今回から、損益計算書の構造を見ていきます。
損益計算書は、売上高、各種の費用、残った利益を明示します。
今回は、売上高と売上原価、そして両者の差額の売上総利益について触れます。
売上高は、細かく言うと、総売上高から返品による売上戻りや値引きなどを控除した「純売上高」となりますが、企業会計原則では純売上高の額を「売上高」として表記すれば良いとされています。
ただし、その企業が法務局に提出している「定款」の「目的とする事業」(通常は「第1章-第2条」に記載)からの売上(収入)を計上することになります。
ここに記載していない収入が生じたら、それは後日説明する「営業外収益」となります。
想定しなかった事業が一定規模になるのなら、「定款」を修正して「売上高」とすることが適切です。
次に、売上原価には、業種特有の勘定科目が入ってきます。
・小売業や卸売業などの場合は、売り上げた「商品」の仕入額が売上原価となります。
・製造業の場合は、「製品」と「当期製造原価」で構成されます。
当期製造原価は、材料費、労務費、外注加工費、製造経費を合算した金額に、
期首と期末の仕掛品棚卸高をそれぞれ加算減算して算出します。
・建設業の売上原価は、「完成工事原価」で示されます。
完成工事原価は、製造業同様に、材料費、労務費、外注費、経費を合算した金額に、
期首未成工事支出金を加算し、期末未成工事出金を減算して算出します。
ところで、売上原価の確定は極めて重要です。
一例として、小売業や卸売業という流通業での売上原価算出式は以下のようになります。
【売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高-期末商品棚卸高】
わかりやすく表現すると、その期の初日である期首、
例えば4月1日の商品在庫の金額に、
向こう365日間で仕入れた金額を加算し、
期末となる翌年3月31日の商品在庫の金額を減算するということです。
この計算式を用いないと売上原価は確定できません。
「いやいや、小売業は今やPOSレジが常識ですから、計算しなくても売れた数量はわかりますよ。」
というわけにはいきません。
なぜなら、POSは売れた分、つまりレジで「ピッ!」とした分は認識しますが、
万引された分までは教えてくれないのです。
例えば、ある日のペットボトルの販売について、売上原価を考えてみましょう。
閉店後、POSによると90本売れたことになっているので、
この日の売上原価は90本に仕入単価を乗じれば良い、というわけにはいきません。
開店時に30本の在庫があり、その日の入荷は80本で、
閉店後に目視で数えたところ20本残っていたのであれば、確かに売れたのは90本となります。
しかし、閉店後の目視確認で「18本しか残っていない!」というような現象が往々にしてあります。
足りない2本は万引、破損、入荷時の検品ミスなどによるものと考えられます。
売上原価には、このような万引きなどロスについても算入します。
上記の例で言えば、「売上原価」は〔92本×仕入単価〕となります。
ちなみに「売上高」は〔90本×販売単価〕です。
以上から、
〔売上高:90本×販売単価〕-〔売上原価:92本×仕入単価〕
が、売上総利益(粗利益とも呼ばれる)となります。
液体や気体、さらには微細な部品を何十万点と扱っている製造業では、目視で数えるという作業自体が困難になります。
次回は、そのような売上原価の関連事項と、原価をゆがめる行為や悪意ある操作について解説します。