家電量販店4社分析の2回目です。
今回は、売上高利益率を中心に確認します。
最初に総資本経常利益率の推移を下図表で表します。
〔総資本経常利益率=経常利益÷総資本(負債+純資産)〕
ケーズHDが、この4期を通じて高い値を示しています。
最終利益の黒字化で純資産を増やし、負債面では有利子負債を削減しています。
その結果、総資本は増えたものの伸びは大きくないことから、
経常利益の上昇がそれ以上に大きいということになります。
次に、各売上高利益率を見てみましょう。
売上高総利益率(粗利益率)、売上高経常利益率、売上高当期純利益率です。
結果とすれば、売上高を落としたビックカメラ以外の3社は、
粗利率、経常利益率、当期純利益率の全てが上昇しています。
では、まず売上高総利益率(粗利益率)です。
〔売上高総利益率(粗利益率)=売上総利益(粗利益)÷売上高〕
ヤマダHDのグラフは急上昇しています。
2018~2019.03期は相対的に低めでしたが、
直近2期は連続で約1ポイントずつ上昇させています。
エディオンとケーズHDも上昇させており、
以上の3社の値はかなり近いレベルになってきています。
ちなみに、ケーズHDの有価証券報告書(P17とP20)に商品群別の販売高と仕入高の記載があったので、それぞれの粗利率を単純計算(※)で紹介します。
※ 粗利益額は〔売上高-(仕入高-在庫増加分)〕なので、
在庫増加分を考慮していない下表の粗利益率は概算値となります。
続いて、売上高経常利益率です。
〔売上高経常利益率=経常利益÷売上高〕
こちらも3社が伸ばしています。
粗利益率の順位とは異なり、ケーズHDが最も高い経常利益率になっています。
ケーズHDの有報には、「コロナ禍での従業員の奮闘に報いるため、2020年6月と2021年3月に特別手当の支給」を行ったため、人件費が前年を大きく上回ったとのこと。
ただし、折込チラシのサイズや部数の縮小により、広告宣伝費を前年より大きく低減させたため、人件費増加分の半分程度が吸収できたそうです。
これらの工夫により、販管費の前年対比伸び率を107.5%の上昇に抑え、営業利益率ひいては経常利益率を上昇させています(売上高の前年対比伸び率は111.9%)。
経常利益率が2番手のヤマダHDの有報には、「株式会社大塚家具や株式会社ヤマダレオハウス、株式会社ヒノキヤグループの連結に伴う費用の増加等」があったものの、徹底した経費削減やホールディング化による効率経営の実現により、販管費の前年対比伸び率を101.6%の上昇に抑えています(売上高の前年対比伸び率は108.7%)。
そして3番手のエディオンについては、「広告宣伝費の圧縮や業務効率の見直しなどを進めるなど」で販管費の抑制に努めたとのことです。
なお、ビックカメラは販管費総額を前年対比で0.7%削減しています。
これは、売上高の減少に伴う変動費の低減が主因とのことです。
ただしそれでも、売上高減少に伴う粗利益の絶対額の減少により、営業利益額が前年比でほぼ半減、営業利益率も前年2.6%に対して1.4%まで低下しました。
粗利益率は昨年と同レベルにもかかわらず、利益の絶対額が減少したことから、上記の如く経常利益率が1ポイント以上低下する結果になったというわけです。
最後に、売上高当期純利益率です。
〔売上高当期純利益率=当期純利益÷売上高〕
経常利益率と似たグラフ形状であり、特段のコメントはありません。
ビッグカメラ以外の3社は、増収増益という結果になりました。
今回は以上とします。
次回は、ROEとEBITDA等を見ていきましょう。
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