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COLUMNSブログ「論語と算盤」

財務分析(OLC-2)

2021年7月15日

株式会社オリエンタルランドの続きです。

 

下図は、直近3期間の貸借対照表であり、今回着目した勘定科目以外は「その他」としています。

 

 

今回は、流動資産を確認します。実数をグラフ化して推移を見てみましょう。

 

下図は、流動資産の4項目の推移を表したものです。

 

 

 まず、現金・預金

企業にとっての「キャッシュ」そのものであり、極めて重要です。

 

グラフは、2019.03期を100.0%としています。

20120.03期は、前年対比で3割以上減少しました。

そして直前期はさらに減少し、2019.03期比で51.4%と、ほぼ半減となっています。

 

 次回以降に触れる予定ですが、2021.03期は社債で大きく資金調達しており、その大半を投資に回しています。

これは、長期資産の取得は長期の資金調達源で行うというセオリーどおりであり、問題ないでしょう。

 

 一方、借入金、特に短期の資金調達は行っていないようです。

その状況において、これから述べるように流動資産の各項目が膨らんだことから、

現金・預金が大きく減少したという流れです。

 

 

 では、流動資産の中で増えた項目として、まず売掛金を見ていきましょう。

 

2020.03期に大きく減少しましたが、直前期では増えています。

売上高が大きく減少したにもかかわらず、売掛金が増えている点はやや気になります。

日商レベルで言うと、2019.03期から、15.3日、6.1日、27.3日となっており、直前期は約一月分まで長期化しました。

最終消費者向けサービス業としては資金負担が大きい方と感じます。

 

 有価証券報告書の単体決算数値の売掛金勘定には、<注記>があります。

詳細は不明ですが、短期金銭債権の増加額のうち、関係会社に対するものが増えているようです。

 

 

 続いて、在庫、つまり棚卸資産です。

 

グラフで明らかなように増えています。

2019.03月期比で、122.9%、133.2%となっており、やはり増加傾向であることが気になります。

 

 日商レベルで換算すると11.7日、16.3日、47.9日と一気に長期化していますが、特に直前期は売上高の急減という要因が影響しています。

 それはそうとしても、売上高減少が予想される中、そして本来事業がエンターテインメントという割には、残高が多過ぎるのではないかという状態です。

 

 

 最後にその他流動資産を確認します。

 

2020.03期は、2019.03期で114.1%、しかし直近の2021.03期は199.6%とほぼ2倍まで急増しました。

既述した<注記>の短期金銭債権は、直前期で75億円強増えています。

売掛金と同様に、その他流動資産の増加分も関係会社に対する債権のようです。

 

 コロナ禍における未曾有の業績悪化により、関係会社も相当厳しい経営状態にあるのでしょう。

親会社として、関係会社への支援が相当量必要になったものと想定されます。

 

 ただし、この増額分も会社から現金が出ていくわけであり、キャッシュ・アウトの要因です。

 

 

 まとめると、2021.03期は、前期の2020.03期から、流動資産が38103百万円減少しました。

そして、現金・預金の減少額は64741百万円となっています。

 

 上記以外では、有価証券(短期保有目的)が13496百万円増加していますが、これは「手元資金」とも呼ばれており、現実的には現金と同じような扱いとして認識できるので、増加すること自体が大きな問題とは言えません。

 

 ・売掛金の増加額    :4270百万円

 ・有価証券の増加額   :13496百万円

 ・棚卸資産の増加額   :1484百万円

 ・その他流動資産の増加額:7388百万円

 

    流動資産の増加額合計:26638百万円

    現金・預金の減少額 :64741百万円

    差引流動資産の減少額:38103百万円

 

 

次回は、固定資産の変化を見ていきましょう。

 

 

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