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COLUMNSブログ「論語と算盤」

ドラッグストア業界-6

2022年10月13日

ドラッグストア業界の6回目、最終回です。

 

今回は、「投資力」の分析です。

 

 

取り上げる指標は、営業CF対投資CF比率

各社別の営業/投資CF推移ROICWACCとなります。

 

なお、各指標についての説明はこちらです。

 

 

営業CF対投資CF比率

〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕

 

直前期は全社が低下しています。

営業/投資CFの多寡について各社の内容を確認します。

 

 

各社別 営業/投資CF推移

〔実額ベース〕

 ウエルシアHDは、直前期の営業CFがかなり落ち込んでしまいました。

前回述べましたが、仕入債務の減少、棚卸資産の増加、売上債権の増加がその主要因となっています。

一方、投資CFは2021決算期で抑制しましたが、直前期では大きく拡大(支出増)しました。

拡大した要因は、第一に子会社株式の取得による支出であり、115億円強を投じています。

当社はM&Aを重要戦略としており、株式会社ププレひまわりや株式会社サミットなどの連結子会社化を図りました。

また、有形固定資産の取得による支出についても、前年から1.5倍近く拡大しています。

以上から、直前期のFCF(フリー・キャッシュフロー)は大きく減少し、マイナスになっています。

 

 ツルハHDも、直前期の営業CFが大きく落ち込みました。

ただし、2019、2020決算期と同水準です。

なお前回述べましたが、2021決算期の営業CF拡大は買掛金の増大が主因でした。

一方、直前期の投資CFでは、有形固定資産およびソフトウエアの取得による支出が前年を上回っていますが、前年生じた子会社株式の取得による支出がなかったため、ほぼ前年並みとなりました。

結果として、直前期のFCFは比較的大きく減少しました。

 

 コスモス薬品は、直前期の営業CFを伸ばしています

これは、仕入債務の増加が主因となっています。

一方、直前期の投資CFは大きく拡大(支出増)しています。

主因は、有形固定資産の取得による支出となっています。

結果として、直前期のFCFは大きく減少し、マイナスとなりました。

 

 サンドラッグ営業CFは安定的な推移を示しています。

コントロールされているようであり、マネジメント力の強さが表れています。

一方、投資CFは直近2期間とも比較的大きく拡大(支出増)しています。

両期とも、有形固定資産の取得による支出が拡大しています。

これらの結果、2期連続でFCFは減少しています。

 

 

ROIC

〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕

 

 トップウエルシアHDです。

2期連続で上昇しましたが、直前期は大きく低下しました。

2021決算期に比して、営業利益は大きく変動していない中、有利子負債と純資産が拡大しています。

 

 2番手はサンドラッグです。

3期連続で低下しています。

完全無借金経営で有利子負債はゼロですが、純資産は毎期拡大し、他方営業利益の伸びは小さく、特に直前期は減少した結果です。

 

 続いてコスモス薬品です。

2期連続の低下です。

2021決算期の営業利益は良好な伸長だったのですが、純資産の伸びがそれを上回りました。

直前期では、純資産の伸長が続く一方、営業利益は前年割れになってしまいました。

 

 そしてツルハHDです。

2期連続の低下です。

2021期は、有利子負債が急増した上に、純資産の伸びが営業利益を上回りました。

直前期では、有利子負債のさらなる増額と純資産の微増に対して、営業利益は前年割れとなってしまいました。

 

 

WACC

 〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))

+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕

 

 〔ROIC-WACC〕が最も大きいのはウエルシアHDです。

4社の中でROICは最高値、WACCは最低値です。

WACCのうち、負債コストは4社中で最高値(高コスト)ですが、株主資本コストは最低レベル(低コスト)となっています。

 

 2番手はコスモス薬品です。

ROICは3番手、WACCは2番手です。

 

 続いてサンドラッグです。

ROICは2番手、WACC3番手です。

完全無借金なのでWACCは株主資本コストのみとなり、翻って、低金利の恩恵を得られない状態です。

 

 そしてツルハHDです。

WACCは3番手であり、ROICが低い点が残念です。

 

 

今回の「投資力」の順位による

比較レーダーチャートは以下のとおりです。

 

※営業CF対投資CF比率の順位は、100%との乖離幅(絶対値)が

最小となる会社から1~4位としています。

 

 

また、全6回の分析における

順位の比較レーダーチャートは以下のとおりです。

経営規模を除けば、サンドラッグの存在感が目立ちます。

 

 

 

以上で、ドラッグストア業界を終了します。

 

 

 

 

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