今回から眼鏡業界を取り上げます。
取り上げる会社は次の4社です。
株式会社ジンズホールディングス(8月決算)
株式会社三城ホールディングス(3月決算)
株式会社ビジョナリーホールディングス(4月決算)
愛眼株式会社(3月決算)
決算月が相違していますので、「2021決算期」という表現にします。
第1回の今回は「成長力」を確認します。
取り上げる実績値は、
売上高推移、経常利益推移、総資産推移、従業員数推移です。
なお、売上高として事業規模が最大なのは、
「眼鏡市場」を展開する株式会社メガネトップ(3月決算)となります。
しかしながら、2013年にMBO(Management Buy Out)によって非公開となったため、分析データが十分に確認できないことから、残念ですが取り上げないことにしました。
各指標の中で、部分的に触れたいと思います。
また、今回の4社中で3位に位置する売上高規模の株式会社ゾフも非上場であり、取り上げません。
【売上高推移】
4社の中で売上高のトップは、ジンズHDとなります。
ジンズHDは、1988年に服飾・生活雑貨の企画・製造・販売を目的に創業されており、2021決算期が第34期となります。
2020決算期の売上高は前年を下回りましたが、直前期の2021決算期では挽回しています。
直前期におけるセグメント別でみると、国内アイウエアでは対前年比8.1%の増加であり、海外アイウエアでは同17.3%の増加となっています。
なお、コロナ感染拡大による需要の減少は、まだまだ予断を許さない状況とのことです。
2番手は、三城HDです。
三城HDは、1950年に時計・貴金属・眼鏡の販売と修理を目的に㈱三城時計店として創業されており、2021決算期が第73期となる老舗企業です。
売上高は3期連続の前年割れと低下傾向にあり、トップのジンズHDとの差が広がってきています。
直前期のセグメント別では、日本セグメントで7.1%の減少、海外セグメントでは24.2%の減少となっています。
3番手は、ビジョナリーHDです。
ビジョナリーHDは、2017年にメガネスーパーを母体として設立、JASDAQに上場したという経緯であり、2021決算期は第4期となります。
売上高は2019、2020と2期連続で伸長しましたが、2021決算期では前年割れとなりました。
中期経営計画によれば、2023年度の売上高目標は373億円とのことです。
残り2年強で、100億円以上の売上拡大が必要となります。
直前期におけるセグメント別では、小売事業で4.4%減少、卸売事業で18.6%減少、EC事業で7.6%増加、その他で17.7%の減少となっています。
ちなみに、ECと実店舗の相乗効果は高まっているとのことです。
最後に愛眼です。
愛眼は、1941年に眼鏡卸売販売の個人経営体として創業されており、2021決算期で第61期となる老舗企業です。
売上高は、3期連続で低下しており、推移をみると低下度合いがやや大きくなっています。
直前期におけるセグメント別では、眼鏡小売事業で11.8%減少、眼鏡卸売事業で14.0%減少、写真館事業で18.3%減少、海外眼鏡販売事業で32.8%と、軒並み前年割れとなっています。
なお、メガネトップの売上高の直近3期の推移は、771億円→805億円→796億円となっています。
【経常利益推移】
トップはジンズHDです。
2019決算期は大きく伸ばしましたが、続く2期連続で大きく減少してしまいました。
ちなみに、営業利益ベースのセグメント別直前実績は、国内アイウエアで17.8%の減少、海外アイウエアでは営業欠損となっています。
売上高は両セグメントとも拡大で良好でしたが、営業利益はともに厳しい状況になっています。
2番手は、ビジョナリーHDです。
2020決算期では経常欠損となりましたが、2021決算期で大きく挽回しました。
これは、小売事業セグメントにおける店舗採算性重視、つまり収益力増強の店舗展開による成果のようです。
直前期では、64店舗を退店とし、新規出店が17店舗となっています。
収益性の強い店舗に絞り込むという「選択と集中」の施策が奏功したのでしょう。
これにより、上述の小売事業セグメントの売上高は4.4%の減少となりましたが、小売事業のセグメント利益は165.4%の増加と、2.6倍の拡大となったようです。
その他のセグメントにおける利益は減少や欠損となっていますが、小売事業セグメントの収益力強化が会社全体の利益を大きく持ち上げています。
三城HDは2期連続で増加させています。
ただし、日本セグメントの営業利益は58.3%の減少、海外セグメントは欠損となっています。
以上から、全社的な本業の儲けである営業利益は1.8億円の欠損です。
為替差益と助成金による営業外収益が10億円近く生じ、営業外費用が2億円に留まったため、経常利益が6億円強になったという状況です。
愛眼は、3期連続で低下しており、直前期では経常欠損となりました。
セグメント別にみても、主力となる眼鏡小売業のセグメント損失が拡大してしまっています。
眼鏡卸売業のセグメント利益は±0であり、写真館事業と海外眼鏡販売事業ともにセグメント損失という状況です。
直前期の落ち込みは急激であり、やや気がかりです。
ちなみに、メガネトップの経常利益の直近3期の推移は、62億円→82億円→102億円と増加傾向になっています。
【総資産推移】
ジンズHDが、2期連続で拡大した後、直前期で横ばいとなりました。
直前期では、純資産が増え、負債は減っています。
三城HDは、3期連続で縮小しています。
4期連続の当期純損失となり、そのため純資産が3期連続で縮小しています。
ビジョナリーHDは3期連続の拡大です。
純資産は3期連続で拡大しています。
愛眼は3期連続の縮小です。
純資産が2期連続で縮小しています。
ちなみに、メガネトップの総資産の直近3期の推移は、697億円→755億円→816億円と拡大基調です。
【従業員数推移】
ジンズHDは、増員基調だった状態が、直前期で微減しています。
三城HDは3期連続の減少です。
ビジョナリーHDは3期連続で増員となっています。
愛眼は3期連続の減少です。
今回は以上です。
次回は、収益性の中の「利益創出力」を見ていきましょう。
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