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有価証券報告書 財務分析
<ビール業界・・・第6回>
~最終回~
第6回分析テーマ・・・投資力
分析指標値:
営業CF対投資CF比率
各社別の営業/投資CF推移
ROIC
WACC
(各指標の説明はこちら)
【営業CF対投資CF比率】
〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕
最も100%に近いのはサッポロHDです。
過去3期は、営業CFで稼いだ分をほぼちょうど投資CFに振り向けていた形でした。
直前期の値が小さくなった理由はこの後確認します。
2番手はサントリーHDです。
4期間とも、200%近辺かそれ以上の値になっています。
営業CFで稼いだ分の半分を投資に回すというイメージになります。
続いてアサヒGHDです。
年度によりかなり乱高下しています。
そしてキリンHDです。
直前期で値が急上昇しています。
続いて各社の推移を見ていきます。
【各社別 営業/投資CF推移】
〔実額ベース〕
サントリーHDの直近の営業CFは前年比87.1%の2,444億円です。
税引前利益は前年を超えていましたが、「棚卸資産の増加額」が大きくマイナスに働いています。
一方、投資CFは前年比79.3%の1,210億円です。
有形/無形固定資産の取得による支出は微増であり、「投資の取得による支出」が抑制され、「連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入」がプラスに働いています。
以上から、直前期のFCF(フリー・キャッシュフロー)は1,235億円のプラスとなりました。
アサヒGHDの直近の営業CFは前年比78.7%の2,660億円です。
税引前利益は前年を越えましたが、「棚卸資産の増加額」を中心にマイナス額が増えました。
一方、投資CFは前年比482.2%の692億円です。
有形/無形固定資産の取得による支出は増加しており、他にも収入項目は前年より減少し、支出項目は増加したという形です。
以上から、直前期のFCFは1,968億円のプラスとなりました。
なお、「目標とする主要経営指標のガイドライン」で、年平均のFCFを2,000億円(M%A等の事業再構築を除く)としています。
キリンHDの直近の営業CFは前年比61.8%の1,356億円です。
税引前利益は前年の2倍近くになりましたが、「棚卸資産の増加額」を筆頭にマイナス項目が増えています。
一方、投資CFは前年比18.4%の104億円です。
有形/無形固定資産の取得による支出は前年を超えていますが、「持分法で会計処理されている投資の売却による収入」がプラス方向に大きく働きました。
以上から、直前期のFCFは1,252億円のプラスとなりました。
サッポロHDの直近の営業CFは前年比25.8%の78億円です。
税引前利益が前年の半分近くまで減少した上、「棚卸資産の増加額」や「法人所得税の支払額」などのマイナス項目が増えています。
一方、投資CFは、前年が207億円の収入超過から、461億円(支出超過)となりました。
有形固定資産の取得による支出は前年より減少しましたが、「投資不動産の取得による支出」は増加しています。
前年には「投資不動産の売却による収入」が400億円強計上されており、一方直近は「連結の範囲の変更を伴う子会社株式等の取得による支出」が226億円強計上されたことにより、前年と直近の差が大きくなっています。
以上から、直前期のFCFは383億円のマイナスとなりました。
【ROIC】
〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕
トップはサントリーHDです。
2020期から2期連続で上昇しています。
2番手はアサヒGHDです。
直前期は若干ながら低下しています。
続いて僅差でキリンHDです。
直前期は上昇しています。
なお、「中長期的な目標経営指標」の一つとして、2024年度のROIC=10%以上を掲げています。
そしてサッポロHDです。
前年大きく挽回して3%台中盤まで上昇しましたが、直前期は大きく低下してしまいました。
【WACC】
〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))
+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕
〔ROIC-WACC〕が最大なのはサントリーHDです。
もっとも、当社は非上場のため、中核子会社であるサントリー食品インターナショナル株式会社のβ値と時価総額で算出していることから参考値となります。
2番手はアサヒGHDです。
ただしマイナス値であり、経済的付加価値が生み出せていない状態です。
β値が高いことから、株主資本コストが高くなっています。
続いて、極めて僅差のキリンHDです。
当社もマイナス圏です。
負債コストが4社の中で最も小さいのですが、資本構成における負債比率が2割強と小さくなっている点が残念といえます。
現状の負債比率が20%強であり、これが35%程度まで高まれば、現状のROICの値でもプラスとなります。
そしてサッポロHDです。
当社もマイナス圏です。
負債比率が45%程度になっていることから、WACCの値が比較的抑制されています。
問題となるのは、ROICの低さといえます。
今回の「投資力」の順位による
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
※営業CF対投資CF比率の順位は、100%との乖離幅が最小となる会社から1~4位としています。
また、全6回の分析における順位の
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
以上で、ビール業界を終了します。
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