眼鏡業界の6回目、最終回です。
今回は、「投資力」の分析です。
取り上げる指標は、営業CF対投資CF比率、
各社別の営業/投資CF推移、ROIC、WACCとなります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【営業CF対投資CF比率】
〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕
各社の動きは様々です。
ビジョナリーHDは、営業CFが投資CFを大きく超えてきています。
三城HDは、今までの指標の動きの中では、比較的大きい方と言えます。
2020決算期に100.0%になっているのは、投資FCがプラスになったためです。
ジンズHDは、2019決算以降、値としては低下しています。
愛眼の動きは激しく、2020決算期はグラフに収まっていません。
2021決算期に0.0%になっているのは、営業CFがマイナスになったためです。
各社ごとに見ていきましょう。
なお、各社のグラフは、縦軸のレベルが相違していますので注意してください。
(三城HDとビジョナリーHDは同じ)
【各社別 営業/投資CF推移】
〔実額ベース〕
ジンズHDは、2020決算期まで営業CFを伸ばしてきましたが、直近の2021決算期では減少しました。
投資CFは、直近2期は過去よりもやや増額しているため、FCF(フリー・キャッシュフロー)は減少しています。
今後のポストコロナ時代での積極的事業展開のためには、さらなる営業CFの獲得が望まれます。
三城HDは、営業CFに見合った投資CFという推移になっているようです。
そういう意味では、うまくコントロールされているように映ります。
2020決算期のみ、上述したように投資CFがプラスとなりましたが、これは定期預金の払戻による収入が大きかったためであり、有形・無形固定資産等への投資量が目立って減少しているわけではありません。
ビジョナリーHDは、営業CFの増大が大きくなっています。
2019および2020決算期の投資CFは比較的大きめでしたが、直前期は様子見なのか少々減少しています。
愛眼は営業CFが3期連続で減少しています。
投資は抑制気味のようですが、差し引きのFCFも減少傾向です。
【ROIC】
〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕
ジンズHDがトップであり、良好なレベルとなっています。
ただし、直前期の値は、2018や2019決算期の半分程度となっています。
2番手はビジョナリーHDです。
2020決算期は営業欠損であったのでマイナス値になっていますが、2021決算期では挽回しました。
しかしながら、2018、2019決算期に比較すると1/3以下まで低下しています。
コロナ禍による影響が大きいのでしょうが、
成長を目指すジンズHDとビジョナリーHDの2社にとって、
直近2期間は厳しい環境と言えます。
三城HDは、営業利益から法人税を控除すると、4期連続でマイナスとなります。
コストをかけて自己資本と負債を投入しても、リターンが得られないどころか、逆に損失を生み出しているという状況です。
4期連続というのは気になります。
2020と2021決算期という後半の2期間はコロナ禍の影響としても、2018と2019決算期という前半の2期間については問題でしょう。
ポストコロナにおいて、果たして改善の糸口が見いだせるか、一抹の不安が漂います。
愛眼は、直近2期間でマイナス値になっています。
それ以前はプラスでしたが、そのレベルもかなり低いものでした。
ポストコロナにおいては、利益拡大に向けた取り組みが今まで以上に求められてくるでしょう。
【WACC】
〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))
+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕
ジンズHDは、ROICが高かった分、WACCを差し引いても十分なリターンが得られていることがわかります。
他の3社は、残念ながら「投資負け」の状態です。
資本調達のコストが、その資本を活用して得たリターンを上回ってしまっています。
三城HDは、WACC自体の値はそれほど大きくありませんが、上述のROICがマイナスなので致し方ありません。
ビジョナリーHDは、WACCのマイナス値が大きくなっています。
これは、β値が高いことから、株主資本コストが10%超となっているためです。
愛眼は、完全無借金経営なので負債コストはゼロです。
ただし、株主資本コストは4社中で最も高くなっています。
投下資本が株主資本のみという場合、リスクフリーレートと市場リスクプレミアムの合計額でほぼWACCの値が決まってしまいます。
そのため、近年の低金利という恩恵が受けられていません。
無借金が無条件でOKかというと、必ずしもそうではありません。
有利子負債を交えた資金調達が得策になるケースも十分にあり得ます。
以上で、眼鏡業界を終了します。
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