貨物運送業界の3回目です。
今回は「稼ぐ力」です。
指標は、EBITDA、EBITDAマージン、ROEの3つです。
まずは、EBITDA。
〔EBITDA=営業利益+償却費〕
売上規模の大きい日本通運がトップです。
直近ではヤマトHDが急増させたため、ほぼ並んでいます。
下表に、EBITDAの内訳を表します。
上段が2020.03決算期、下段が2021.03決算期です。
この表からは、SGHDの償却額が金額的にも比率的にも小さいこと、
一方、日立物流の償却費の比率が相対的に大きいことがわかります。
SGHDは営業利益額ではトップでしたが、上記のことから、EBITDAでは3番手です。
日立物流のEBITDAそのものには、金額的にも推移的にも大きな特徴は感じられません。
ただし、前回見たように、
売上高総利益率(粗利率)は№1、その勢いもあり営業利益率も№2です。
それだけの営業利益に、償却費が加わったわけです。
そして注目すべきは、次のEBITDAマージンです。
〔EBITDAマージン=EBITDA÷売上高〕
日立物流の直近2期におけるEBITDAマージンのレベルは群を抜いています。
日立物流は、今まで見てきた各指標では、あまり高い位置にありませんでした。
しかし実は、売上高に対する、大きな「稼ぐ力」が隠れているのです。
続いて、SGHDが売上高営業利益率の高さをもとに、2番手につけています。
そして、ヤマトHD、日本通運と続きます。
最後に、ROEです。
〔ROE=親会社株主に帰属する当期純利益
÷{純資産-(新株予約権+非支配株主持分)}〕
SGHDが20%に届かんばかりの勢いです。
グラフを見てもわかるように、もともと高いレベルに位置しており、
直前期では当期純利益を1.5倍超に増やしたことも急上昇の要因です。
2番手は日立物流であり、今回のテーマの「稼ぐ力」では存在感を示しています。
こちらも元々10%超と高いレベルにありました。
直前期の当期純利益の上昇は5%強程度ですが、
分母となる純資産(親会社株主持分)を
前期比で2/3に減少させたことが大きく影響しています。
これは、1,000億円近くの自社株買いの実施によるものです。
日立物流は、2022.03決算期におけるROE目標を12.7%としていますが、
直前期(2021.03決算期)並みの当期純利益を計上できれば
十分達成できる状態です。
3番手はヤマトHD、4番手は僅差で日本通運となります。
両社とも直前期で急上昇させ、10%台に乗せようとする勢いです。
ヤマトHDは、分母の純資産も拡大しましたが、
なんといっても当期純利益が2.5倍超となったことが大きく影響し、
グラフは急上昇を描いています。
日本通運は、分母の純資産は微増傾向ですが、
当期純利益が乱高下しているために、ROEのグラフも上下動が激しくなっています。
当年度(2022.03期)に悪化しないと良いのですが・・・。
なお、日本通運は2038年に創立100周年を迎えます。
そこに向けて、
2024.03期にROE=10%、2029年には10%超、2038年も10%超というように、
中間目標を設定しています。
今回はここまでです。
次回は、「資本活用力」を確認します。
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