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COLUMNSブログ「論語と算盤」

家電量販業界-6

2023年8月10日

業界売上高トップ4

有価証券報告書 財務分析

 

<家電量販業界・・・第6回>

~最終回~

 

 

6回分析テーマ・・・投資力

分析指標値:       

  営業CF対投資CF比率

     各社別の営業/投資CF推移

ROIC        

WACC      

(各指標の説明はこちら

 

 

営業CF対投資CF比率

〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕

 

 最も100%に近いのはビックカメラです。

2番手はエディオン、続いてヤマダHDです。

ケーズHDは営業CFがマイナスになったため、0.0%としています。

 

続いて各社の推移を見ていきます。

 

 

各社別 営業/投資CF推移

〔実額ベース〕

 

 ヤマダHD直近の営業CFは前年比207.5%の437億円です。

税金等調整前当期純利益は前年より260億円弱減少しました。

その一方、法人税等の支払額が410億円強軽減しています。

 一方、投資CFは前年比113.2%の252億円です。

有形/無形固定資産の取得による支出合計は前年より減少しましたが、関係会社株式の取得による支出が大きく増加しました。

 以上から、直前期のFCF(フリー・キャッシュフロー)は185億円のプラスとなりました。

 

 

 

 ビックカメラの直近の営業CFは前年比326.1%の253億円です。

税金等調整前当期純利益は前年より50億円弱減少しました。

前年は仕入債務が大きく減少しましたが、直近では反転、増加となったことが主要因です。

 一方、投資CFは前年比146.3%の181億円です。

有形/無形固定資産の取得による支出は、前者が34億円強増加後者が15億円ほどの減少となっています。

また、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出も16億円ほど増加しています。

 以上から、直前期のFCFは72億円のプラスとなりました。

 

 

 

 ケーズHDの直近の営業CFは前年比△109.0%の△22億円です。

税金等調整前当期純利益は前年より100億円強減少しました。

それに加えて、棚卸資産の増加による△304億円仕入債務の減少による△83億円などにより、営業CFがマイナス値となりました。

 一方、投資CFは前年比192.9%の185億円です。

有形固定資産の取得による支出が2倍以上増加して194億円となったことが主因です。

 以上から、直前期のFCFは206億円のマイナスとなりました。

 

 

 

 エディオンの直近の営業CFは前年比114.8%の121億円です。

税金等調整前当期純利益は前年より28億円強減少しました。

棚卸資産の増加や仕入債務の減少等によって営業CFがさらに減少しましたが、法人税等の支払額が110億円ほど軽減されたことから、結果的に前年を上回りました。

 一方、投資CFは前年比79.3%の83億円です。

有形固定資産の取得による支出が前年から20億円ほど減少したことが主因です。

 以上から、直前期のFCFは38億円のプラスとなりました。

 

 

ROIC

〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕

 

 トップケーズHDです。

2021期には12%超と相当高いレベルでしたが、その後2期連続で低下し、直近の値は4期中で最低になっています。

 

 2番手はエディオンです。

1年ごとに上下しており、直近は上昇しました。

 

 続いてビックカメラです。

2021期(20208月決算)で大きく低下しましたが、その後の直近2期は上昇傾向にあります。

 

 そしてヤマダHDです。

直近2期連続で低下しています。

 

 

WACC

〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕

 

 〔ROIC-WACC〕が最大なのはケーズHDです。

調達資本の85%近くが株主資本となっていますが、β値が低い0.52)ため株主資本コストは4.07%と4社中最低値です。

加えて、ROICが比較的高めであったことが奏功しています。

 

 2番手はエディオンです。

4社中でWACCが最高値ですが、これはβ値が4社中で最高値0.74)であったことに加え(株主資本コスト=5.59%)、調達資本中の株主資本の割合が80%強と大きくなっていることが影響しています。

有利子負債による資本調達を増やすことで、経済的価値を高めることが可能であることがわかります。

 

 続いてビックカメラです。

株主資本コストは5.24%と高めですが、調達資本中の有利子負債の割合が40%弱であることから、WACCの値が抑制されています。

 

 そしてヤマダHDです。

ROICとWACCがほぼ同レベルという状態です。

当社も株主資本コストが5.38%と高めですが、調達資本中の有利子負債の割合が40%強であることから、WACCの値が抑制されています。

 

 

今回、この業界で特に気になったのは

経営規模の大きい2社

ファイナンスの側面では

それほど強さが見られないことでした。

 

 

今回の「投資力」の順位による

比較レーダーチャートは以下のとおりです。

 

※営業CF対投資CF比率の順位は、100%との乖離幅が

最小となる会社から1~4位としています。

 

 

また、全6回の分析における順位の

比較レーダーチャートは以下のとおりです。

 

 

 

以上で、家電量販業界を終了します。

 

 

 

 

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