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COLUMNSブログ「論語と算盤」

貨物運送業界-1

2021年11月29日

今回からは、貨物運送業界です。

 

 2021年決算における売上高ベスト4の会社ですが、

2位の日本郵政については、事業が多様であることから除きます。

 

          日本通運株式会社

          ヤマトホールディングス株式会社

          SGホールディングス株式会社 (旧佐川急便㈱)

          株式会社日立物流

 

 

 今回、日立物流がIFRS(国際財務報告基準)となっています。

 このことにより、経常利益を用いていた指標については、営業利益で算出しています。

 

 なお、SGHDと日立物流は資本業務提携の間柄です。

 

 

1回となる今回は、「成長力」を見てみましょう。

 

 

 まず、売上高の推移です。

 

 

日本通運と日立物流は直近2期連続で前年割れであり、

ヤマトHDとSGHDは、逆に2期連続の増収となっています。

 

 

・日本通運の減収は、ひとえに新型コロナウイルスの影響とのことです。

 

・ヤマトHDの増収は、主として成長が加速するEC領域に対応した結果、

荷物の取扱数量が増加したとのことです。

 

・SGHDの増収は、

   デリバリー事業では、EC市場の拡大で宅配便個数は拡大したものの、

サイズが小さくなったため、平均単価は微増に留まったようです。

   他方、ロジスティクス事業において、

緊急国際輸送の受託下期の輸送量拡大

海上や航空のフォワーディング収益の拡大が大きかったとのことです。

 

・日立物流の減収は、新型コロナから復元しつつあるものの、

まだ過去のレベルに戻せていないとのこととです。

 

 

 続いて、営業利益額の推移を見てみましょう。

 

 

 4社とも直前期で拡大させています。

ヤマトHDは前年比200%超と大きく、

日本通運とSGHD130%超、日立物流もほぼ120%と、

それぞれ高い伸び率を見せています。

 

・トップの営業利益額であるSGHDは、

直前期で原価や販管費が一定額増えているものの、

売上高の伸び率が大きかったことが好影響を与えています。

 

・2番手のヤマトHDは、やはり原価や販管費は増えていますが、

  「荷物の取扱数量が増加する中、データ分析に基づく

     経営資源の最適配置による集配効率の向上や幹線輸送、

        仕分け作業の効率化推進により

費用の適正化に努めたことなど」によって、

営業利益を大きく増大させたとのことです。

 

・続く日本通運は、傭車下請費や燃油費の減少により、原価を下げました

   販管費は増したものの、

航空貨物の取扱数量の増加などが影響し、営業利益を拡大させています。

 

・日立物流は、

フォワーディング事業の収益性向上コスト削減によるものとされています。

 

 

 次は、総資産額の推移です。

 

 

日本通運は直前期で増加しました。

 純資産としては内部留保の増加、

そして負債では、買掛金、コマーシャル・ペーパー、社債の増加がありました。

 資産としては、現金預金、売掛金、

投資有価証券、無形固定資産が増加しています。

 

ヤマトHDは直前期で減少しました。

 純資産では内部留保の増加、負債では借入金の減少をそれぞれ中心とし、

 両者の合算で減少しました。

 資産としては、現金預金を拡大する一方、

ヤマトリース株式会社を連結の範囲から除外したことに伴う

債権および各種資産の減少の影響がそれを上回っています。

 

SGHDの直前期は微増です。

 純資産では、内部留保で増えたものの、

佐川急便㈱の株式追加取得や配当による減少がありました。

 負債では、流動負債が仕入債務や未払法人税等による増加、

固定負債は有利子負債削減による減少という動きがありました。

 資産は、売上債権の増加、機械設備や土地の購入がありました。

 

日立物流は10%以上減少しています。

 資本の部(IFRS)では、

     SGHD及び佐川急便㈱との資本業務提携の関係で

自己株式が増加したことを主因に減少しました。

 負債では、流動・非流動負債とも、

売建プット・オプションの行使可能日の見直しを主因として減少しています。

 資産では、流動資産で現金及び現金同等物が減少し、

非流動資産は会計処理の変更等で減少しています。

 

 

 最後に、従業員数の推移です。

 

 

 ヤマトHDは、臨時雇用者の記載はありませんが、

それを考慮しても圧倒的な人数です。

一軒一軒への宅配事業の先導企業として、きめ細かい対応を行うためなのでしょう。

 

 

 総じて、大きな変化は無いように見えますが、

運送業界は人手不足感が高まってきています。

 

表を見ると、SGHDのみ増えていますが、その増加率は小さくなってきています。

また、他の3社は直近で減少しています。

 

 

あまり不足してくると、ドライバーの賃金の上昇も高まるでしょう。

ECによる配達量の増加とともに、物流費用の上昇が想定されてきています。

 

 

 

今回は以上です。

 

次回は、売上高利益率を中心とした、

利益創出力」を見ます。

 

 

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