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有価証券報告書 財務分析
<ハウスメーカー業界・・・第6回>
~最終回~
第6回分析テーマ・・・投資力
分析指標値:
営業CF対投資CF比率
各社別の営業/投資CF推移
ROIC
WACC
(各指標の説明はこちら)
【営業CF対投資CF比率】
〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕
最も100%に近いのは住友林業です。
4期間を通じて安定しており、稼ぎ出した営業CFと成長のための支出である投資CFがほぼ同レベルとなっています。
2番手は積水ハウスです。
3期連続で値が低下しています。
営業CF以上の投資CFという傾向になってきています。
続いて大和ハウスです。
総じて、投資支出が多くなっています。
そして飯田GHDです。
個別の会社の集合体であるせいか乱高下しており、特に直近では営業CFがマイナスになっています(便宜上、指標の値をゼロ表記しています)。
続いて各社の推移を見ていきます。
【各社別 営業/投資CF推移】
〔実額ベース〕
大和ハウスの直近の営業CFは前年比68.5%の2,303億円です。
税金等調整前当期純利益は、前年比で124.7%と増加していますが、売上債権の増加や前受金の減少等により、前年より縮小しました。
一方、投資CFは前年比108.1%の5,052億円です。
有形/無形固定資産の取得による支出は前年比で118.4%と増加しており、投資CFの96%強を占めています。
以上から、直前期のFCF(フリー・キャッシュフロー)は2,749億円のマイナスとなりました。
ちなみに、財務CFにより2,875億円を調達しています。
積水ハウスの直近の営業CFは前年比106.3%の1,255億円です。
税金等調整前当期純利益は、前期比で114.2%と増加しています。
売上債権の増大がありましたが、棚卸資産の増大度合いが前年より抑制されています。
一方、投資CFは前年比145.5%の1,654億円です。
有形固定資産の取得による支出は前年比で111.1%強と増加し、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が前年比で195.0%と2倍近くになるなどの要因で拡大しました。
以上から、直前期のFCFは399億円のマイナスとなりました。
住友林業の直近の営業CFは前年比60.4%の553億円です。
税金等調整前当期純利益は前期比で140.7%と増加しましたが、棚卸資産の増加額が大きく、また法人税等の支払額も前年の2倍以上になったことから、全体としては縮小しました。
一方、投資CFは前年比130.1%の524億円です。
有形/無形固定資産の取得による支出は前年比151%強と増大し、投資有価証券の取得による支出も2倍近くに膨らみました。
以上から、直前期のFCFは29億円のプラスとなりました。
飯田GHDの直近の営業CFは、前期の31億円のプラスから減少し、570億円のマイナスとなりました。
税引前利益は前期の70%に留まり、金融収益の減少や法人所得税の支払額の増大などにより縮小しました。
一方、投資CFは前年比158.7%の392億円です。
有形/無形固定資産の取得による支出が前期比で242.5%と、投資CFの93.3%を占めるまで大きく増大しました。
以上から、直前期のFCFは962億円のマイナスとなりました。
ちなみに、前回見たように手元資金は潤沢なレベルでした。
そのため財務CFでは、自己株式の取得や配当金の支払いなどを積極的に行っており、前年325億円の収入超過に対して、直近は253億円の支出超過となっています。
【ROIC】
〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕
トップは住友林業です。
2期連続で10%超と、高水準を維持しています。
2番手は積水ハウスです。
直近2期連続で上昇しています。
続いて大和ハウスです。
過去2期連続で低下していましたが、直近では上昇しました。
そして飯田GHDです。
過去2期連続で上昇した後、直近では比較的大きく低下しています。
【WACC】
〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))
+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕
〔ROIC-WACC〕が最大なのは大和ハウスです。
ROICでは8.0%で3位でしたが、WACCが低く抑えられています。
特にβ値が低いことから、株主資本コストが押し下げられています。
また、有利子負債も低利の社債が中心であることから、負債コストも抑制されています。
2番手は住友林業です。
ROICは相当に高い水準ですが、WACCが4社中最高値となっています。
β値が4社中で最も高くなっており、株主資本コストを押し上げています。
また、有利子負債が調達資本の3割弱であり、調達コストが下がりづらくなっています。
続いて積水ハウスです。
ROICは高いレベルといえますが、WACCも高くなっています。
β値は“1.00”と良好ですが、有利子負債が調達資本の2割強でしかなく、WACCの値を押し上げています。
そして飯田GHDです。
4社中唯一、〔ROIC-WACC〕がマイナスになっており、経済的付加価値を生み出せていない状況です。
株主資本コストは4社中2番目の低さ、負債コストは4社中最低水準と良好です。
WACCの値も4社中2番目に良好であり、要するにROICが低すぎる状態といえます。
今回の「投資力」の順位による
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
※営業CF対投資CF比率の順位は、100%との乖離幅が
最小となる会社から1~4位としています。
また、全6回の分析における順位の
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
以上で、ハウスメーカー業界を終了します。
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