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COLUMNSブログ「論語と算盤」

人間関係の極意

2024年3月8日

大國は下流す。天下の交わりは天下の牝なればなり。牝は常に靜かなるを以て牡に勝つ。靜かなるを以て下ることを爲す。故に大國以て小國に下るときは、則ち小國を取る。小國以て大國に下るときは、則ち大國を取る。故に或いは下りて以て取り、或いは下りて而も取る。大國は人を兼ねやしなうを欲するに過ぎず。小國は入りて人につかえんと欲するに過ぎず。夫れ兩者各ゝ其の欲する所を得。故に大なる者は宜しく下と爲るべし。〔大国者下流章第六十一〕

(大国はみずから水の流れのいちばん下の所に身を置こうとする。それというのも、天下の国々の連盟の主宰者たるべき者は、もっとも女性的なる存在でなければならないから。

 女性的なるもの、牝というものは、常に静けさ、へりくだることでもって雄に勝つことができる。

 大国も静かだからこそ、下流におることができるのである。

 だから、大国が小国にへりくだるときには、その小国を取ることができる。小さい国が大国にへりくだるときには、大国を取ることができる。

 だから、あるいはへりくだることによって、相手の国を取る。あるいは小国が大国に対する場合、へりくだりながら、しかも意外なことに相手を取るという、そういうこともできる。

 だいたい大国はすべての人民をわがものとする、それだけが望みである。小国は人の隙をうかがって強いものに取り入ろうと願うだけである。

 この大国も小国も、それぞれへりくだることによって、その欲を遂げることができる。大国はへりくだることによって小国を取る。小国はへりくだることで大国に取り入る。

 もっとも偉大なる道、これはへりくだることである。謙下こそが最高の道である。)

<出典:『老子講義録 本田濟講述』読老會編 致知出版社>

 

 

 

 

へりくだる

 

 

この姿勢には、大きく二つの流れがあります。

 

 

一つは、相手を尊ぶこと

相手を持ち上げることで、相対的に自分を下位に位置付けます。

 

もう一つは、自らの弱さをさらけ出すこと

相手の位置を変えず、自らを低い位置を下げます。

 

 

 

前者、相手を尊ぶ言動

 

これは、相手に関心を持ち、話を引き出し、それを傾聴することが第一歩です。

 

人は、自分に関心を持ってくれる人に知らず知らずのうちに近寄り、親近感を覚えるものです。

 

相手に語らせる極意はまさにここにあり、聞いてあげるだけで、相手が勝手に自分の方へ近寄ってくることになります。

 

 

もし、へりくだる側が大国や大組織の長である場合、相手の小国や小組織の話を聴けば聴くほど信奉されることになるでしょう。

 

逆の立場なら、大国側が小国側に目を掛ける糸口となります。

 

いずれにせよ、相手を尊重した言動は、自らを有利にするよう働きます。

 

 

 

後者、自分の弱さをさらけ出す言動

 

これは、自分から伝えることになりますので、相手を引き付けることが前提です。

 

相手によっては、関心や同情を引き出すことができるかもしれません。

 

ただし、悩み相談のような場でない限り、一般的には残念な話や可哀そうな話を前のめりで聞き続けてくれる人は少ないものです。

 

 

 

まずは相手を尊ぶ姿勢で話を聞き

 その後に

  自分はそこに至らなさがあるなどと

   反省する姿を素直に見せるのがよいでしょう

 

 

 

 

注意すべきは、初対面で出会ってすぐに、あからさまに尊ぶ態度や自己を卑下するような言動を表すと、相手の警戒心を生む可能性があります。

 

 

 

また、立場の違いやその場面に合わせることも大切です。

 

自分が若年者なら卑下する態度を多く見せ、自分が年長者なら相手を尊んだ上で反省するような言動が望ましいでしょう。

 

 

 

自らをいくら誇っても

周囲は冷めた目でしか見ていません

 

まして味方になるようなことはありません

 

 

 

“ へりくだる ” ことは、見方を変えると相手の心情に寄り添うことでもあります。

 

 

 

 

 

日本に根付く

互いが尊重し合う文化

 

人と人との交わりを美しくし

平和な世を維持するための

貴重な習わしです