自動車業界の最終回、6回目です。
今回は「投資力」です。
実は、前回の5回目にやりすぎました。
前回の「営業CF対投資CF」およびそれ以降の各社の分析結果は、
今回やるべきでした。
よって今回はややさみしくなります。
指標は、ROICとWACCの2つです。
まず、ROICです。
〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕
トヨタとホンダは比較的安定した推移に見えますが、
2018決算期と比較すると、結構落ちています。
日産とスズキは、かなりの低下傾向が見て取れます。
日産は2期連続の営業欠損であり、
2021年度(2022決算期)に期待することになります。
スズキは2020決算期に半減しており、直近の2021決算期ではさらに悪化させました。
ところで、日産を除く3社は3~4%あたりに集約しているように見えます。
この水準は決して高いものではなく、むしろ低すぎます。
ROICの意味は、計算式からもわかりますが、概ね次のような意味です。
「自己資本と有利子負債という、事業に投資した資金で、
本業の利益をどれだけ生み出せたか」
いわば、投資とリターンの関係とも言えます。
ちなみに「本業の利益」は、営業利益から不可避な経費として法人税等を控除します。
この値が3~4%というわけですが、
問題になるのが、純資産と有利子負債にかかる資本コストです。
資本コストとは、資金調達にかかるコストです。
純資産では、株主が期待するリターンであり、
例えば配当金のレベルなど、調達コストに何%費やしているのかということです。
有利子負債はわかりやすく、利子率は何%なのかということです。
以上の株主資本のコストと有利子負債のコストを加重平均することで、
資本コストを算出します。
もしもこの値が、ROICを上回ってしまう場合、
ROICで確認した事業運営の成果よりも
事業運営に投じたコストの方が高い、ということになります。
この比較は、WACCで確認することになります。
WACCの詳しい説明は、建設業界-6をご参照ください。
〔WACC=株主資本コスト×{ 株主資本÷(株主資本+有利子負債)}
+負債コスト(1-実効税率)×{ 有利子負債÷(株主資本+有利子負債)}〕
ご覧のように、やはり4社とも資本コストの方がROICを上回っています。
現状では、資本を調達した分の成果は生まれておらず、
逆に調達にかかったコストの方が大きくなっているという状況です。
自動車業界は、広い意味での収益獲得が厳しくなってきており、
加えて、業界全体が変革の波にさらされています。
今後の動向には注意が必要となります。
以上で、自動車業界を終了します。
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