家電量販業界の4回目です。
資本回転率の側面から収益性を測ります。
最初は総資本回転率です。
経営に投下した総資本(自己資本+他人資本)の
何倍の売上高を上げたかを示します。
よって、資本活用の効率性の優劣が表されることになります。
〔総資本回転率=売上高÷総資本〕
直近では、エディオンが最も良好な値を示しています。
ヤマダHDは最も回転率が小さくなっています。
ただし、売上高の規模が大きくなると、累積する内部留保(繰越利益剰余金)や固定資産、金融債権などが必然的に大きくなりがちで、市場が成熟していると売上高も伸びづらく、やむを得ない状況なのかも知れません。
ビックカメラは、前年までかなり良好でしたので、直近の業績低下が残念です。
ケーズHDも相対的に良好な値であり、また上昇傾向で推移しています。
続いて、資本回転率の良悪に影響する
売上債権回収期間と棚卸資産回転期間を確認します。
まずは売上債権回収期間です。
これは、日数が小さいほど売掛金などの残高が少ないことを意味し、一般的には良好とみなされます。
そして、資金繰りについても、日数が小さいほど楽になります。
〔売上債権回収日数=売上債権残高÷日商(売上高÷365)〕
各社、大なり小なり長期化の傾向にあります。
長期化するということは、
売上高の増減率以上の割合で売上債権の残高が増減していることになり、
ひいては資本回転率を悪化させる要因になります。
通常、売掛金は法人取引の発生に伴って生じると考えられますが、近年普及している電子マネーの影響も徐々に大きくなってくると想定されます。
長期化は好ましくはないものの、小売業であることからBtoB中心の企業に比べると短期間であり、問題視するほどのことではないと考えられます。
次は棚卸資産回転期間です。
こちらも日数が小さいほど在庫が少なく、そしてその分資金繰りが楽であることを示します。
〔棚卸資産回転日数=棚卸資産残高÷日商(売上高÷365)〕
ヤマダHDは相対的に長期になっており、月商の3ヶ月弱分の在庫を抱えています。
ビックカメラとエディオンが45日前後(月商の約1.5ヶ月分)、
ケーズHDが2ヶ月分強となっています。
直近では、エディオンが若干長期化しましたが、
総じて大きな悪化(在庫増大)は見られません。
続いて、流動比率です。
通常、流動比率は短期の安全性指標の代表格ですが、ここでは資本活用という視点から取り上げます。
短期(1年間)で支払うべき流動負債を、
短期で現金化する流動資産で賄えているかという指標です。
値は100%以上が必須となり、不足する場合は短期の資金繰りが危惧されます。
〔流動比率=流動資産÷流動負債〕
各社100%以上で全く問題ないのですが、ビックカメラとケーズHDは良化、
ヤマダHDとエディオンは悪化しています。
ビックカメラが急改善していますが、これは流動資産が拡大したせいであり、
主因は現金・預金の急増です。
現金・預金の増大理由は、在庫削減等の営業キャッシュ・フローの改善もありますが、最大の要因は財務キャッシュ・フロー、中でも長期借入金の増額です。
よって、流動比率が良くなりましたが、固定負債が増えたことから、次に示す自己資本比率が悪化してしまいました。
最後に、自己資本比率です。
こちらも、長期の安全性指標の代表格ですが、
資本の有効活用という視点から取り上げています。
この比率の意味は、自己資本と他人資本を合計した総資本のうち、
自己資本の比率がどれくらいかを表します。
通常、この比率が高いほど、返済不要の自己資本が多いということになり、経営が盤石で安定的と認識されます。
ただし上場企業の場合、借入を行って事業を拡大させる(レバレッジ効果)方が一株当たりの収益が高まることから、株主の賛同を得やすくなると想定されます。
また、結果的に利益が拡大すれば、
ROEの値を押し上げることにつながるためなおさらです。
このあたりのさじ加減は各社各様でしょう。
〔自己資本比率=自己資本÷総資本〕
※自己資本=純資産-(新株予約権+非支配株主持分)
ケーズHDは相当高いレベルです。
企業としての成長も目指しつつ、安定性も兼ね備えていると言えます。
ヤマダHDとエディオンは50%強というレベルです。
ビックカメラは、前述のように長期借入金が増加したため低下しました。
今回は以上です。
次回は、手元資金とキャッシュフローを確認します。
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