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COLUMNSブログ「論語と算盤」

自己資本 ~純資産~

2021年5月24日

純資産は、返済が不要な資金調達源です。

そのため、負債が他人資本と呼ばれるのに対して、純資産は自己資本と呼ばれます。

 

 

 純資産は、基本的に「資本金」と「繰越利益剰余金(又は繰越欠損金)」の2要因で増減します。

 (上場企業等大企業においては、自社株買いやストックオプションの付与などでも変動しますが、

  詳細な内容になるため、今回は割愛します。)

 

 まず「資本金」は、会社を設立するときに出資者がその会社に投資する金額をさします。

その後は、増資もしくは減資によって変動します。一般的には、数年に一度のイベントになります。

 

 増資は、企業の成長に伴って増加させていくことが望ましいと言えます。借金に依存しすぎることなく、 出資者を募って適時に増資して必要な資金を得るためです。

 

 減資はめったに見られませんでしたが、シャープ㈱の減資計画は話題になりました。

20155月、シャープ㈱が経営悪化を理由に減資の計画を発表したとき、多方面から批判的な意見が出て、結局断念しました。その理由は、当時の資本金1200億円を1億円に下げるという極端な金額、また連結売上高が約3兆円という事業規模から考えても不自然な資本金額になってしまうことなどから、単なる税金逃れでしかないというような意見が多くあがったためです。

 

一方、20212月には旅行代理店の㈱JTBが、約23億円の資本金を1億円にまで減資しました。実はJTBは非上場であり投資家に与える影響が少なかったこと、またコロナ禍における業績不振から観光業関連などの企業が軒並み減資していることから、やむを得ない手段として認識されたようです。

 

ちなみに、大企業が1億円まで減資するメリットは、税制上中小企業の扱いになることで、欠損金の繰越控除や税負担の軽減などで効果が見込めるためです。

 

 

 二つ目は「繰越利益剰余金」です。毎期の最終黒字について、株主への配当を行った残りの金額は、いわゆる内部留保として社内に還元されます。

この金額は会社が自分の力で創出した資金なので、自己調達と呼ばれたりします。

 

そして、純資産-株主資本-利益剰余金-その他利益剰余金の中の「繰越利益剰余金」勘定に毎期加算されていきます。

つまり、上場企業の有価証券報告書の決算書を見れば、今までどれくらいの最終黒字の積み重ねがあるかが判明するわけです。

非上場企業に於ても、決算書に必ず記載されている勘定項目です。

 

注意すべきは、最終赤字についても「マイナスの内部留保」として累積加算されることです。例えば、「資本金」10百万円で会社を設立したものの、不幸にも初年度から毎年4百万円の最終赤字を3期連続で計上した場合、「繰越利益剰余金」ではなく「繰越欠損金」勘定として累計△12百万円が計上されます。

資本金」と合算すると、純資産全体が△2百万円になります。

これが債務超過の状態です。ときどき、業績の悪い会社は借金が多くなるから債務超過になるという話を聞くかもしれませんが、借金が増えるだけなら債務超過にはなりません。純資産がマイナスになって初めて、貸借対照表の「負債」総額が「資産」総額を上回ることになり、その状態を債務超過というのです。(「負債=債務」が「資産=債権」を超過する状態)

 

 純資産は以上です。

 

 他の勘定項目は、上場企業にとって重要な項目もありますが(自社株買いの自己株式勘定や買収防衛策の関連項目など)、企業の業績を表す内容とは言えない部分もあり、また煩雑にもなるので解説は割愛します。

 

なお、次回からは損益計算書を概観する予定です。