飲食業界の4回目です。
今回は、「資本活用力」の分析です。
取り上げる指標は、総資本回転率、売上債権回収日数、
棚卸資産回転日数、流動比率、自己資本比率となります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【総資本回転率】
〔総資本回転率=売上高÷総資本〕
ゼンショーがトップですが、直前期では下げています。
直前期では、売上高が減少した一方、総資本が高まりました。
総資本のうちでは、純資産が減少し、有利子負債が増加しています。
続くマクドナルドは、3期連続で微減しています。
売上高は3期連続で上昇していますが、それ以上に総資本が増しました。
ただし総資本の内訳では、負債よりも純資産の方が増加傾向となっています。
F&L COは、2期連続で低下しています。
売上高は3期連続で増加していますが、総資本はそれ以上に膨らんでいます。
顕著なのは、2020決算期での大きな低下です。
これは第1回で記載したように、IFRS第16号「リース」の適用等によるリース負債額の増加が、総資本の増加を招いたためです。
続く2021決算期では、長期の有利子負債(社債・長期借入金)の増加を主因に、総資本が売上高の伸長率を超えました。
すかいらーくは3期連続の低下ですが、その度合いはやや大きめです。
2019決算期は、やはり第1回で記載したように、IFRS第16号「リース」の適用等によるリース負債額の増加が主因となっています。
続く2期間は、総資本の推移はほぼ横ばいながら、売上高が低下したことが要因です。
【売上債権回収日数】
〔売上債権回収日数=売上債権残高÷日商(売上高÷365)〕
フランチャイズ中心のマクドナルド以外の3社は、直前期で長期化しています。
主として、キャッシュレス決済の普及による代金回収期間の長期化によるものと判断されます。
その中でも、ゼンショーの上昇度合いは小さめであり、半月分を下回っています。
F&L COは、3期連続の長期化であり、直近では23日弱と、3週間分(21日分)を超えてきました。
すかいらーくはこの4社の中で最長となっており、1ヶ月分を超えています。
マクドナルドが平準化しているのは、直営店におけるキャッシュレス決済の普及による変動はあるでしょうが、フランチャイズ店からの入金の方が相対的に多いためと思われます。
【棚卸資産回転日数】
〔棚卸資産回転日数=棚卸資産残高÷日商(売上高÷365)〕
4社とも、4期間における変動はほとんどありません。
売上高の上下がある中でのこの推移ですので、各社の在庫管理は安定的と言えます。
【流動比率】
〔流動比率=流動資産÷流動負債〕
100%以上が必須と言われる当指標ですが、それを満たしているのはマクドナルドだけです。
2期連続で上昇させたのち、直前期では低下しています。
直前期の低下要因は、現金及び預金が約2割増加して流動資産全体が12.9%増加した一方、流動負債の各明細の増加による、流動負債全体が17.3%増加したためです。
ゼンショーは、2019決算期に100%を超えましたが、2020決算期は現金及び預金の減少を主因として、流動資産が減少してしまいました。
2021決算期では現金及び預金を増やしましたが、短期の有利子負債やリース負債がそれ以上に増えています。
F&L COは、かなり低い値でしたが、直前期で81.6%まで上昇しました。
前述のように、IFRSの影響で負債が増しましたが、直前期では現金及び現金同等物、営業債権及びその他の債権が2倍から3倍近くへ、また棚卸資産やその他の流動資産も増加しています。
結果的に直前期の流動資産は、前年比で230%以上と大きく膨らみました。
すかいらーくも同様に直前期で急上昇させています。
直前期では、流動負債における短期借入金が大きく減少した一方、流動資産における現金及び現金同等物、営業債権及びその他の債権が増しています。
【自己資本比率】
〔自己資本比率=自己資本÷総資本〕
マクドナルドが高いレベルを維持しています。
国内でのさらなる店舗展開による効果は、大きく期待できません。
よって、有利子負債を活用して事業拡大を図るレバレッジ効果は適切ではないでしょう。
安定的な事業運営を株主にアピールしながら、次代の成長を探っていくことになりそうです。
すかいらーくは、直前期で高めています。
これは、430億円弱の新株発行による増資、および87億円強の当期純利益の内部留保を主因とした自己資本の増加によるものです。
また、前述の短期借入金の減少による負債の減少も影響しています。
ゼンショーは、ほぼ横ばいという推移です。
直近の3期間は、純資産、負債とも大きな変化は生じていません。
ほぼ同じ値でF&L COが続きます。
2期連続の低下となっています。
純資産は3期連続で増えていますが、それ以上に負債も増えている格好です。
今回、特に気になったのは、マクドナルドの安定性です。
一定の需要をしっかりと確保した上で、各種比率も良好なレベルで維持しています。
今回は以上です。
次回は、「資金力」を見ていきましょう。
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