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COLUMNSブログ「論語と算盤」

固定資産の概観

2021年5月13日

流動資産を見極めるには少々洞察力が必要ですが、固定資産は比較的パッと見で認識できます。

安定成長時代の近年、非上場企業でも、あまり変な科目は無くなってきているようです。

 

 

 以前述べた様に、固定資産には営業循環過程以外、あるいは1年を超えて回収していく科目が計上されます。比較的シンプルなものが多いと言えます。

 

 大きく、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産の3つに分かれます。

 

 

有形固定資産:建物等、機械類、車両等、工具類、土地、建設仮勘定、リース資産など】

 

 有形固定資産の総額が多過ぎると、設備過剰となり、投資効率の見地からの評価は低くなります。

 1900年代半ばから始まった我が国の高度経済成長期は、継続的な物価上昇=インフレーション時代だったため、土地などを保有することが有利と考えられていました。しかし、21世紀入り後、オフバランス(貸借対照表から外す=賃借する)やリースで対応する企業が多くなっています。

 

 土地は、オフバランスの代表格です。土地はそのときの相場で価格が上下するため、土地価格が暴落して資産価値が下がってしまうとその企業の評価も表面上で下がりますが、それはその企業の経営力を表したものとは言えません。

 よって、正しく評価されない可能性のある要因は資産から外しておいた方が得策なわけです。

 

 リースは、所有ではないという考え方から、もともと貸借対照表に計上されていませんでした。

しかし2007年の税制改正により、08年以降、上場企業および会社法上の大企業に対して計上が義務付けられました。このことにより、資本回転率という指標の悪化傾向が生じます。

 

 

 個人的な経験ですが、2010年ごろでしたか、ある会社のBSに、通常の業種なのに「船舶」が計上されていたことが印象的です。

昔は、公私混同の会社では、経営者の趣味や嗜好が決算書に表れてしまう(笑)ケースが多かったようですね。

 

 

無形固定資産:営業権、特許権、借地権など法律上の権利、ソフトウエア、のれんなど】

 

 「のれん」とは、M&Aに際して、相手先企業をその純資産額以上で買収した部分の金額となります。その会社の歴史や信用などの価値と捉えられ、いわゆる「お店ののれん分け」で使われる意味とほぼ同様です。

 

 のれんの帳簿上の処理については、現状、日本会計基準と国際・米国会計基準で相違しています。色々と検討されているようであり、今後も変わる可能性があります。

 

 

投資その他の資産:投資有価証券、長期貸付金、長期前払費用、投資不動産など】

 

 流動資産の初回での説明で、有価証券に関するコメントが抜けていました。ここで、投資有価証券との違いを含めてコメントします。

 

      • 流動資産の有価証券勘定・・・売買目的の短期保有分です。いわゆる財テクで保有する株式などが該当し、値上がりしたら売却するようなイメージです。

 

      • 投資その他の資産にある投資有価証券勘定・・・子会社や顧客企業の株式などのように売買を目的とせずに保有する有価証券、あるいは1年超が満期である社債などが該当します

 

 

 固定資産は以上です。個人的な経験で固定資産にからむ色々な問題に直面した経験があります。

ただし、その多くは独自性が強く、普遍性が無く、興味深いケースも多くありません。

 

 なお、貸借対照表の資産には繰延資産というものがありますが、

上場・非上場ともほとんどの企業がゼロか少額なので(減価償却のため)、コメントは省きます。