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COLUMNSブログ「論語と算盤」

自動車業界-5

2021年11月22日

自動車業界の5回目です。

 

今回は「資金力」です。

 

 

 指標は、手元資金推移手元流動性比率

       手元資金有利子負債カバー率総資本営業CF比率

     売上高営業CF比率営業CF対投資CF比率

4社の営業CFと投資CFの推移となります。

 

 

 まずは、手元資金推移です。

 

〔手元資金=現金預金+有価証券(短期保有目的)〕

 

 トヨタが、その経営規模からしても最大です。

 直近で、現金預金を1兆円強、有価証券を2兆円強増やしています。

 

 調達側を見ると、純資産(親会社所有者帰属持分資本)が2.7兆円ほど増えており、さらに長期・短期の有利子負債も4兆円強増えています。

 

ダイナミックな財政の動きです。

 

 ホンダと日産は、この3期連続で増加しています。

 

 スズキは、直前期において倍増しました。

現預金が5,000億円強増加しており、調達側では純資産で2,000億円強の増加、有利子負債で3,670億円ほどの増加となっています。

 

 

 続いて、手元流動性比率です。

 

〔手元流動性比率=(現金・預金+有価証券)÷(年商÷365)〕

 

 先ほどの手元資金推移からも読めるように、4社とも増加傾向です。

 

直近では、特にトヨタとスズキが急上昇しており、

ともに月商の4ヶ月分以上となっています。

 

 

 次は、手元資金有利子負債カバー率です。

 

〔手元資金有利子負債カバー率=(現金・預金+有価証券)÷有利子負債〕

 

 この値が、100%を超えると実質無借金経営となります。

 

 スズキが突出しています。

上述したように、有利子負債を増やしながらも

実質無借金経営の状態を維持しています。

 

 他の3社については、

上場企業の半数が実質無借金経営と言われる昨今、比較的低めの状態です。

 

 

 

 続いて、総資本営業CF比率です。

 

〔総資本営業CF比率=営業CF÷総資本〕

 

 総資本からどれだけの営業CFを生み出しているかという指標です。

 

 ここでもスズキの値が高くなっています。

2020決算期では落としましたが、直近ではまた10%以上に戻しています。

 

 続いて、日産が8%程度で安定的な推移を見せています。

 

 トヨタは低下傾向であり、ホンダもそれほどは高くありません。

 

 

 次は、売上高営業CF比率です。

 

〔売上高営業CF比率=営業CF÷売上高〕

 

 売上高からどれだけの営業CFを生み出しているかという指標です。

 

日産が上昇傾向で、最大の値です。

 

続いてスズキです。

 

トヨタは何とか10%台に戻しており、ホンダも上昇傾向です。

 

 

 

 続いて、営業CF対投資CFです。

 

〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕

 

 

 100%以上の値なら、営業CFで投資CFを賄っていることになります。

 

 トヨタは直前期に投資を増やしたため、4社中唯一100%以下となっています。

 だからと言って悪いわけではなく、必要な時には必要な投資を行い、業績の向上を図るべきです。

 

もちろん、毎期この値が100%以下となるなら、

それなりに資金的には苦しくなります。

 

 例外的に、米国企業、特にネットフリックスなどは常に多大な投資を行っていました。

将来性が見込まれ、投資家等からの資金調達が可能だったからこそです。

 

 

 次は、各社の営業CFと投資CFの推移です。

 

まずはトヨタです。

 

 営業CFが減少している中、直前期では投資CFを倍増させました。

ただし、中身は定期預金の増額がかなりの割合を占めています。

 

 

次は、日産です。

 

 投資CF2期連続で減少しています。

前述したように営業CFは増えており、

結果FCF(フリー・キャッシュフロー)が増加しています。

自ずと手元流動性は高まります

 

 

ホンダです。

 

 この4期は、営業CFの増減に合わせた投資CFの動きになっている感じです。

よって、FCF(フリー・キャッシュフロー)が安定しているように映ります。

 

 

スズキです。

 

 直前期では営業CFを増加させましたが、投資CFはやや控えています。

その影響もあり、

手元流動性有利子負債カバー率が相当良化したものと判断されます。

 

 

今回は以上です。

 

次回は、「投資力」に着目します。

 

 

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