自動車業界の5回目です。
今回は、「資金力」の分析です。
取り上げる指標は、手元資金推移、手元流動性比率、
手元資金有利子負債カバー率、総資本営業CF比率、
売上高営業CF比率となります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【手元資金推移】
〔手元資金=現金預金+有価証券(短期保有目的)〕
トップはトヨタです。
2021期は10兆円に届かんばかりでしたが、直前期ではやや減少しました。
これは、現金及び現金同等物が1兆円ほど増加したものの、短期保有目的の有価証券(その他の金融資産勘定)が1.7兆円ほど減少したためです。
2番手はホンダです。
3期連続で増加しています。
続いて日産です。
2期連続で増加しましたが、直前期では減少しました。
これは、現金及び預金が4千億円以上減少したためです。
そしてスズキです。
この3期間は、減少、増加、減少というように増減を繰り返しています。
【手元流動性比率】
〔手元流動性比率=(現金・預金+有価証券)÷(年商÷365)〕
トップはスズキです。
日商の111日分ですから、4ヶ月分近くの手元資金を有しています。
2019期から大きく増大していることがわかります。
2番手はトヨタです。
当社も同じように、2019期からは大きく増大しています。
続いて僅差でホンダです。
一定比率で増大しているように見えます。
そして日産です。
直前期は減少しましたが、それでも2.5ヶ月強分であり、特段少ないわけではないでしょう。
私見ですが、新型コロナの感染症まん延や、終わりの見えないロシア・ウクライナ紛争など、世界的にリスク要因が多発・拡大している昨今、手元資金を多く保有する傾向が高まりそうな気がします。
【手元資金有利子負債カバー率】
〔手元資金有利子負債カバー率=(現金・預金+有価証券)÷有利子負債〕
トップはスズキです。
4期間とも実質無借金経営の状態です。
2番手はホンダです。
直前期ではやや比率が高まりました。
これは、有利子負債自体は増加したものの、前述のように手元資金がそれ以上に増加したためです。
続いて、トヨタです。
直前期はやや低下しました。
前述した手元資金7千億円ほどの減少に対して、長期借入債務を中心とした有利子負債が1兆円以上増加しています。
そして日産です。
直前期はほぼ前年並みの推移となっています。
【総資本営業CF比率】
〔総資本営業CF比率=営業CF÷総資本〕
トップはホンダです。
3期連続で上昇しており、キャッシュ創出力が強化されていることがうかがえます。
2番手はトヨタです。
2020期で落とした後、やや低迷している様子です。
続いてスズキです。
総資本に大きな変化はなく、営業CFが年度によって上下しています。
僅差で日産です。
高いレベルを維持していましたが、直前期で大きく低下しました。
営業CFが大きく減少しており、その主因は仕入債務の減少です。
【売上高営業CF比率】
〔売上高営業CF比率=営業CF÷売上高〕
トップはトヨタです。
売上高におけるCF創出力がこれだけ安定的で高いレベルを維持しており、さらに売上高が圧倒的に大きいという事実は、やはり相当に強い経営基盤と言えます。
簡単には手元資金が減少しそうにありません。
2番手はホンダです。
3期連続で上昇しています。
また、トップに肉薄しており、逆転せんばかりの勢いが感じられます。
続いて日産です。
過去3期はトップクラスでした。
直前期では、売上高が上昇した反面、前述のように営業CFが減少したため大きく低下しました。
最後にスズキです。
営業CFを安定的に生み出すことが課題と感じます。
今回、特に気になったのは、ホンダの安定性と良化です。
各指標が高まっており、
マネジメント力の強さを感じさせます。
今回の「資金力」の順位による
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
今回は以上です。
次回は、「投資力」を見ていきましょう。
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