精密機械業界の6回目、最終回です。
今回は、「投資力」の分析です。
取り上げる指標は、営業CF対投資CF比率、
各社別の営業/投資CF推移、
ROIC、WACCとなります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【営業CF対投資CF比率】
〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕
営業CFと投資CFの乖離幅が最小なのはテルモです。
グラフの形状もほぼ水平を描いており、慎重に対応しているようにうかがえます。
次に最小なのはオリンパスです。
そしてHOYAです。
ニコンはかなり乱高下しています。
続いて各社の推移を見ていきます。
【各社別 営業/投資CF推移】
〔実額ベース〕
オリンパスの直前期の営業CFは前年の2021決算期よりも拡大しています。
これは、「税引前利益」が前年の2倍近くになったこと、前年に生じた「非継続事業からの税引前損失」がゼロとなったこと、前期よりも「法人所得税の支払額」が大きく減少したことが主因としてあげられます。
次に、投資CFは前年より縮小しました。
前年に生じた「事業譲渡による支出」がゼロとなったこと、「子会社の取得による支出」が半減したことなどが主因です。
結果、直前期のFCFは大きく拡大しています。
テルモの営業CFは安定的な拡大傾向を示しています。
前年から直前期における各要因には大きな変化は見られず、「税引前利益」の拡大が主因となっています。
投資CFにおいても、800億円前後での安定した推移となっています。
ちなみに、直前期では「有形固定資産の取得による支出」が減少しています。
以上から、直前期のFCFは大きく拡大しています。
HOYAの直前期の営業CFは前年より拡大しています。
「税引前当期利益」が拡大したことが主因です。
投資CFはほぼ前年並みです。
2019決算期からの推移では、かなり減少させました。
結果、直前期のFCFは拡大しています。
ニコンの営業CFは、かなり乱高下していますが、直前期では拡大しました。
「税引前利益」が、△453億円の赤字から571億円の黒字へと、収益状況が大きく改善したことが主因です。
一方の投資CFは、前年はプラス値であり、直前期もかなり少額といえます。
前年では「投資有価証券の売却による収入」が387億円と巨額のプラス要因になっており、直前期においても205億円に上ったことが主因です。
なお、両年とも「有形・無形固定資産の取得による支出」は230億円強であり、過去と同等のレベルです。
結果、直前期のFCFは拡大しています。
【ROIC】
〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕
トップはHOYAです。
4期間とも15%以上と安定した推移となっています。
総じてかなり高いレベルであり、投資に対するリターンは十分と判断されます。
2番手はオリンパスです。
2020決算期から10%台近辺となっており、こちらも高いレベルと言えます。
続いてテルモです。
やや低下傾向ではありますが、比較的高いレベルであり、兎にも角にも安定しています。
なお、成長戦略における資本効率性の目標として、「ROIC:10%以上」を掲げています。
そしてニコンです。
直前期で大きく挽回し、5%台をうかがうレベルになりました。
【WACC】
〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))
+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕
〔ROIC-WACC〕が最大となっているのはHOYAです。
ROICの大きさもさることながら、WACCも4社中最少です。
2番手はオリンパスです。
ROICもWACCも2番手であり、〔ROIC-WACC〕の値は高いレベルと言えます。
続いてテルモです。
残念ながらマイナスになりました。
ROICは決して低くありませんが、WACCが高くなっています。
主因は、β値の大きさによる株主資本コストの高さです。
そしてニコンです。
当社もマイナスになりました。
負債コストは4社中最も抑制されていますが、やはりβ値が大きいことから株主資本コストが高まっています。
今回の「投資力」の順位による
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
※営業CF対投資CF比率の順位は、100%との乖離幅が最小となる会社から1~4位としています。
また、全6回の分析における順位の
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
以上で、精密機械業界を終了します。
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