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COLUMNSブログ「論語と算盤」

海運業界-6

2023年3月9日

業界売上高トップ4

有価証券報告書 財務分析

 

<海運業界・・・第6回>

~最終回~

 

 

6回分析テーマ・・・投資力      

分析指標値:営業CF対投資CF比率

         各社別の営業/投資CF推移

     ROICWACC

 

(各指標の説明はこちら

 

 

営業CF対投資CF比率

〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕

 

 NSユナイテッド海運は、直近の投資CFがプラスになっているので、便宜上100.0%と記載しています。

2019.03期の値は大きかったのですが、その後2期では投資が多くなったようです。

 

 当社を除くと、最も100%に近いのは商船三井です。

3期連続で上昇してきています。

 

 2番手は日本郵船です。

2021.03期は急上昇しています。

 

 続いて川崎汽船です。

2019.03期と2020.03期はともに営業CFがマイナスであるため0.0%の表記となっています。

また2021.03期は、投資CFがプラスであるため100.0%となっています。

 

 

続いて各社の推移を見ていきます。

 

 

各社別 営業/投資CF推移

〔実額ベース〕

 

 日本郵船直近の営業CFは、前年比318.7%の5,078億円です。

税金等調整前当期純利益が前年比で6倍ほどの1兆373億円になり、また利息及び配当金の受取額も前年比で7倍近くの2,881億円に上ったことが大きく影響しています。

 一方、投資CFでは前年比で9倍以上の1,486億円の支出となりました。

有形/無形固定資産の取得による支出が最大であり、前年の1,021億円から1,927億円へと、900億円ほど増加しています。

 以上から、直前期のFCF(フリー・キャッシュフロー)は3,592億円となりました。

 

 

 

 商船三井直近の営業CFは、前年比311.1%の3,076億円です。

税金等調整前当期純利益は前年比7倍以上の7,330億円になり、利息及び配当金の受取額も前年比で6倍近くの2,422億円に上ったことが大きく影響しています。

 一方、投資CFでは前年比で2倍弱の1,075億円の支出となりました。

投資有価証券の取得による支出が最大の支出要因であり、前年の51億円から15倍ほどに増え、759億円となっています。

 以上から、直前期のFCFは2,002億円となりました。

 

 

 

 川崎汽船直近の営業CFは、前年比678.1%の2,265億円です。

税金等調整前当期純利益が前年の6倍弱の6,591億円、利息及び配当金の受取額が前年の10倍以上の2,174億円に上ったことが主因です。

 一方、投資CFは、前年の入金超過(プラス値)から58億円の支出となりました。

前年との大きな相違点は、有価証券及び投資有価証券の取得による支出が、前年の2億円から42億円へと格段に増えたことです。

 以上から、直前期のFCFは2,206億円となりました。

 

 

 

 NSユナイテッド海運直近の営業CFは、前年比145.1%の329億円です。

税金等調整前当期純利益が、前年の74億円から4倍近くの291億円に増えたことが最大の要因です。

 一方、投資CFは1億円の入金超過(プラス)になりました。

船舶の取得による支出が大きく減少し、船舶の売却による収入とほぼ同額になったことが主因です。

 以上から、直前期のFCFは330億円となりました。

 

 

ROIC

〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕

 

 トップ日本郵船です。

2019.03期はマイナスでしたが、3期連続で上昇し、直近はかなり高いレベルになってきています。

 

 2番手はNSユナイテッド海運です。

下記2期連続で低下していましたが、直前期で大きく上昇させました。

 

 続いて商船三井です。

当社も2期連続で低下し、2021.03期はマイナスになりましたが、直前期でプラスに戻しています。

 

 そして川崎汽船です。

浮き沈みを繰り返しており、直前期はギリギリのプラスという状態です。

 

 

WACC

 〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))

+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕

 

 〔ROIC-WACC〕が最大なのはNSユナイテッド海運です。

ROICも高いレベルであり、資本調達コスト(WACC)も3.61%と比較的低く抑制されている状態です。

資本を調達するコスト以上の儲けを生み出しており、良好と言えます。

 

 2番手は日本郵船です。

ROICはかなり高いレベルですが、如何せんWACCが高すぎます。

 続く2社にも言えますが、β値が極めて高く1.98)、株主資本コストが14%超となっています(負債との加重平均で、結果10.43%)。

当社を含む3社は、資本調達コストが儲けの度合いの方より大きくなっており、経済的損失の状態にあります。

 

 続いて商船三井です。

ROICが低くWACCはβ値が1.98と大きいため、株主資本コストが14%超にまで高まっています。

 

 そして川崎汽船です。

WACCが極めて高くなっています。

β値が3.04であり、株主資本コストが21.46%と極めて高い状況です。

 

 

 今回、この業界で特に気になったのは、2019コロナ終息に伴う特需の影響、およびそれでも厳しい収益状況の実態が見えてきた点です。

 

 

今回の「投資力」の順位による

比較レーダーチャートは以下のとおりです。

 

※営業CF対投資CF比率の順位は、100%との乖離幅が最小となる会社から1~4位としています。

 

 

また、全6回の分析における順位の

比較レーダーチャートは以下のとおりです。

 

 

 

以上で、海運業界を終了します。

 

 

 

 

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