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有価証券報告書 財務分析
<家電量販業界・・・第6回>
~最終回~
第6回分析テーマ・・・投資力
分析指標値:
営業CF対投資CF比率
各社別の営業/投資CF推移
ROIC
WACC
(各指標の説明はこちら)
【営業CF対投資CF比率】
〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕
最も100%に近いのはビックカメラです。
2番手はエディオン、続いてヤマダHDです。
ケーズHDは営業CFがマイナスになったため、0.0%としています。
続いて各社の推移を見ていきます。
【各社別 営業/投資CF推移】
〔実額ベース〕
ヤマダHDの直近の営業CFは前年比207.5%の437億円です。
税金等調整前当期純利益は前年より260億円弱減少しました。
その一方、法人税等の支払額が410億円強軽減しています。
一方、投資CFは前年比113.2%の252億円です。
有形/無形固定資産の取得による支出合計は前年より減少しましたが、関係会社株式の取得による支出が大きく増加しました。
以上から、直前期のFCF(フリー・キャッシュフロー)は185億円のプラスとなりました。
ビックカメラの直近の営業CFは前年比326.1%の253億円です。
税金等調整前当期純利益は前年より50億円弱減少しました。
前年は仕入債務が大きく減少しましたが、直近では反転、増加となったことが主要因です。
一方、投資CFは前年比146.3%の181億円です。
有形/無形固定資産の取得による支出は、前者が34億円強増加、後者が15億円ほどの減少となっています。
また、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出も16億円ほど増加しています。
以上から、直前期のFCFは72億円のプラスとなりました。
ケーズHDの直近の営業CFは前年比△109.0%の△22億円です。
税金等調整前当期純利益は前年より100億円強減少しました。
それに加えて、棚卸資産の増加による△304億円や仕入債務の減少による△83億円などにより、営業CFがマイナス値となりました。
一方、投資CFは前年比192.9%の185億円です。
有形固定資産の取得による支出が2倍以上増加して194億円となったことが主因です。
以上から、直前期のFCFは206億円のマイナスとなりました。
エディオンの直近の営業CFは前年比114.8%の121億円です。
税金等調整前当期純利益は前年より28億円強減少しました。
棚卸資産の増加や仕入債務の減少等によって営業CFがさらに減少しましたが、法人税等の支払額が110億円ほど軽減されたことから、結果的に前年を上回りました。
一方、投資CFは前年比79.3%の83億円です。
有形固定資産の取得による支出が前年から20億円ほど減少したことが主因です。
以上から、直前期のFCFは38億円のプラスとなりました。
【ROIC】
〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕
トップはケーズHDです。
2021期には12%超と相当高いレベルでしたが、その後2期連続で低下し、直近の値は4期中で最低になっています。
2番手はエディオンです。
1年ごとに上下しており、直近は上昇しました。
続いてビックカメラです。
2021期(2020年8月決算)で大きく低下しましたが、その後の直近2期は上昇傾向にあります。
そしてヤマダHDです。
直近2期連続で低下しています。
【WACC】
〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕
〔ROIC-WACC〕が最大なのはケーズHDです。
調達資本の85%近くが株主資本となっていますが、β値が低い(0.52)ため株主資本コストは4.07%と4社中最低値です。
加えて、ROICが比較的高めであったことが奏功しています。
2番手はエディオンです。
4社中でWACCが最高値ですが、これはβ値が4社中で最高値(0.74)であったことに加え(株主資本コスト=5.59%)、調達資本中の株主資本の割合が80%強と大きくなっていることが影響しています。
有利子負債による資本調達を増やすことで、経済的価値を高めることが可能であることがわかります。
続いてビックカメラです。
株主資本コストは5.24%と高めですが、調達資本中の有利子負債の割合が40%弱であることから、WACCの値が抑制されています。
そしてヤマダHDです。
ROICとWACCがほぼ同レベルという状態です。
当社も株主資本コストが5.38%と高めですが、調達資本中の有利子負債の割合が40%強であることから、WACCの値が抑制されています。
今回、この業界で特に気になったのは
経営規模の大きい2社が
ファイナンスの側面では
それほど強さが見られないことでした。
今回の「投資力」の順位による
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
※営業CF対投資CF比率の順位は、100%との乖離幅が
最小となる会社から1~4位としています。
また、全6回の分析における順位の
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
以上で、家電量販業界を終了します。
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