今回から、上場企業の財務分析を行ってみます。
3月決算の会社では、6月下旬に株主総会が開かれ、それに伴って2021年3月期の有価証券報告書がオープンになります。その資料をもとに分析してみます。
初回の対象企業は株式会社オリエンタルランド、言わずと知れたディズニーリゾート運営会社です。
なお、連結決算ではなく、㈱オリエンタルランドの単体決算の数値を用いることとします。
今回は、売上高利益率を中心に見ていきます。
グラフのように、コロナ禍における営業自粛は、やはり相当厳しい結果となりました。
2021.03期は、売上総利益つまり粗利段階から赤字(△203億38百万円)となっています。
そして、営業損益が△364億05百万円、経常損益が△391億84百万円。
また、臨時休園期間中の固定費を特別損失に計上(127億33百万円)しており、
税引前当期純損失は△519億17百万円。
法人税の減算と、繰延税金資産を中心とした法人税等調整額の加算により、
当期純損失は△372億26百万円となりました。
参考ですが、売上高と入園者数の推移を確認したものが下のグラフです。
2021.03期では、入園者数が2019.03期に対して4分の1ほどになっています(32,558→7,560千人へ)
ただし、売上高はそこまで落ち込んでいません。
業績が厳しくなることを前提に、各種の対処を行った成果です。
そして、収益を下支えした最たるものが固定費の削減です。
上記3期に関して、経費を固変分解し、損益分岐点売上高を算出してみました。
(以下は独自の判断による算出値なので、実際との誤差は大なり小なりあります。)
・2019.03期・・・売上高=約4500億円、損益分岐点売上高=約3100億円
・2020.03期・・・売上高=約4000億円、損益分岐点売上高=約2900億円
・2021.03期・・・売上高=約1460億円、損益分岐点売上高=約1927億円
この3期間、変動費率は21%~22%程度で大きく変わっていません。
そのため、上記のように損益分岐点売上高を下げられた要因は固定費の削減となります。
固定費額の推移を見ると、
2424億48百万円 → 2303億64百万円 → 1502億63百万円と、
やはり大きく低下させています。
ただし、「ブログ~算盤」の損益計算書の途中に挟んだ「利益創出」で述べたように、
サービス業は売上数量の減少への耐性が弱いという特性があります。
よって、上記のような大胆な固定費削減を行っても、
利益額の大幅減少を抑えるには限界があります。
以上、今回は収益性の一つの側面である売上高利益率で分析してみました。
次回は、資本回転率の側面から分析してみようと思います。
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