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COLUMNSブログ「論語と算盤」

財務分析 建設業界-3

2021年9月13日

建設業界の3回目です。

 

収益性について、前回とは違った角度から見ていきます。

 

 

 まず、EBITDAです。

Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization

 

 これは「利払前税引前償却前利益」と略され、

当期純利益に、法人税等・支払利息・減価償却費を足し戻したものになります。

 

 シンプルには、営業利益に減価償却費を足したものとほぼ同様になります。

よって、今回の比較も「営業利益+減価償却費」で数値を算出しています。

 

 

 ところで、このEBITDAは何を表すのかというと、

それは「稼ぐ力」になります。

 

 例えばいま、国が違う同業種の会社の「稼ぐ力」を比較しようとしたとき、当期純利益の大小で判別しようとすると、国ごとの金利水準や法人税率の違いによって、比較が適切ではなくなります。

 これを解消するために、支払利息と法人税等を足し戻し、国籍による差異要因を排除するのです。

 

 もう一つ、多額な投資を行った企業とそうでない企業の比較も適切になります。

多額の投資を行うと、向こう数年間の減価償却費が大きくなります。

 

 すると原価や販管費が膨らむため、

営業利益額が極小、あるいは赤字になる可能性があります。

 

 そこで、減価償却費を足し戻すことで、企業ごとの投資額の大小にかかわらず、

稼ぐ力」を明らかにしようというわけです。

(以上からわかるように、EBITDAは比率ではなく金額で表されます。

 

 

 では、建設4社のEBITDAを見てみましょう。

 

 直近の2021.03期では、清水建設を除く3社はかなり似通った金額になっています。

また、鹿島建設が継続して右下がりになっている点もやや気になるところです。

 

 売上高は違っていますが、それを考慮して改めて見ると、どうやら大成建設の「稼ぐ力」が他の3社よりも大きいようです。

 

 そこで、売上高からどれだけのEBITDAを生み出しているかを明らかにするために、

EBITDAマージンを示します。

 

これは、売上高に対するEBITDA額であり、売上高比で表されます。

EBITDAマージンEBITDA÷売上高

 

 

 大成建設のマージンが高く、頭一つ抜き出てるようです。

先回見た、経常利益率や当期純利益率と同様のイメージです。

 

 

 

 続いて、ROEReturn on Equity)を確認してみましょう。

 

 ROEは「自己資本利益率」と訳され、投資家からの出資額(=自己資本)で、当期純利益をどれだけ生み出しているかを示します。

 

計算式で表すと、〔当期純利益÷自己資本〕という考え方になります。

 

 ただし、正確には以下の算式で示されます。

     〔ROE親会社株式に帰属する当期純利益

            ÷(純資産-新株予約権-非支配株主持分)

 

 

 ところで、我が国日本では、投資家と言われてもあまりピンときません。

 

しかし、資本主義では投資家からの出資が企業運営の根幹になるため、

投資家の存在は非常に重要な位置付けなのです。

 

(ちなみに、投資家からの出資等による資金調達方法を直接金融と呼びます。これに対して、銀行等からの借入による資金調達方法は間接金融と呼ばれます。日本企業の資金調達は、その多くが間接金融になっています。)

 

 

会社は公器であることから、事業によって社会に貢献することが使命であり、

その上で生み出した利益を投資家に配当金として還元するというのが

株式会社の仕組みです。

 

 逆に、いくら立派な姿形でも、利益が出なければ

ヒト・モノ・カネという社会資源の無駄遣いとなります。

 

このことは、ROEゼロ以下に押し下げる圧力になり、

社会資源の効率性の観点からもROEの高い企業が望ましい・・・・・・・・・・・・・ということになります

 

 

 以上から、しっかりと事業を成立させ、

その上で投資家に報いる力量があることを示すROE

この指標が重要とされるのです。

 

 また、短期の売買差益狙いの投資家ではなく、

長期的に自社とともに歩もうとしてくれている投資家を大事にする

という側面もあります。

 

(なお、ROEは性質上、自社株買いで自己資本を減らし、不足資金を借金で賄うという手段でその値を上昇させることが可能です。この点には注意が必要であり、ROEが高い会社の経営継続性が安全かどうかは別の見定めが必要となります。)

 

では、 4社について、図表で表します。

 

 

 現在の日本市場では、ROEの値が10%以上あれば優良な経営状態と考えられています。

ただし、日本の企業は内部留保による自己資本の拡大志向が強く、

その影響でROEの値が欧米企業より低め(対米国:1/22/3程度)になっています。

 

 グラフ・表を見ると、大雑把に4社とも10%以上となっていますが、

総じて右肩下がりの傾向であるのが気になります。

 

 

2022.03期はすでに半期を終えようとしています。

建設市場が活性化しているとは感じられず、来期がどうなるか気になるところです。

 

 

次回は、資本回転率と安全性について見てみます。

 

 

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