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COLUMNSブログ「論語と算盤」

他人資本 ~流動負債~

2021年5月17日

貸借対照表が表す「資本の調達面」を解説します。

まずは負債。これは、他者から調達した資本となることから「他人資本」と呼ばれます。

そのため、返済が必要な調達源となります。

 

 

 図で示したように、負債は流動負債固定負債に分かれます。この分け方は資産と同様です。

つまり、営業循環過程にあるもの(買掛金など)と1年以内に処理(返済)する必要のあるものは流動負債となり、それ以外(営業循環過程以外と1年超で処理するもの)は固定負債となります。

 

 流動負債には、買掛金電子記録債務短期借入金未払金未払費用前受金賞与引当金未払法人税等未払消費税などが計上されます(建設業では未成工事受入金という勘定も生じます)。

 

 

いくつかポイントをピックアップします。

 

  • 買掛金電子記録債務・・・仕入に対する未払の残高となります。通常、「月末締め・翌月末支払」などの対応でしょうが、決算月の末時点でどれだけ未払があるかが明示されます。電子記録債務は、流動資産の中の当座資産に計上される電子記録債権の裏返しのようなもので、支払手形のデジタル版です。

 これらは、本来仕入れた財と交換で代金を支払うべきところを、手間や危険性を排除するために後日支払うというものです。翌月末払いなら猶予期間が1ヵ月となり、その期間は代金を自由に活用できる、つまり借金したと同じような効果が出ることから「資本の調達」になります。

 

 買掛金残高は、売掛金回収期間と同じレベルの支払期間であれば問題ないでしょう。具体的には、毎月の売掛金残高が平均的な月商分だとすると、買掛金残高も年間総仕入額を12ヶ月で除した平均月間仕入額程度が望ましいということです。

 

 以前、建設業でこんなことがありました。その会社の担当者は工事の現場監督であり、一人親方と呼ばれる職人を使って工事を進めていました。監督とすると、職人さんは指示通りに、効率的に動いてもらいたいものです。そのため、日当をすぐに支払ってあげていました。これは職人側からすると金払いが良くて助かります。よって、その監督が担当する様々な現場に優先して駆けつけ、頑張って働き、一層関係を強化しようとします。

一見、好循環のように見えますが、現場監督が所属する会社の資金繰りは窮屈になります。その会社の担当者全員が同じようなことをしてしまうと、資金繰りは火の車になりかねません。

 

 このように、会社のマネジメントと現場の効率性は相反しがちですので注意が必要です(在庫を欲しがる営業部門と削減したい管理部門の利害衝突など)。

なお、このようなケースでは、買掛金残高が「おや?」と思うほど少額になります。一見すると負債が少なく映りますが、資金繰りが窮屈になっているのなら改善・対処が必要です。

 

 

  • 前受金・・・流動資産のその他の勘定で前払費用を簡単に説明しましたが、その逆の解釈となります。取引は「財・サービス」と「金銭」の交換なので、先に「金銭」を受領したなら(前受金や前受収益)、後日「財・サービス」を提供しなくてはならない義務を負います。つまり債務であり、負債に計上されるわけです。

 

 

  • 未払法人税等未払消費税・・・「税金をまだ払っていないのか?」、「この会社脱税してんの?」というわけではありません。決算日(例えば3/31)の活動が終わると、そこで初めて決算書が確定します。同時に納税する額も確定しますが、そこから慌てて納税に行っても、大概の場合税務署は閉まっています(小笑)。というわけで、決算日に判明したその年度の税金(法人税や消費税など)は、どうしても未払にならざるを得ないわけです。納税の期限は決算月の翌々月末までなので、慌てることもありません。なお、アルコールメーカーの決算書では、未払酒税という勘定もあります。

 

 

次回は、固定負債です。