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COLUMNSブログ「論語と算盤」

精密機械業界-4

2022年2月24日

精密機械業界の4回目です。

 

今回は、「資本活用力」の分析です。

 

 

取り上げる指標は、総資本回転率売上債権回転期間

棚卸資産回転期間流動比率自己資本比率となります。

 

なお、各指標についての説明はこちらです。

 

 

総資本回転率

〔総資本回転率=売上高÷総資本〕

 

 

 HOYA最高値です。

ただし、3期連続の低下となっています。

分母となる総資本が、分子となる売上高以上の伸長率で積み上がっている状況です。

 

 僅差で2位はオリンパスです。

こちらも、2期連続で低下しており、その度合いは比較的大きくなっています。

売上高は直近2期とも4%前後低下したのに対し、総資本は109.0%、116.3%と大きく伸びています。

 

 3位のニプロは、唯一3期連続で上昇させています。

売上高は3期連続の拡大であり、これも4社中唯一です。

そして総資本はそれほど増やしていません

 

 テルモ3期連続の低下です。

こちらも売上高以上の総資本伸長率となっています。

 

 

売上債権回収日数

〔売上債権回収日数=売上債権残高÷日商(売上高÷365)〕

 

 

 テルモが1位で最短期間です。

70日台で安定した推移となっています。

 

 2位はHOYAであり、この4期では最長期間になってしまいました。

 

 続いてオリンパスですが、やはり直前期が最長となりました。

 

 ニプロかなり長期間になっています。

直近では大きく短縮させましたが、それでも4ヶ月近くです。

営業キャッシュフロー創出要因の中心指標のひとつなので、現状のままのレベルで中計「2030年に1兆円企業」に進んで行くのなら、資金面の窮屈感がかなり高まりそうです。

 

 ところで、4社のこの指標は、最短がテルモの2.5ヵ月程度と、通常で考えると長すぎないかと気になります。

門外漢で知見が不足していますが、保険給付の影響などのせいでしょうか。

 

 

棚卸資産回転日数

〔棚卸資産回転日数=棚卸資産残高÷日商(売上高÷365)〕

 

 

 HOYA最小であり、加えて安定した推移です。

在庫管理についても厳しくマネジメントされているように映ります。

 

 続いてオリンパスですが、HOYAとの差は1ヵ月弱と結構乖離しています。

 

 テルモ直前期で100日を超えさらに上昇傾向となっています。

 

 ニプロこの指標も相当長期になっています。

この指標も営業キャッシュフロー創出の中心指標です。

売上高拡大に伴う収益向上に向けた力強さは伝わりますが、キャッシュ・マネジメントへの関心はやや薄い様子です。

売上高の成長につれて資金需要が高まり、その結果資本コストが増して利益を圧迫することが心配です。

 

 

流動比率

〔流動比率=流動資産÷流動負債〕

 

 

 4社とも100%を充分超過しており、安心できる状態です。

 

 その中でもHOYA400%超と大変高いレベルです。

「現金及び現金同等物」流動資産全体の6割程度を占めており、それだけで十分に流動負債を賄っています。

 

 テルモ200%中盤と充分です。

直前期の「現金及び現金同等物」は、流動資産全体の4割弱となっており、流動負債とほぼ同額という状態です。

 

 続くオリンパスは、直前期で上昇させました。

上昇した要因は「現金及び現金同等物」の増加であり、前年対比で1.3倍程度になっています。

その結果、流動資産に占める割合は4割弱まで高まりました。

 

 ニプロはほぼ横ばいです。

直前期には流動資産、流動負債が共に減少しました。

現金及び預金」は、流動資産全体の2割強となっています。

 

 

自己資本比率

〔自己資本比率=自己資本÷総資本〕

 

 

 HOYA80%前後で推移しており、極めて高いレベルです。

このレベルでも、2回目で見た当期純利益率が22.9%であることから、前回3回目で見たROEが18.2%程度と高いレベルになっているわけです。

現在は最強の収益力・財政状況と言えます。

 

 テルモは、3期連続で60%台と、こちらも相当に高いレベルです。

当期純利益率は12.6%であり十分と言えますが、ROEは5.7%とやや低めになっています。

その理由は、この自己資本比率の高さ故とも言えます。

 

 オリンパス33.4%であり、総資本の1/3が自己資本というイメージです。

直前2期は負債が増加しており、低下傾向になっています。

ROEへの影響では、当期純利益率が4社中最下位の1.8%となったため、ROEも4社中最下位の3.3%に留まっており、自己資本比率低下の効果は生み出せていません。

 

 ニプロ20%弱となっており、低めです。

当期純利益率が3.3%でありながら、ROEが8.8%まで上昇した一因になっています。

 

 

今回、特に気になったのは、やはりHOYAです。

財務諸表の結果は、他の業界と比較しても最上位クラスです。

前回述べたように、今後の投資が将来を左右するカギとなるでしょう。

 

また、ニプロ売上債権と在庫の多さが気になります。

他の3社との比較でこれだけ多く(長期間)なっているということは、

翻って、何らかの工夫の余地があるのではないかと思われます。

 

今回は以上です。

 

次回は、「資金力」を見ていきましょう。

 

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