今回からは、貨物運送業界です。
2021年決算における売上高ベスト4の会社ですが、
第2位の日本郵政については、事業が多様であることから除きます。
日本通運株式会社
ヤマトホールディングス株式会社
SGホールディングス株式会社 (旧佐川急便㈱)
株式会社日立物流
今回、日立物流がIFRS(国際財務報告基準)となっています。
このことにより、経常利益を用いていた指標については、営業利益で算出しています。
なお、SGHDと日立物流は資本業務提携の間柄です。
第1回となる今回は、「成長力」を見てみましょう。
まず、売上高の推移です。
日本通運と日立物流は直近2期連続で前年割れであり、
ヤマトHDとSGHDは、逆に2期連続の増収となっています。
・日本通運の減収は、ひとえに新型コロナウイルスの影響とのことです。
・ヤマトHDの増収は、主として成長が加速するEC領域に対応した結果、
荷物の取扱数量が増加したとのことです。
・SGHDの増収は、
デリバリー事業では、EC市場の拡大で宅配便個数は拡大したものの、
サイズが小さくなったため、平均単価は微増に留まったようです。
他方、ロジスティクス事業において、
緊急国際輸送の受託や下期の輸送量拡大、
海上や航空のフォワーディング収益の拡大が大きかったとのことです。
・日立物流の減収は、新型コロナから復元しつつあるものの、
まだ過去のレベルに戻せていないとのこととです。
続いて、営業利益額の推移を見てみましょう。
4社とも直前期で拡大させています。
ヤマトHDは前年比200%超と大きく、
日本通運とSGHDが130%超、日立物流もほぼ120%と、
それぞれ高い伸び率を見せています。
・トップの営業利益額であるSGHDは、
直前期で原価や販管費が一定額増えているものの、
売上高の伸び率が大きかったことが好影響を与えています。
・2番手のヤマトHDは、やはり原価や販管費は増えていますが、
「荷物の取扱数量が増加する中、データ分析に基づく
経営資源の最適配置による集配効率の向上や幹線輸送、
仕分け作業の効率化推進により
費用の適正化に努めたことなど」によって、
営業利益を大きく増大させたとのことです。
・続く日本通運は、傭車下請費や燃油費の減少により、原価を下げました。
販管費は増したものの、
航空貨物の取扱数量の増加などが影響し、営業利益を拡大させています。
・日立物流は、
フォワーディング事業の収益性向上やコスト削減によるものとされています。
次は、総資産額の推移です。
・日本通運は直前期で増加しました。
純資産としては内部留保の増加、
そして負債では、買掛金、コマーシャル・ペーパー、社債の増加がありました。
資産としては、現金預金、売掛金、
投資有価証券、無形固定資産が増加しています。
・ヤマトHDは直前期で減少しました。
純資産では内部留保の増加、負債では借入金の減少をそれぞれ中心とし、
両者の合算で減少しました。
資産としては、現金預金を拡大する一方、
ヤマトリース株式会社を連結の範囲から除外したことに伴う
債権および各種資産の減少の影響がそれを上回っています。
・SGHDの直前期は微増です。
純資産では、内部留保で増えたものの、
佐川急便㈱の株式追加取得や配当による減少がありました。
負債では、流動負債が仕入債務や未払法人税等による増加、
固定負債は有利子負債削減による減少という動きがありました。
資産は、売上債権の増加、機械設備や土地の購入がありました。
・日立物流は10%以上減少しています。
資本の部(IFRS)では、
SGHD及び佐川急便㈱との資本業務提携の関係で
自己株式が増加したことを主因に減少しました。
負債では、流動・非流動負債とも、
売建プット・オプションの行使可能日の見直しを主因として減少しています。
資産では、流動資産で現金及び現金同等物が減少し、
非流動資産は会計処理の変更等で減少しています。
最後に、従業員数の推移です。
ヤマトHDは、臨時雇用者の記載はありませんが、
それを考慮しても圧倒的な人数です。
一軒一軒への宅配事業の先導企業として、きめ細かい対応を行うためなのでしょう。
総じて、大きな変化は無いように見えますが、
運送業界は人手不足感が高まってきています。
表を見ると、SGHDのみ増えていますが、その増加率は小さくなってきています。
また、他の3社は直近で減少しています。
あまり不足してくると、ドライバーの賃金の上昇も高まるでしょう。
ECによる配達量の増加とともに、物流費用の上昇が想定されてきています。
今回は以上です。
次回は、売上高利益率を中心とした、
「利益創出力」を見ます。
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