飲食業界の5回目です。
今回は、「資金力」の分析です。
取り上げる指標は、
手元資金推移、手元流動性比率、手元資金有利子負債カバー率、
総資本営業CF比率、売上高営業CF比率となります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【手元資金推移】
〔手元資金=現金預金+有価証券(短期保有目的)〕
マクドナルドが最大です。
しかも3期連続で拡大させています。
ちなみに、キャッシュフローの動きも安定的な推移となっています。
2番手はすかいらーくで、直前期は前期の2倍以上と急増しています。
この主因は、当期純利益の黒字化によるものです。
3番手は、僅差でゼンショーです。
やはり直前期で拡大させていますが、主因は長期借入金の増加です。
F&L COは2期連続で増加しており、特に直前期は前期の2倍以上になっています。
直前期の最終利益が2倍以上となっており、加えて社債や長期借入金も増大しています。
【手元流動性比率】
〔手元流動性比率=(現金・預金+有価証券)÷(年商÷365)〕
マクドナルドがトップで、直前期は月商レベルで3か月近くまで増大しています。
今後は、高まった自己資本とともに、成長領域への投資が求められてくるでしょう。
続いて、すかいらーくです。
前述のように、黒字になれば手元資金が増す構造となっています。
成熟した状態と言え、やはり今後の積極果敢な取り組みが期待されます。
F&L COは、すかいらーくと似た推移で拡大しています。
日商で3週間分程度だった2020決算期に比べ、直前期は1.5ヶ月分程度になってます。
ゼンショーは、この4社の中ではやや低位です。
ただし、基本的に日銭商売の業界ですので、問題はないと思われます。
【手元資金有利子負債カバー率】
〔手元資金有利子負債カバー率=(現金・預金+有価証券)÷有利子負債〕
マクドナルドは2019、2020期と有利子負債が5億円程度と少額で、2021決算期にはゼロになりました。
つまり、完全無借金経営となりましたので、グラフでは表示しておりません。
3社の中では、F&L COのカバー率が最も高くなっています。
直前期では、有利子負債が前年比で135%と増えましたが、キャッシュの増大がそれを上回っています。
すかいらーくも、直前期のキャッシュ増大によって、カバー率を高めました。
有利子負債についても、直前期では前年の15%強減少しています。
ゼンショーは、直前期の有利子負債が前期比で108%弱の増加、それに対してキャッシュは前期比で130%以上増やしており、若干ではあるもののカバー率を引き上げています。
【総資本営業CF比率】
〔総資本営業CF比率=営業CF÷総資本〕
マクドナルドがトップです。
この4期中、総資本は一定レベルで増加していますが、営業CFは上下しています。
2020期の急落は、各科目の増減も多々ある中、法人税等の支払額が前期比で3倍近くまで拡大したことが主因のようです。
2番手はすかいらーくであり、マクドナルドと同じようなグラフ形状です。
ただし、2020決算期の急落の理由は相違しており、当期最終収支が264億円強の欠損になったことが最大の要因です。
続いて、僅差でF&L COです。
2020期に低下していますが、また理由は相違します。
2020期の営業CFは前期比で4割近く増大していますが、以前も解説したように、IFRS第16号「リース」の適用等による有形固定資産の増加がそれを凌駕しているためです。
ゼンショーのみ、直前期で低下しています。
前期に比べ、総資本が108.2%と増大する中、営業CFは88.4%と減少しています。
営業CFの減少は、最終利益の大幅な低下(前年比18.9%)が主因です。
【売上高営業CF比率】
〔売上高営業CF比率=営業CF÷売上高〕
トップは、すかいらーくです。
2019期は、前期比の売上高実績が102.5%であるのに対し、営業CFは214.8%の増大となっています。
また、2021期では、前期比の売上高が91.7%と減少する中、営業CFは136.3%と増大しています。
2番手はF&L COであり、グラフの形状が総資本営業CFとは相違しています。
売上高に対する営業CFですので、前述のIFRS適用の影響を受けません。
売上高が3期連続で伸長する中、営業CFもそれを超えるレベルで増大し続けた結果です。
マクドナルドが3番手です。
前述の総資本CFと同様のグラフ形状となっています。
総資本、売上高が安定的に増加しているため、営業CFの動きがそのまま表れています。
ゼンショーは3期連続で低下しています。
売上高の推移は若干の増減がありますが、営業CFは3期とも売上高の伸長率以下となっています。
今回、特に気になったのは、一つに、すかいらーくのCF創出力です。
どの指標も直前期で良化させつつ、2位か1位という位置取りでした。
特に、売上高営業CF比率がトップであったことが印象的です。
もう一つは、ゼンショーのCF創出力の不安定さです。
上位に位置することなく、特に直前期でも下げている指標が気になります。
今回は以上です。
次回は、「投資力」を見ていきましょう。
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