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COLUMNSブログ「論語と算盤」

自動車業界-6

2022年9月1日

自動車業界の6回目最終回です。

 

今回は、「投資力」の分析です。

 

 

取り上げる指標は、営業CF対投資CF比率

各社別の営業/投資CF推移ROICWACCとなります。

 

なお、各指標についての説明はこちらです。

 

 

営業CF対投資CF比率

〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕

 

 直前期は、トヨタ投資余力が最も大きくなっています。

次いで日産、続いてホンダ、そしてスズキです。

 

では、各社の推移を見ていきます。

 

 

各社別 営業/投資CF推移

〔実額ベース〕

 

 トヨタの営業CFは、2020期では下がりましたが、その後2期連続で大きく伸ばしています

一方投資CFは、2019期と2020期は営業CF以下の規模でしたが、2021期は大きく増大させました。

これは、「主に新型コロナウイルスの影響長期化リスクを見据えた借入の実施により定期預金が1兆9,883億円増加したことによるもの」とのこと(定期預金への預入という投資活動)です。

有形固定資産や賃貸資産への投資は、一定レベルで継続されています。

 

 

 

 ホンダ営業CFは3期連続で拡大しています。

投資CF2019期から3期連続で、営業CF以下のレベルで増していましたが、直前期は抑制されました。

直前期では、有形/無形固定資産への支出や持分法による投資取得の支出などが減少しており、全面的に控えた形です。

コロナ禍における様子見の姿勢かと感じます。

 

 

 

 日産営業CFは年度により上下していますが、傾向としては低下気味です。

そのせいか、投資CFを3期連続、しかもやや大きめの規模で縮小しています。

最大支出額であるリース車両の取得については、3期連続で縮小しています。

2番目に支出額の大きい固定資産への支出も、直前の2期連続で縮小しています。

 

 

 

 スズキ営業CFは、増大と減少を繰り返している格好です。

投資CFは安定的に映りますが、直前2期は抑制気味です。

ただし、投資自体に消極的というわけではないようです。

例えば、2番目に支出額の大きい有形固定資産への投資については、直前期は前年より増やしています。

直前期で投資CFが半減以下に縮小した要因は、最大支出金額である有価証券への投資は増えたものの、有価証券の売却・償還による収入がそれを上回ったことや、3番目に支出金額の大きい定期預金についても同様に、預入よりも払戻による収入が大きかったことなどです。

 

 

ROIC

〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕

 

 トップスズキです。

ただし、2019期から急落しており、直前期は辛うじて4%台という状況です。

営業利益が3期連続で減少している一方、純資産は3期連続の増加であり、有利子負債は直前期こそ減少したものの増加傾向であるためです。

 

 2番手はトヨタです。

3期連続で低下していましたが、直前期では上昇しています。

これは、純資産、有利子負債が年々増加する中、直前期の営業利益の伸び率が前年比1.4倍近くと、大きく拡大したためです。

 

 続いてホンダです。

2020期は低下しましたが、その後2期連続で上昇しています。

有利子負債は3期連続の増加、純資産は2期連続の増加、それに対する営業利益も2期連続で増加ですが、特に直前期は前年の1.32倍と大きく伸びています。

 

 最後は日産です。

2020期、2021期と2期連続で営業欠損でしたが、直前期ではプラスになりました。

ぜひとも、今後の躍進に期待したいところです。

 

 

WACC

〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))

  +負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕

 

 4社とも〔ROIC-WACC〕がマイナスになりました。

他の業界と比べてもROICの値が小さめです。

最もマイナス幅が小さいのがトヨタ、次いでホンダ、続いて日産、そしてスズキという順番です。

 

 

今回の「投資力」の順位による

比較レーダーチャートは以下のとおりです。

なお、グラフ中の[FCF]は、フリーキャッシュフローの大きさです。

 

また、全6回の分析における順位の

比較レーダーチャートは以下のとおりです。

 

 

以上で、自動車業界を終了します。

 

 

 

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