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COLUMNSブログ「論語と算盤」

キャッシュフロー計算書のまとめ

2021年7月8日

キャッシュフロー計算書の最終回として簡単にまとめておきます。

 

CF計算書によって求めるキャッシュは、基本的にはBS現金・預金の残高に一致します。

(上場企業等、現金同等物を認識する会社は除く)

 

 営業CFの計算では、PLから税引前当期純利益減価償却費を算入します。

それ以外は、主にBS流動資産流動負債の科目について、〔当期-前期〕の差を確認します。

当期が増加したのなら、流動資産項目ではキャッシュ・マイナス、流動負債項目ではキャッシュ・プラスとなります。

 

 次に、投資CFの計算は、主にBSの固定資産の科目となります。

やはり、〔当期-前期〕の確認により、当期が増加したなら、キャッシュ・マイナスとなります。

 

 最後に、財務CFの計算は、長短借入金社債の増減、資本金の増減、配当金の有無、自己株式の取得等となり、それぞれ現金の流出が伴えばキャッシュ・マイナスとなります。

 

 

 このように、PLからは利益と減価償却費だけですが、

BS計上の項目は全て何らかの形で「触る」ことになります。

 

 

これによって、財務3表の連動が明確になります。

 大雑把に説明すると、売上高1円修正する場合、最終利益1円修正となり、そして繰越利益剰余金1円修正する必要が出ます。すると、現金売掛金等が増えて、BSの左右は一致します。

 CF計算書においては、純利益の修正、それに伴う売掛金等の修正もしくは当期キャッシュ増減の修正となります。

 

 

さて、CF計算書の見どころについて解説しておきます。

 35年のCF計算書があるのなら、並べて見ると良いでしょう。

 

 キャッシュ・プラス/マイナスの項目をみて、マイナスが継続している項目は、そこがその会社の弱みとなります。

マイナスの後にプラスになっているのなら、マネジメントの改善が行われたと想定できます。

 

 また、FCF(フリーキャッシュフロー)は、純現金収支とも呼ばれ、プラス状態が続いていれば、キャッシュ創出力が強固であると認識されます。

  ただし、計画的にFCFをマイナスにする場合もあります。具体的には、営業CFで稼いだキャッシュ・プラス分以上に投資を行う、つまり投資CFのキャッシュ・マイナスが多大になる状態です。

 これは、投資に意欲的と言うことであり、好意的に見れば、積極的かつ前向きな経営姿勢と読み取れます。もちろん、野放図な投資は例外です。

 

 他にも、成長期には売掛金在庫が増えがちとなり、さらに投資の必要性も高まるでしょう。つまり、発展期の会社では、FCFが複数年の間マイナスになることもあり得るのです。

 

 このように、その会社の経営姿勢が表現される「定性情報」を踏まえながら、財務諸表という「定量情報」を読み取ることが大切です。

 

 

 最後に、キャッシュに関するコンサルティング上の経験に触れておきます。

 

 コンサルティングでは、キャッシュに好影響を与える取り組み項目について、財務諸表を分析して提示しています。

ただし、その取り組みを改善・強化することは、大概の場合そう容易ではありません。

 

 そんな中、卸売業に属するある会社が急激に資金繰りを改善しました。ちょうど新規取引の打診が複数生じている時期であり、私が提示した取り組み改善策を粛々と実行していきました。

 すると、新規先との取引を中心に好影響が出始め、従前顧客への展開は徐々にではありましたが、会社全体としてはかなり速いスピードで資金繰りの改善が進みました。

 

このような成功事例は、コンサルティングの意義と面白さを感じさせてくれます。

 

 しかし、全てがそううまくは行きません。年間売上高20億円弱という、中小企業としては比較的規模の大きいある会社で、安っぽい小説にあるような、愕然とするケースを体験しました。

 コンサルティングによって十分な資金調達ができたにも拘わらず、とんでもない事態に陥ったケースです。

 

 結論は、創業以来、社長が信頼してきた経理担当者が、会社のお金をくすねていたということです。

しかし、悪いのはその担当者だけとは言えません。

 

 経営者にも大きな落度がありました。会社の銀行印と通帳をその担当者に丸ごと預けていたのです。

社長にしてみれば、創業から共に汗を流して今日までやってきて、親族以上に信頼しており、心から安心して任せていたようです。

 

 しかし、どんな場合でも「悪事が生じる余地」を作ってはいけません。

人は易きに流れます。規律をしっかり打ち立てて社員全員で守っていくことは、一面では社員を犯罪者にしない取り組みであり、つまりは社員自身を守る仕組みなのです。

安易で無意味な迎合、事なかれ主義などに流されないよう、心しておかねばなりません。

 

 

キャッシュは会社の命綱です。

「カネの切れ目は、縁の切れ目」ではなく、「事業の切れ目」となります。

 

 

会社の存在意義は、経営理念・ビジョン・ミッションの実現です。

会社を継続させて、それらの実現に邁進しなくてはなりません。

 

キャッシュを生み出すには、その前提として利益を生み出すことが肝心です。

そして利益を生み出すには、必要な売上高を計画通りに獲得せねばなりません。

 

 

売上高を上げたとしても、利益やキャッシュが生まれるかは定かではありません。

よしんば利益を得ても、キャッシュを生み出せるかは、やはり定かではありません。

 

売上高の獲得利益の捻出キャッシュの創出全てにマネジメントが必要になります。

あらゆる側面における「マネジメント力」こそが、

会社を維持・発展させる必要かつ不可欠な、会社のエネルギーとなります。