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COLUMNSブログ「論語と算盤」

精密機械業界-5

2022年2月28日

精密機械業界の5回目です。

 

今回は、「資金力」の分析です。

 

 

取り上げる指標は、手元資金推移手元流動性比率

手元資金有利子負債カバー率総資本営業CF比率

売上高営業CF比率となります。

 

なお、各指標についての説明はこちらです。

 

 

手元資金推移

〔手元資金=現金預金+有価証券(短期保有目的)〕

 

 

 HOYAトップ3,000億円超、さらに3期連続拡大という状況です。

 

 オリンパステルモは、4期間の動きがかなり似ています

ともに2期連続で拡大させています。

 

 ニプロ3期連続の減少であり、2018.03期から3割以上減らしました

前回述べた、売上債権回収期間、棚卸資産回転期間の長さが影響していると想定します。

 

 

手元流動性比率

〔手元流動性比率=(現金・預金+有価証券)÷(年商÷365)〕

 

 

 HOYAトップ年商の6割超月商では7ヵ月分超の現金保有高です。

余りあるキャッシュとも言え、使い道投資先の探索が必要ではないでしょうか。

 

 手元資金額と同様に、テルモオリンパス同じような動きを示しています。

金額ではオリンパスが大きかったのですが、

日商ベースでは若干ながらテルモの方が多く保有している形です。

 

 ニプロ低下しています。

 

 参考までに、CCCという指標を紹介しておきます。

これは、「Cash Conversion Cycle」の頭文字で、「現金化期間」と訳されています。

仕入れし、それを販売し、再び現金として得るまでの実質的な日数を示します。

 

計算式は、〔棚卸資産回転日数+売上債権回収日数-仕入債務支払日数〕となります。

仕入れから売れるまでの在庫回転日数、そして売れてから回収するまでの債権回収日数、この両者の合計から債務支払いの猶予日数を控除して求めます。

 

ニプロの直前期では、順に、131.6日+112.6日=244.2日となり、仮に仕入債務支払期間が60日であったとしたら、CCCの値は184.2日となります。

仕入から現金化するまで6ヵ月かかるということです。

この値が長期間であるほど、売上拡大という成長期において資金需要が高まる度合いが大きくなります

 

ちなみに、米国の世界的企業であるApple、Amazon、Microsoftなどは、このCCCの値がマイナスになっています。

ビジネスモデルの違いもありますが、自社事業でキャッシュを生み出す力の差は歴然です。

 

 

手元資金有利子負債カバー率

〔手元資金有利子負債カバー率=(現金・預金+有価証券)÷有利子負債〕

 

 

 HOYA収まらないので、グラフに入れませんでした

表で示していますが、桁が二つ違うくらいのカバー率です。

現金及び現金同等物の額自体の大きさもさることながら、有利子負債が200億円強(リース債務除く)と少ないためです。

 

 テルモ上昇させており、あと一息で無借金経営になりそうです。

直前期は有利子負債が増えましたが、それ以上に現金及び現金同等物が増加しています。

 

 3番手はオリンパスです。

直前期は、有利子負債が前年比1.3倍強増加しましたが、現金及び現金同等物もほぼ同じ程度増加させています。

 

 ニプロはここでも低下傾向となっています。

手元資金は見てきたように減少しており、有利子負債も減少させています。

縮小均衡から逃れるためには、やはりキャッシュフローの改善がポイントと感じます。

 

 

総資本営業CF比率

〔総資本営業CF比率=営業CF÷総資本〕

 

 

 総資本を活用してキャッシュを生み出す力、

ここでもHOYAダントツです。

ただし、直前期では低下しました。

 

 2番手はオリンパスです。

手元資金は拡大しましたが、総資本対比の営業CFは低下しています。

負債を中心に総資本が増大しており営業CFも前年より減少しています。

 

 続いてテルモであり、若干ながら低下しています。

営業CFを増やしていますが、総資本の増大割合の方が少々大きくなりました。

自己資本比率は高まっており、負債ではなく自己資本の増大によるものです。

 

 ニプロ直前期でかなり上昇させました。

総資本が8%弱増大しましたが、営業CFは前年比で1.7倍以上と大きく伸ばしました

これは、前年が当期純損失(最終赤字)だったのに対して、直前期が最終黒字になったことが大きく影響しています。

 

 

売上高営業CF比率

〔売上高営業CF比率=営業CF÷売上高〕

 

 

 トップのHOYAは、先ほどの総資本比率が概ね低下傾向であったのに対し、この売上高比率でみると概ね上昇傾向と映ります。

 

 2番手はテルモとなり、先ほどの総資本比率が低下傾向であったのに対して、やはり上昇傾向と映ります。

 

 オリンパス3位となります。

推移は先ほどの総資本比率と同じ様相です。

 

 ニプロ総資本比率とほぼ同じようなグラフの形状ですが、上昇割合は6ポイント強と大きくなっています。

 

 

今回、特に気になったのは、ニプロです。

キャッシュフローの動向について、

前回も触れましたが、やはり気になります。

 

 

今回は以上です。

 

次回は、「投資力」を見ていきましょう。

 

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