家電量販業界の3回目です。
今回は、売上高利益率とは違った角度から収益性を見ましょう。
(なお、改めてのお断りですが、以下では、2021.03期を直近の決算期として記載していますが、
株式会社ビックカメラのみ、2020.08期が直近となることをご承知おきください。)
まずはEBITDAです。
これは、金融費用(支払利息)、法人税等、減価償却費等償却費を考慮せずに算出した利益額について、その大きさを表します。
要するにEBITDAは、「本業で稼ぐ力」がどれくらいかということを表しています。
以下では、シンプルな算出式として〔営業利益+償却費〕を採用して表示します。
〔EBITDA=営業利益+償却費〕
2020.03期まで各社に大きな変化は見られませんでしたが、2021.03期は大きく変動しました。
ヤマダHDは売上の絶対額が大きく、また営業利益も大きかったため、
EBITDAも相対的に大きな値になっています。
ただし、直近の伸びはすこぶる大きく急激と映ります。
また、ケーズHDとエディオンについても、同じように増大しています。
これらの要因を探るために、営業利益と減価償却費の2020.03期と2021.03期の推移を表示します。
各社、償却費の変動は比較的少ないと言え、結果としてEBITDAの値を押し上げた主因は営業利益であることがわかります。
ビックカメラ以外の3社は、巣ごもり需要やテレワーク需要を的確に捉え、前回述べたように経費削減にも努めたことから、本業で稼ぐ力が高まったと言えます。
次に、EBITDAマージンを見てみましょう。
これは、EBITDAが売上高に占める割合を示したものです。
EBITDAは金額なので、同業種なら売上高の大きい会社の値が大きくなりがちです。
それに対してこのマージン指標は、どれだけ効率よくEBITDAを生み出したかが表されます。
〔EBITDAマージン=EBITDA÷売上高〕
ケーズHDが突出して高い値を出しており、ヤマダHDが猛追しているような状況です。
EBITDAの金額はヤマダHDが極めて大きいのですが、
マージンでその効率性を見ると、相対的にケーズHDが抜きんでています。
続いて、ROE(株主資本利益率)を確認します。
ROEは、株主資本でどれだけの当期純利益を生み出したかを表します。
絶対的な基準はありませんが、今の日本の株式市場では10%以上が望ましいとされるレベルです。
〔ROE=親会社株主に帰属する当期純利益
÷{純資産-(新株予約権+非支配株主持分)}〕
ここでも増収増益となった3社の値が上がっています。
中でもケーズHDが前年比5.5ポイントと大きく伸ばしました。
ビックカメラは、前年(2019.08期)までは10%超の優良な状態でしたが、直近(2020.08期)の売上高減少が響き、前年から6.5ポイント下げ4.0%まで低下してしまいました。
資本主義、市場経済においては、
株主からの出資金こそが企業の原動力の中核資金です。
ROEをどれだけ高められるかは、今後の企業における重要な課題といえます。
最後に、単体における一人当り売上高を見ておきましょう。
〔単体一人当たり売上高=単体売上高÷単体従業員数〕
連結での従業員一人当たり売上高を第1回で示しました。
そのとき同様、従業員数は臨時雇用者数(パート等)を含んでいませんので、参考としてみてください。
ケーズHDが高いレベルを維持し、直近ではさらに伸ばしています。
なお、ヤマダHDは2021.03期から純粋持株会社に移行しました。
そのため、ここでいう単体が持株会社となり、売上高と従業員数について過去との連動性が取れなくなったため表示していません。
次回は、資本回転率の側面からの収益性を確認します。
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