精密機械業界の5回目です。
今回は、「資金力」の分析です。
取り上げる指標は、手元資金推移、手元流動性比率、
手元資金有利子負債カバー率、総資本営業CF比率、
売上高営業CF比率となります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【手元資金推移】
〔手元資金=現金預金+有価証券(短期保有目的)〕
HOYAがトップで3,000億円超、さらに3期連続拡大という状況です。
オリンパスとテルモは、4期間の動きがかなり似ています。
ともに2期連続で拡大させています。
ニプロは3期連続の減少であり、2018.03期から3割以上減らしました。
前回述べた、売上債権回収期間、棚卸資産回転期間の長さが影響していると想定します。
【手元流動性比率】
〔手元流動性比率=(現金・預金+有価証券)÷(年商÷365)〕
HOYAがトップ、年商の6割超、月商では7ヵ月分超の現金保有高です。
余りあるキャッシュとも言え、使い道、投資先の探索が必要ではないでしょうか。
手元資金額と同様に、テルモとオリンパスが同じような動きを示しています。
金額ではオリンパスが大きかったのですが、
日商ベースでは若干ながらテルモの方が多く保有している形です。
ニプロは低下しています。
参考までに、CCCという指標を紹介しておきます。
これは、「Cash Conversion Cycle」の頭文字で、「現金化期間」と訳されています。
仕入れし、それを販売し、再び現金として得るまでの実質的な日数を示します。
計算式は、〔棚卸資産回転日数+売上債権回収日数-仕入債務支払日数〕となります。
仕入れから売れるまでの在庫回転日数、そして売れてから回収するまでの債権回収日数、この両者の合計から債務支払いの猶予日数を控除して求めます。
ニプロの直前期では、順に、131.6日+112.6日=244.2日となり、仮に仕入債務支払期間が60日であったとしたら、CCCの値は184.2日となります。
仕入から現金化するまで6ヵ月かかるということです。
この値が長期間であるほど、売上拡大という成長期において、資金需要が高まる度合いが大きくなります。
ちなみに、米国の世界的企業であるApple、Amazon、Microsoftなどは、このCCCの値がマイナスになっています。
ビジネスモデルの違いもありますが、自社事業でキャッシュを生み出す力の差は歴然です。
【手元資金有利子負債カバー率】
〔手元資金有利子負債カバー率=(現金・預金+有価証券)÷有利子負債〕
HOYAは収まらないので、グラフに入れませんでした。
表で示していますが、桁が二つ違うくらいのカバー率です。
現金及び現金同等物の額自体の大きさもさることながら、有利子負債が200億円強(リース債務除く)と少ないためです。
テルモは上昇させており、あと一息で無借金経営になりそうです。
直前期は有利子負債が増えましたが、それ以上に現金及び現金同等物が増加しています。
3番手はオリンパスです。
直前期は、有利子負債が前年比1.3倍強増加しましたが、現金及び現金同等物もほぼ同じ程度増加させています。
ニプロはここでも低下傾向となっています。
手元資金は見てきたように減少しており、有利子負債も減少させています。
縮小均衡から逃れるためには、やはりキャッシュフローの改善がポイントと感じます。
【総資本営業CF比率】
〔総資本営業CF比率=営業CF÷総資本〕
総資本を活用してキャッシュを生み出す力、
ここでもHOYAがダントツです。
ただし、直前期では低下しました。
2番手はオリンパスです。
手元資金は拡大しましたが、総資本対比の営業CFは低下しています。
負債を中心に総資本が増大しており、営業CFも前年より減少しています。
続いてテルモであり、若干ながら低下しています。
営業CFを増やしていますが、総資本の増大割合の方が少々大きくなりました。
自己資本比率は高まっており、負債ではなく自己資本の増大によるものです。
ニプロは直前期でかなり上昇させました。
総資本が8%弱増大しましたが、営業CFは前年比で1.7倍以上と大きく伸ばしました。
これは、前年が当期純損失(最終赤字)だったのに対して、直前期が最終黒字になったことが大きく影響しています。
【売上高営業CF比率】
〔売上高営業CF比率=営業CF÷売上高〕
トップのHOYAは、先ほどの総資本比率が概ね低下傾向であったのに対し、この売上高比率でみると概ね上昇傾向と映ります。
2番手はテルモとなり、先ほどの総資本比率が低下傾向であったのに対して、やはり上昇傾向と映ります。
オリンパスは3位となります。
推移は先ほどの総資本比率と同じ様相です。
ニプロも総資本比率とほぼ同じようなグラフの形状ですが、上昇割合は6ポイント強と大きくなっています。
今回、特に気になったのは、ニプロです。
キャッシュフローの動向について、
前回も触れましたが、やはり気になります。
今回は以上です。
次回は、「投資力」を見ていきましょう。
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