建設業界の4回目で、今回は資本回転率を見てみます。
なお先回、建設市場が低調ではないかと記載しましたが、
数日後の新聞報道によると、
上場ゼネコン13社の2022.03期の受注高合計は前期比6%増とのことです。
想定よりも売上高は良い状況になりそうですが、その一方で
価格競争が激しくなっており、利益率の悪化が懸念されています。
それではまず、総資本回転率です。
鹿島建設が総じて高い回転率を示しており、2019.03期が最大でした。
清水建設も2019.03期が最大、大林組と大成建設は2020.03期でした。
2021.03期は4社とも大きく低下しましたが、
鹿島建設の低下度合いはそれほど大きくありません。
これは、売上高の低下度合いが相対的に小さく、
負債の縮小を中心に総資本も絞られたためです。
次に売上債権回収日数です。
2021.03期は各社とも売上高が低下しており、
それに準じて売上債権残高が減少すると想定されます。
もしそうなら、この売上債権回収期間は前年並みに収まることになります。
ところが、鹿島建設以外は逆に長期化してしまいました。
売上債権残高の増加は、キャッシュフローを悪化させることになります。
キャッシュフローについては次回確認しますので、そこで動向を確認してみましょう。
続いて、棚卸資産回転日数です。
売上高の低下もあり、4社とも回転日数が長期化(悪化)してしまいました。
各社ごとに詳細は異なりますが、未成工事支出金、開発事業支出金、棚卸不動産、PFI等棚卸資産などが前年より増加しています。
そして、清水建設以外の3社は、棚卸資産全体の残高が増加しています。
こちらも、キャッシュフローに悪影響を及ぼします。
次は流動比率です。
4社とも上昇しています。
売上債権や棚卸資産の影響(増加)もあるでしょうが、
とりあえず短期の支払能力は高まっています。
続けて自己資本比率です。
こちらも、上昇しています。
さらに、4社とも2021.03期の上昇率はかなり高くなっています。
以上のように、資本面では、流動資産(売掛金や棚卸資産)のコントロールがやや不安定になった様子ですが、負債は抑制気味であり、売上高低下にも関わらずほぼ前年並みの最終利益を出して内部留保を高めたことで、財政面への悪影響はほぼ生じていません。
少しテーマを変えます。
財政面ではなく、単体の売上高、および単体の一人当り売上高を示します。
まず単体の売上高です。
大林組と清水建設が全くと言って良いほど、同レベルの金額と推移を示しています。
大成建設は、オリパラ需要の好影響により、2020.03期に両社に肉薄しました。
その一方、鹿島建設は、大差ないものの他の3社よりは低めとなっています。
次に、単体の従業員数に基づく、単体の一人当り売上高です。
<参考:単体の従業員数>
清水建設を除く3社は、概ね似たような実績になっています。
清水建設は、一人当り売上高が低いイメージですが、建設業の場合は協力会社からの技術者を多く活用する傾向強いことから、特段の問題を見出すことはできません。
あえて言うなら、清水建設は多くの従業員を抱えており、
生産物の産出に対する内製化比率が高いであろうということです。
次回は、手元資金とキャッシュフロー創出力について確認します。
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