眼鏡業界の5回目です。
今回は、「資金力」の分析です。
取り上げる指標は、手元資金推移、手元流動性比率、
手元資金有利子負債カバー率、総資本営業CF比率、
売上高営業CF比率となります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【手元資金推移】
〔手元資金=現金預金+有価証券(短期保有目的)〕
ジンズHDは、2019年度に転換社債型新株予約権付社債200億円を発行したことで、手元資金が大きく拡大しました。
この社債発行がなければ、最終利益の減少によって2020決算期の手元資金は減少していたようです。
また、直前期で減少していることもやや気になります。
2番手は三城HDです。
2期連続で減少傾向でしたが、直前期では微増しています。
続いて、ビジョナリーHDです。
2020決算期で大きく伸ばしたように映りますが、2019決算期を除けば、2018から2021決算期まで拡大しているように捉えられます。
2019決算期に手元資金が減少したのは、品揃えの充実を理由とした、棚卸資産の16億円以上の拡大が大きく影響しています。
愛眼はビジョナリーHDと僅差です。
売上高と総資産は3期連続の減少ですが、手元資金は安定的に推移しています。
【手元流動性比率】
〔手元流動性比率=(現金・預金+有価証券)÷(年商÷365)〕
トップは愛眼であり、月商の5ヶ月分近くのレベルです。
今後、成長分野に適切に投下できれば、次の発展も期待できそうです。
続いてジンズHDです。
前述したように、2020年決算で急拡大しました。
直前期は低下しましたが、それでも月商の4ヶ月分以上のボリュームです。
三城HDが僅差で付けています。
直前期では、手元資金の増加と売上高の減少により、この比率が上昇しました。
ビジョナリーHDは3ヶ月弱となっています。
見た目は他の3社と乖離していますが、3ヶ月分弱のボリュームであり、さらに直前期で上昇させています。
充分な状態と言えるでしょう。
【手元資金有利子負債カバー率】
〔手元資金有利子負債カバー率=(現金・預金+有価証券)÷有利子負債〕
愛眼は、完全無借金経営なので、グラフに表れてきません。
三城HDも300%程度と、相当に高いレベルです。
この老舗の2社は大きな発展を遂げ、「花形」から「金のなる木」に移行した様子です。
ただし、今後についてはやや気になります。
適切な投資による、少なくとも現状維持、できれば発展、これらの進化がない場合、「問題児」に陥りかねません。
ビジョナリーHDとジンズHDもともに100%を超えており、実質無借金経営となっています。
【総資本営業CF比率】
〔総資本営業CF比率=営業CF÷総資本〕
トップはビジョナリーHDです。
2019決算期の棚卸資産の急拡大による低下を除けば上昇傾向であり、キャッシュ創出力が年々強化されているようです。
続いて、ジンズHDです。
直前期の営業CF額は減少しましたが、それまでの2期間は増大させていました。
2020年決算期においても営業CFは増大していますが、200億円の社債発行による総資本(計算式の分母)の拡大により、この指標値は低下しました。
三城HDの値は安定的です。
総資本が3期連続で減少する中、営業CFは一定レベルを維持しています。
愛眼は3期連続の低下となりました。
直前期では営業CFがマイナスとなっていますが、これは当期純損失額が大きかったのが最大の要因です。
【売上高営業CF比率】
〔売上高営業CF比率=営業CF÷売上高〕
前述の指標と順位は変わっておらず、ジンズHD以外の3社はグラフの傾きもほぼ同様です。
ジンズHDの指標は、前述の総資本の拡大を除けば、2020決算期まで2期連続で伸ばしていました。
気になるのは直前期の低下度合いであり、この4期間で最小値となっています。
直前期は、売上高の増加と最終利益の黒字幅拡大にもかかわらず、仕入債務の減少や棚卸資産の増加により営業CFの実額が前年比で35%近く減少してしまっています。
今回、特に気になったのは、老舗と新興企業の違いです。
コロナ禍という特殊な環境下において、
どんな会社も明確な方向性がなかなか出せないと思われます。
ジンズHDの社債発行は、今後の発展のためでもあるでしょうし、コロナ禍を安定的に乗り切るための資金的防御策としても有効と考えられます。
それに対してビジョナリーHDは、店舗単位の収益性に着目して、コロナ禍においても積極果敢な取り組みによる成長がうかがえます。
上記2社と比べると、老舗と言える三城HDと愛眼は、目立った戦略や大きな動きが見られません。
ただし、売上高や総資本が減少してはいますが、命綱である手元資金が相当に力強いレベルです。
コロナ禍を辛抱して踏ん張り、ポストコロナにおいて、従前どおりの経営を泰然自若で展開されるのでしょうか。
今回は以上です。
次回は最終回です。
「投資力」を見ていきましょう。
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