、投資CFは前年比127.0%の197億円です。
有形/無形固定資産の取得による支出が、前年より58億円弱増えたことが主因です。
以上から、直前期のFCFは444億円のプラスとなりました。
コスモス薬品の直近の営業CFは前年比169.1%の544億円です。
税金等調整前当期純利益は、前年より3億円弱減少しましたが、期末仕入債務残高の増加と減価償却費の増加等により、前年に比べて大きく拡大しました。
一方、投資CFは前年比112.3%の491億円です。
有形固定資産の取得による支出が、前年より31億円強増加したことが主因です。
以上から、直前期のFCFは53億円のプラスとなりました。
【ROIC】
〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕
トップはウエルシアHDです。
高いレベルでの4期間連続トップですが、直近2期連続で比較的大きく低下している点は気がかりです。
2番手はコスモス薬品です。
比較的良好な水準での4期間連続の2番手ですが、3期連続の低下になっています。
続いてツルハHDです。
過去2期連続で低下していましたが、直近で上昇しています。
そしてマツキヨココカラ&CO.です。
当社も2期連続の低下後、直近で上昇しました。
【WACC】
〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))
+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕
〔ROIC-WACC〕が最大なのはウエルシアHDです。
ROICのレベルもさることながら、WACCが相当に低くなっています。
これは、β値が0.28とかなり低いためであり、株主資本コストは2.42%となっています。
有利子負債は調達資本中7.6%の割合であり、負債コストは0.02%です。
以上から算出されるWACCは、両者の加重平均として2.2と示されています。
親会社のイオン㈱の傘下にあることも影響しているでしょう。
2番手はコスモス薬品です。
ROICも良好で、WACCも抑制されています。
β値は0.50、株主資本コストは3.93%、負債コストは0.01となっています。
調達資本中の有利子負債の割合は2.3%となっています。
続いてツルハHDです。
当社もROICは良好なレベルです。
また、WACCも前社以上に低く抑えられています。
β値は0.50、株主資本コストは3.93%、負債コストは0.01、以上の3つの値は前社と同じですが、調達資本中の有利子負債の割合が7.1%と多めになっているため、低金利の恩恵が顕在化しました。
そしてマツキヨココカラ&CO.です。
ROICは決して低いレベルではありませんが、WACCが高めであるため、〔ROIC-WACC〕が1.8%と低くなってしまっています。
β値は0.79、株主資本コストは5.93%、負債コストは0.003%とほぼゼロです。
調達資本中の有利子負債の割合が1.7%であり、ほとんどがコストの高い株主資本になっている点がネックになっています。
今回、特に気になったのは
ウエルシアHDとコスモス薬品の強さ
そして、マツキヨココカラ&CO.が
低い評価になった点です。
今回の「投資力」の順位による
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
※営業CF対投資CF比率の順位は、100%との乖離幅が
最小となる会社から1~4位としています。
全6回を通じて、この業界で気になったのは、各社が変化・変動の時期にあると目される点です。
・ウエルシアHDは親会社の影響もあるためか、良い指標も多い反面、低い評価になる指標も少なくありません。
・ツルハHDは前年が良くありませんでしたが、直近では挽回しており、今後に期待が持てそうではあります。
ただし、資金力が大きく弱体化している点など、まだまだ不安定な要素が散見されます。
・マツキヨココカラ&CO.は、資金力は圧倒的です。
しかしながら、資本活用力や投資力には安定感や力強さを欠きます。
・コスモス薬品は、我が道を行くイメージです。
4社で比較すると経営規模は小さくなりますが、ROEや流動資産の中身は良好で、投資力も強いと言えます。
ただし、いくつかの指標には陰りが見えてきています。
全6回の分析での順位による
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
以上で、ドラッグストア業界を終了します。
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