飲食業界の6回目、最終回です。
今回は、「投資力」の分析です。
取り上げる指標は、営業CF対投資CF比率、
各社別の営業/投資CF推移、ROIC、WACCとなります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【営業CF対投資CF比率】
〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕
すかいらーくが最大です。
2020期の下落は、前回述べたように、収益状況の悪化による営業CFの減少によるものです。
2番手は、マクドナルドです。
2020期は、前回述べた内容で営業CFが減少した上に、投資CFが大きく膨らみました。
僅差でF&L COが3番手です。
3期連続で営業CF、投資CFとも拡大させています。
ゼンショーは、営業CFが伸び悩んでいるようです。
【各社別 営業/投資CF推移】
〔実額ベース〕
各社の状況を見てみましょう。
ゼンショーは、営業CFがほぼ横ばい、若干低下傾向となっています。
投資CFは、2019期と2020期において、営業CFを超えるレベルとなっています。
この2期は子会社株式の取得があり、2019期で約274億円、2020期で約66億円の支出になっています。
すかいらーくは、営業CFの金額が4社中最大です。
投資はやや控え気味のようで、結果的に前回述べた手元資金の増大につなげている格好です。
2020期と2021期は、2019期や2020期と比べて、有形固定資産への支出が減少しています。
マクドナルドの投資CFは、2020期を除けば一定の投資を行っているようです。
有形固定資産やソフトウエアの取得に対して安定的に支出しています。
2020期は、定期預金への預入で400億円を計上したことが急増の原因です。
F&L COは、営業CF内での投資CFとなっており、計画的という印象です。
4期間とも有形固定資産への支出が投資CFの7~8割を占めています。
ちなみに直近では、子会社の取得で約23億円を支出しています。
【ROIC】
〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕
マクドナルドがトップです。
13.3%という値は、他の業界と比しても高いレベルと言えます。
有利子負債の無い完全無借金経営であり、以前述べたように自己資本比率は75%近くです。
そのような資本構成において、収益面では営業利益を相当に大きくたたき出しており、ROICが4期間とも11%以上を維持しています。
F&L COが2番手です。
営業利益が増加しており、第1回以降述べてきたように、営業利益額、総資本営業利益率、売上高営業利益率において、4社中マクドナルドに次ぐ2番手に位置しています。
すかいらーくが直近で挽回して3番手となりました。
コロナ前の水準の営業利益が期待されます。
ゼンショーは、直前期で落としてしまいました。
第1回で紹介したように、直前期の営業利益額が前年の60%以下になった点が影響しています。
【WACC】
〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))
+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕
マクドナルドの〔ROIC-WACC〕が9.3%であり、これはかなり高いレベルです。
β値が0.5程度と低いことから株主資本コストが4%となり、有利子負債が一切ないことから負債コストはゼロになっています。
そして、前述のROICが高レベルなことから、良好な状態を維持しています。
F&L COも十分なレベルと言えます。
β値が1.27と高いため、株主資本コストが9%超になりますが、負債コストとの加重平均で約8%になっています。
なんといっても、ROICが高レベルであることが奏功しています。
すかいらーくの値は暫定です。
借入金に関して、金融機関との約定により金利が流動的になっています。
基本的には〔TIBOR(Tokyo Interbank Offered Rate:東京銀行間取引金利)+スプレッド〕での金利になるようですので、今回は暫定として、2022.05.17時点TIBOR:12MONTHの利率である〔0.16〕のみで算出しています。
スプレッド分を算入しておらず、負債コストが低く算出されていることになるため、解説は割愛します。
なお、社債はありません。
ゼンショーは、〔ROIC-WACC〕が負の値となってしまいました。
ただし、WACC(資本コスト)は4社中最小と良好です。
β値が0.62と低く、株主資本コストが4.76%です。
また、負債コストが0.96%であり、両者の加重平均で3.4%というレベルになっています。
資本コストとしては良好な状態なので、今後はROICの拡大が必要です。
以上で、飲食業界を終了します。
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