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COLUMNSブログ「論語と算盤」

ビール業界-6

2023年6月8日

業界売上高トップ4

有価証券報告書 財務分析

 

<ビール業界・・・第6回>

~最終回~

 

 

6回分析テーマ・・・投資力

分析指標値:       

  営業CF対投資CF比率

    各社別の営業/投資CF推移

ROIC     

WACC      

 

(各指標の説明はこちら

 

 

営業CF対投資CF比率

〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕

 

 最も100%に近いのはサッポロHDです。

過去3期は、営業CFで稼いだ分をほぼちょうど投資CFに振り向けていた形でした。

直前期の値が小さくなった理由はこの後確認します。

 

 2番手はサントリーHDです。

4期間とも、200%近辺かそれ以上の値になっています。

営業CFで稼いだ分の半分を投資に回すというイメージになります。

 

 続いてアサヒGHDです。

年度によりかなり乱高下しています。

 

 そしてキリンHDです。

直前期で値が急上昇しています。

 

続いて各社の推移を見ていきます。

 

 

各社別 営業/投資CF推移

〔実額ベース〕

 

 サントリーHD直近の営業CFは前年比87.1%の2,444億円です。

税引前利益は前年を超えていましたが、「棚卸資産の増加額」が大きくマイナスに働いています。

 一方、投資CFは前年比79.3%の1,210億円です。

有形/無形固定資産の取得による支出は微増であり、「投資の取得による支出」が抑制され、「連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入」がプラスに働いています。

 以上から、直前期のFCF(フリー・キャッシュフロー)は1,235億円のプラスとなりました。

 

 

 

 アサヒGHDの直近の営業CFは前年比78.7%の2,660億円です。

税引前利益は前年を越えましたが、「棚卸資産の増加額」を中心にマイナス額が増えました。

 一方、投資CFは前年比482.2%の692億円です。

有形/無形固定資産の取得による支出は増加しており、他にも収入項目は前年より減少し、支出項目は増加したという形です。

 以上から、直前期のFCFは1,968億円のプラスとなりました。

なお、「目標とする主要経営指標のガイドライン」で、年平均のFCFを2,000億円M%A等の事業再構築を除く)としています。

 

 

 

 キリンHD直近の営業CFは前年比61.8%の1,356億円です。

税引前利益は前年の2倍近くになりましたが、「棚卸資産の増加額」を筆頭にマイナス項目が増えています。

 一方、投資CFは前年比18.4%の104億円です。

有形/無形固定資産の取得による支出は前年を超えていますが、「持分法で会計処理されている投資の売却による収入」がプラス方向に大きく働きました。

 以上から、直前期のFCFは1,252億円のプラスとなりました。

 

 

 

 サッポロHD直近の営業CFは前年比25.8%の78億円です。

税引前利益が前年の半分近くまで減少した上、「棚卸資産の増加額」や「法人所得税の支払額」などのマイナス項目が増えています。

 一方、投資CFは、前年が207億円の収入超過から、461億円(支出超過)となりました。

有形固定資産の取得による支出は前年より減少しましたが、「投資不動産の取得による支出」は増加しています。

前年には「投資不動産の売却による収入」が400億円強計上されており、一方直近は「連結の範囲の変更を伴う子会社株式等の取得による支出」が226億円強計上されたことにより、前年と直近の差が大きくなっています。

 以上から、直前期のFCFは383億円のマイナスとなりました。

 

 

ROIC

〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕

 

 トップサントリーHDです。

2020期から2期連続で上昇しています。

 

 2番手はアサヒGHDです。

直前期は若干ながら低下しています。

 

 続いて僅差でキリンHDです。

直前期は上昇しています。

なお、「中長期的な目標経営指標」の一つとして、2024年度のROIC=10%以上を掲げています。

 

 そしてサッポロHDです。

前年大きく挽回して3%台中盤まで上昇しましたが、直前期は大きく低下してしまいました。

 

 

WACC

〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))

+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕

 

 〔ROIC-WACC〕が最大なのはサントリーHDです。

もっとも、当社は非上場のため、中核子会社であるサントリー食品インターナショナル株式会社のβ値と時価総額で算出していることから参考値となります。

 

 2番手はアサヒGHDです。

ただしマイナス値であり、経済的付加価値が生み出せていない状態です。

β値が高いことから、株主資本コストが高くなっています。

 

 続いて、極めて僅差のキリンHDです。

当社もマイナス圏です。

負債コストが4社の中で最も小さいのですが、資本構成における負債比率が2割強と小さくなっている点が残念といえます。

現状の負債比率が20%強であり、これが35%程度まで高まれば、現状のROICの値でもプラスとなります。

 

 そしてサッポロHDです。

当社もマイナス圏です。

負債比率が45%程度になっていることから、WACCの値が比較的抑制されています。

問題となるのは、ROICの低さといえます。

 

 

今回の「投資力」の順位による

比較レーダーチャートは以下のとおりです。

 

※営業CF対投資CF比率の順位は、100%との乖離幅が最小となる会社から1~4位としています。

 

また、全6回の分析における順位の

比較レーダーチャートは以下のとおりです。

 

 

 

以上で、ビール業界を終了します。

 

 

 

 

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