自動車業界の5回目です。
今回は「資金力」です。
指標は、手元資金推移、手元流動性比率、
手元資金有利子負債カバー率、総資本営業CF比率、
売上高営業CF比率、営業CF対投資CF比率、
4社の営業CFと投資CFの推移となります。
まずは、手元資金推移です。
〔手元資金=現金預金+有価証券(短期保有目的)〕
トヨタが、その経営規模からしても最大です。
直近で、現金預金を1兆円強、有価証券を2兆円強増やしています。
調達側を見ると、純資産(親会社所有者帰属持分資本)が2.7兆円ほど増えており、さらに長期・短期の有利子負債も4兆円強増えています。
ダイナミックな財政の動きです。
ホンダと日産は、この3期連続で増加しています。
スズキは、直前期において倍増しました。
現預金が5,000億円強増加しており、調達側では純資産で2,000億円強の増加、有利子負債で3,670億円ほどの増加となっています。
続いて、手元流動性比率です。
〔手元流動性比率=(現金・預金+有価証券)÷(年商÷365)〕
先ほどの手元資金推移からも読めるように、4社とも増加傾向です。
直近では、特にトヨタとスズキが急上昇しており、
ともに月商の4ヶ月分以上となっています。
次は、手元資金有利子負債カバー率です。
〔手元資金有利子負債カバー率=(現金・預金+有価証券)÷有利子負債〕
この値が、100%を超えると実質無借金経営となります。
スズキが突出しています。
上述したように、有利子負債を増やしながらも、
実質無借金経営の状態を維持しています。
他の3社については、
上場企業の半数が実質無借金経営と言われる昨今、比較的低めの状態です。
続いて、総資本営業CF比率です。
〔総資本営業CF比率=営業CF÷総資本〕
総資本からどれだけの営業CFを生み出しているかという指標です。
ここでもスズキの値が高くなっています。
2020決算期では落としましたが、直近ではまた10%以上に戻しています。
続いて、日産が8%程度で安定的な推移を見せています。
トヨタは低下傾向であり、ホンダもそれほどは高くありません。
次は、売上高営業CF比率です。
〔売上高営業CF比率=営業CF÷売上高〕
売上高からどれだけの営業CFを生み出しているかという指標です。
日産が上昇傾向で、最大の値です。
続いてスズキです。
トヨタは何とか10%台に戻しており、ホンダも上昇傾向です。
続いて、営業CF対投資CFです。
〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕
100%以上の値なら、営業CFで投資CFを賄っていることになります。
トヨタは直前期に投資を増やしたため、4社中唯一100%以下となっています。
だからと言って悪いわけではなく、必要な時には必要な投資を行い、業績の向上を図るべきです。
もちろん、毎期この値が100%以下となるなら、
それなりに資金的には苦しくなります。
例外的に、米国企業、特にネットフリックスなどは常に多大な投資を行っていました。
将来性が見込まれ、投資家等からの資金調達が可能だったからこそです。
次は、各社の営業CFと投資CFの推移です。
まずはトヨタです。
営業CFが減少している中、直前期では投資CFを倍増させました。
ただし、中身は定期預金の増額がかなりの割合を占めています。
次は、日産です。
投資CFは2期連続で減少しています。
前述したように営業CFは増えており、
結果FCF(フリー・キャッシュフロー)が増加しています。
自ずと手元流動性は高まります。
ホンダです。
この4期は、営業CFの増減に合わせた投資CFの動きになっている感じです。
よって、FCF(フリー・キャッシュフロー)が安定しているように映ります。
スズキです。
直前期では営業CFを増加させましたが、投資CFはやや控えています。
その影響もあり、
手元流動性や有利子負債カバー率が相当良化したものと判断されます。
今回は以上です。
次回は、「投資力」に着目します。
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