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COLUMNSブログ「論語と算盤」

建設業界-6

2021年9月22日

建設業界の6回目であり、最終回とします。

 

今回は、私見ですが「投資力」と名付けた指標について確認します。

 

 項目は、営業CF対投資CF比率、各社別の営業CFと投資CFの推移

各社別のROICWACCおよび両者の比較です。

 

 

 まず、営業CF対投資CF比率であり、〔営業CF÷投資CF〕の値となります。

 

解が100%以上ならば、営業CFによる収入で投資CFの支出を賄っている状態となります。

よって、FCF(フリーキャッシュフロー)はプラスになります。

 

逆に、100%未満なら、営業CF以上の額を投資CFで支出しているため、FCFはマイナスとなります。

(※なお、営業CFがマイナスという期は、計算式の値を強制的に0%としています。

 また投資CFがプラスという期は、計算式の値を強制的に100%としています。)

 

 

かなり入り乱れていています。

 

 4社の動きは、第2回で見た総資本経常利益率や各売上高利益率(/経常/当期純利益率)に比べると、年度による変動がかなり大きくなっています。

 また、同業種であることから利益率の類は似たような動きになっていますが、この指標は全く各社各様の動きとなっています。

 

 投資は、PLやBSの流動資産には表れず、投資CFで確認しないと動きが見えません。

各社各様の投資内容は、今後の業績に何がしかの影響を与えてくるでしょう。

 

 

 それでは次に、各社別の営業CFと投資CFの推移を見てみましょう。

 

 

 

 

 

 前述のグラフ解説同様、各社各様という状態です。

ここで、投資CFに注目すると各社それほど激しい動きは見られませんが、営業CFに着目するとかなり乱雑な動きが確認できます。

 それに伴ってFCFも乱高下しています。

 

 各社とも、利益率関連のマネジメントはしっかりしているようですが、営業CF面のマネジメントについてどう捉えているのか、やや不明瞭という印象です。

 

 

 最後に、ROICおよびWACCとの比較を行います。

 最初に両指標の説明をします。

 

 まずROICは、「Return on Invested Capital」の略であり、投下資本利益率と訳されます。

 

ここでの「Return」は、本業の利益である営業利益を対象にしますが、法人税等は不可避なコストとして認識し、〔営業利益−法人税等〕で表します。

Invested Capital」は投下資本をさし、株主資本と有利子負債の合計額で認識します。

 

 以上をもとに計算式を示すと、〔(営業利益−法人税等)÷投下資本〕となります。

 

 ROICが語ることは、投下した資本で、本業の利益をどの程度生み出したかということです。

(※なお、計算式の分子・分母にどの勘定科目を用いるかは会社によって違いがあります。

 当ブログでは、分子は上記〔営業利益−法人税等〕とし、分母は〔純資産+有利子負債〕とします。

 

 以下が各社の結果です。

 

 

 大成建設、大林組、鹿島建設、清水建設という順になっています。

 

鹿島建設を除く3社は、コロナの影響で直前期(2021.03期)に落としたという感じですが、鹿島建設のみ継続して低下している点が気がかりです。

 

 

 ところでROICは、投下資本に対するリターンですので大きい方が良いと捉えられますが、考慮しなくてはならないのが投下資本にかかる費用です。

 

 この費用は資本コストWACCWeighted Average Cost of Capital・・・加重平均資本コスト)と呼ばれます。

 

 資本コストには大きく2つの要素があり、一つは有利子負債における支払利息(金利)です。

もう一つは、株主資本に対する期待収益率、平たく言えば期待される配当金というイメージです。

 

 ROICの値がWACCよりも小さい値なら

投下資本の調達コストを事業運営で賄えなかったことになります。

 

 逆にROICWACCよりも大きい値なら、調達資金をうまく活用し、

経済的な付加価値を生み出したということになります。

 

 

 WACCの計算式は以下のように複雑ですが、要するに、株主資本にかかったコストと有利子負債にかかったコストの合計であり、それが投下資本全体(株主資本+有利子負債)の何%なのかを表すことになります。

 

 WACC=株主資本コスト×{ 株主資本÷(株主資本+有利子負債)}

+負債コスト(1-実効税率)×{ 有利子負債÷(株主資本+有利子負債)}

 

 以下は、上の式における各項目の説明となります。

◆株主資本コスト=リスクフリーレート+β(市場リスクプレミアム)

 このブログでは、「リスクフリーレート(rf)」と「市場リスクプレミアム」について、「企業のための資本コスト試算マニュアル~CAPM 編 ver.1.0~明田雅昭(公益財団法人 日本証券経済研究所)」(https://www.jsri.or.jp/publish/topics/pdf/2006_02.pdf)を参考に以下のように設定します。

 

rf0.483(決算日であるR3.3.31時点の20年物国債利回り財務省HPより引用

https://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/index.htm

 

・市場リスクプレミアム(rM-rf)=6.9

 

 またβとは、東証TOPIXの変化率に対する反応度であり、以下から引用します。

・β=ロイター公表の各社データより引用(https://jp.reuters.com/

           

◆株主資本=時価総額(ヤフーファイナンスの参考指標より引用 https://finance.yahoo.co.jp/

 

◆負債コスト=各社の有価証券報告書の「(連結)社債/借入金明細表」より加重平均で算出(リース除く)

 

◆実効税率=法人税等÷税引前当期純利益 にて

 ※なお、負債コストについては、支払利息という費用が節税効果を生むことから、

(1-実効税率)を乗じて算出することになります。

 

 

 以上から各社のWACCを算出し、ROICとの比較を行ったものが下表になります。

 

 ROICWACCの差が正の値で最大なのが大成建設2番手が大林組となります。

 

 鹿島建設と清水建設は両指標の差が負の値になっており、2021.03期だけ見れば資本コストを回収し切れていないことになります。

 

 鹿島建設は、相対的に多額である長期借入金の利子率が高くなっている点、およびβ値が4社中最大である点などが影響して、WACCの値が大きく(4社中最大)なりました。

 

 清水建設は、資本コストこそ低いものの、ROICの値が低いことが影響して負の値になっています。

 

 

以上、様々な視点から見てきましたが、今回で建設業界は終了とします。

 

今後も各業界のトップ層の企業について、今回とほぼ同様の視点で分析する予定です。

 

もっとメリハリを付けてわかりやすくしていく予定です。

 

 

ご意見等いただければ幸いです。

 

 

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