株式会社オリエンタルランドの続きです。
下図は、直近3期間の貸借対照表であり、今回着目した勘定科目以外は「その他」としています。
今回は、流動資産を確認します。実数をグラフ化して推移を見てみましょう。
下図は、流動資産の4項目の推移を表したものです。
まず、現金・預金。
企業にとっての「キャッシュ」そのものであり、極めて重要です。
グラフは、2019.03期を100.0%としています。
20120.03期は、前年対比で3割以上減少しました。
そして直前期はさらに減少し、2019.03期比で51.4%と、ほぼ半減となっています。
次回以降に触れる予定ですが、2021.03期は社債で大きく資金調達しており、その大半を投資に回しています。
これは、長期資産の取得は長期の資金調達源で行うというセオリーどおりであり、問題ないでしょう。
一方、借入金、特に短期の資金調達は行っていないようです。
その状況において、これから述べるように流動資産の各項目が膨らんだことから、
現金・預金が大きく減少したという流れです。
では、流動資産の中で増えた項目として、まず売掛金を見ていきましょう。
2020.03期に大きく減少しましたが、直前期では増えています。
売上高が大きく減少したにもかかわらず、売掛金が増えている点はやや気になります。
日商レベルで言うと、2019.03期から、15.3日、6.1日、27.3日となっており、直前期は約一月分まで長期化しました。
最終消費者向けサービス業としては資金負担が大きい方と感じます。
有価証券報告書の単体決算数値の売掛金勘定には、<注記>があります。
詳細は不明ですが、短期金銭債権の増加額のうち、関係会社に対するものが増えているようです。
続いて、在庫、つまり棚卸資産です。
グラフで明らかなように増えています。
2019.03月期比で、122.9%、133.2%となっており、やはり増加傾向であることが気になります。
日商レベルで換算すると11.7日、16.3日、47.9日と一気に長期化していますが、特に直前期は売上高の急減という要因が影響しています。
それはそうとしても、売上高減少が予想される中、そして本来事業がエンターテインメントという割には、残高が多過ぎるのではないかという状態です。
最後にその他流動資産を確認します。
2020.03期は、2019.03期で114.1%、しかし直近の2021.03期は199.6%とほぼ2倍まで急増しました。
既述した<注記>の短期金銭債権は、直前期で75億円強増えています。
売掛金と同様に、その他流動資産の増加分も関係会社に対する債権のようです。
コロナ禍における未曾有の業績悪化により、関係会社も相当厳しい経営状態にあるのでしょう。
親会社として、関係会社への支援が相当量必要になったものと想定されます。
ただし、この増額分も会社から現金が出ていくわけであり、キャッシュ・アウトの要因です。
まとめると、2021.03期は、前期の2020.03期から、流動資産が381億03百万円減少しました。
そして、現金・預金の減少額は647億41百万円となっています。
上記以外では、有価証券(短期保有目的)が134億96百万円増加していますが、これは「手元資金」とも呼ばれており、現実的には現金と同じような扱いとして認識できるので、増加すること自体が大きな問題とは言えません。
・売掛金の増加額 :42億70百万円
・有価証券の増加額 :134億96百万円
・棚卸資産の増加額 :14億84百万円
・その他流動資産の増加額:73億88百万円
流動資産の増加額合計:266億38百万円
現金・預金の減少額 :647億41百万円
差引流動資産の減少額:381億03百万円
次回は、固定資産の変化を見ていきましょう。
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