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有価証券報告書 財務分析
<海運業界・・・第6回>
~最終回~
第6回分析テーマ・・・投資力
分析指標値:営業CF対投資CF比率、
各社別の営業/投資CF推移、
ROIC、WACC
(各指標の説明はこちら)
【営業CF対投資CF比率】
〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕
NSユナイテッド海運は、直近の投資CFがプラスになっているので、便宜上100.0%と記載しています。
2019.03期の値は大きかったのですが、その後2期では投資が多くなったようです。
当社を除くと、最も100%に近いのは商船三井です。
3期連続で上昇してきています。
2番手は日本郵船です。
2021.03期は急上昇しています。
続いて川崎汽船です。
2019.03期と2020.03期はともに営業CFがマイナスであるため0.0%の表記となっています。
また2021.03期は、投資CFがプラスであるため100.0%となっています。
続いて各社の推移を見ていきます。
【各社別 営業/投資CF推移】
〔実額ベース〕
日本郵船の直近の営業CFは、前年比318.7%の5,078億円です。
税金等調整前当期純利益が前年比で6倍ほどの1兆373億円になり、また利息及び配当金の受取額も前年比で7倍近くの2,881億円に上ったことが大きく影響しています。
一方、投資CFでは前年比で9倍以上の1,486億円の支出となりました。
有形/無形固定資産の取得による支出が最大であり、前年の1,021億円から1,927億円へと、900億円ほど増加しています。
以上から、直前期のFCF(フリー・キャッシュフロー)は3,592億円となりました。
商船三井の直近の営業CFは、前年比311.1%の3,076億円です。
税金等調整前当期純利益は前年比7倍以上の7,330億円になり、利息及び配当金の受取額も前年比で6倍近くの2,422億円に上ったことが大きく影響しています。
一方、投資CFでは前年比で2倍弱の1,075億円の支出となりました。
投資有価証券の取得による支出が最大の支出要因であり、前年の51億円から15倍ほどに増え、759億円となっています。
以上から、直前期のFCFは2,002億円となりました。
川崎汽船の直近の営業CFは、前年比678.1%の2,265億円です。
税金等調整前当期純利益が前年の6倍弱の6,591億円、利息及び配当金の受取額が前年の10倍以上の2,174億円に上ったことが主因です。
一方、投資CFは、前年の入金超過(プラス値)から58億円の支出となりました。
前年との大きな相違点は、有価証券及び投資有価証券の取得による支出が、前年の2億円から42億円へと格段に増えたことです。
以上から、直前期のFCFは2,206億円となりました。
NSユナイテッド海運の直近の営業CFは、前年比145.1%の329億円です。
税金等調整前当期純利益が、前年の74億円から4倍近くの291億円に増えたことが最大の要因です。
一方、投資CFは1億円の入金超過(プラス)になりました。
船舶の取得による支出が大きく減少し、船舶の売却による収入とほぼ同額になったことが主因です。
以上から、直前期のFCFは330億円となりました。
【ROIC】
〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕
トップは日本郵船です。
2019.03期はマイナスでしたが、3期連続で上昇し、直近はかなり高いレベルになってきています。
2番手はNSユナイテッド海運です。
下記2期連続で低下していましたが、直前期で大きく上昇させました。
続いて商船三井です。
当社も2期連続で低下し、2021.03期はマイナスになりましたが、直前期でプラスに戻しています。
そして川崎汽船です。
浮き沈みを繰り返しており、直前期はギリギリのプラスという状態です。
【WACC】
〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))
+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕
〔ROIC-WACC〕が最大なのはNSユナイテッド海運です。
ROICも高いレベルであり、資本調達コスト(WACC)も3.61%と比較的低く抑制されている状態です。
資本を調達するコスト以上の儲けを生み出しており、良好と言えます。
2番手は日本郵船です。
ROICはかなり高いレベルですが、如何せんWACCが高すぎます。
続く2社にも言えますが、β値が極めて高く(1.98)、株主資本コストが14%超となっています(負債との加重平均で、結果10.43%)。
当社を含む3社は、資本調達コストが儲けの度合いの方より大きくなっており、経済的損失の状態にあります。
続いて商船三井です。
ROICが低く、WACCはβ値が1.98と大きいため、株主資本コストが14%超にまで高まっています。
そして川崎汽船です。
WACCが極めて高くなっています。
β値が3.04であり、株主資本コストが21.46%と極めて高い状況です。
今回、この業界で特に気になったのは、2019コロナ終息に伴う特需の影響、およびそれでも厳しい収益状況の実態が見えてきた点です。
今回の「投資力」の順位による
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
※営業CF対投資CF比率の順位は、100%との乖離幅が最小となる会社から1~4位としています。
また、全6回の分析における順位の
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
以上で、海運業界を終了します。
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