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COLUMNSブログ「論語と算盤」

他人資本 ~固定負債~

2021年5月20日

固定負債を概観します。

 

 

 固定負債には、長期借入金その他借入金(役員などから)、社債退職給付引当金などが計上されます。

会社業績や経営活動の洞察という側面からは、あまり興味深い勘定項目はありませんが、社債にについて近年の特徴的な動きをピックアップしておきます。

 

 

 社債とは、外部の投資家から資金を借り入れるための手段です。

銀行からの借入金と根本的に違うのは、借入金は借入した翌月から元金の返済と金利の支払いが始まる(条件によっては元金返済の猶予期間も有)のに対して、社債は満期(3~5年)になるまで元金の返済は不要ということです。

満期までは、年に2回など、利子に相当する金額を社債購入者(投資家)に支払います。

 

 投資家側の観点とすると、社債を購入してその会社に資金を預けるわけですが、さすがに満期5年ともなると、その間元金が返ってこないことに一抹の不安を感じるでしょう。

同じお金を貸すのなら、借入金の仕組みの方がリスクを抑えられます。そのため、銀行金利と社債金利を比較したときに、社債金利の方が高くなければ社債の需要は生じないと考えられます。

 

 ところが2019年秋、トヨタ自動車は金利0.001%の社債を発行しました。実質的に利回りがゼロとなるため、満期まで3年間保有しても投資家の金利収入は生じません。それでも、予定した発行額の2倍程度の申し込みがあったようです。

 

 なぜそんなに人気が出たのか、それは2013年後半から始まった「黒田バズーカ」と呼ばれる大規模金融緩和の影響です。

日銀は、市中の銀行等金融機関に潤沢な資金を供給するために買いオペを実施するのですが、その対象は、国債はもとより、上記のような「社債等リスク資産」も積極的に買い入れる方針を掲げていました。

そのため、保険会社や年金基金などの機関投資家は、利回りゼロ、あるいは利回りマイナスの社債でも、日銀が購入価格より高く買い取ることを想定して、売買差益(キャピタル・ゲイン)を狙ったわけです。

 

 

 何となく、マネーゲームの様相を呈していますよね。しかし、現実として、現下の経済状態はまさにカネ余りです。上場企業の過半数が「実質無借金経営」の状態になっていることからもわかるように、投資意欲はあるものの、めぼしい投資先が見当たらない、見いだせないという状態なのです。

 

 

この現状は、果たして異常事態なのでしょうか?

あるいは、なんらかの経済構造の転換点なのでしょうか?

いずれにせよ、経済動向を良く観察しながら活動していくことが重要のようです。

 

 

 なお、社債と同じような仕組みで、短期の資金調達手段にCP(コマーシャルペーパー)があります。これは、1年以内に満期による償還がなされるため、流動負債に計上されます。